小説 | ナノ


▼ 再開(刀剣・堀清)

「なぁ堀川は生まれ変わりって信じる?」

とある日のお昼過ぎ、内番が終わり、出陣も遠征もない僕らは縁側で2人、団子を食べていた。

「え?」
「生まれ変わりだよ生まれ変わり。何、知らないの?」

知らないも何も、僕たちは刀から生まれ変わって今こうして人の身体で生活しているのではないのか。

「ちーがーうー。今は人の形をしているとはいえ、俺らは一応神様じゃん。そうじゃなくてさ、ほんとのほんとの生まれ変わり。人間になって普通に学校とか行っちゃって。彼女とかもできちゃって。そういうの。信じる?」

生まれ変わりなんてそんなこと考えたことなかった、なんていえば嘘になる。この戦いが終わったら一体僕たちはどうなるのか。みんな表には出していないけど考えているはずだ。

「うーん。考えたことはあるけど、正直信じてはいないかな。僕はこう見えて割り切っている性格だから、戦いが終わったらまた海の中に戻るのかな…なんて考えてるよ。」
「ふーん。」

隣にいる加州清光。僕は先日彼に告白された。まぁ、断ってしまったんだけど。

「俺は、信じてるよ。生まれ変わって、で、また堀川に会って、告白する。堀川が俺のことを覚えてなくたって構わない。もう一回今度は振り向かせてみせる。….なんて…へへ。」

そういって笑う彼の顔はどこか寂しそうで、
とても綺麗だった。








「「「勝ったーーーー!!!!!!!」」」

それはまもなく訪れた。
長かった歴史改変主義者との戦い。僕たちはそれに打ち勝った。

「終わったな。」
「終わったね。」

今日は最後の日。本丸は宴の真っ最中。僕と加州清光は、縁側で月を見ながら2人、ちょこちょことお酒を呑んでいた。

「つーかーれーたー。へへ、今日が今の堀川国広と過ごせる最後なんて信じられないな。」

最後の戦いが終わって本丸に帰ると、審神者から今後の説明があった。
僕たちはみな、人間として生まれ変わるそうだ。

「また、会えるといいね。」

思ったことをそのまま口に出すと、右手に加州清光の左手がするりと絡みついてきた。

「最後ぐらい……触れさせてよ。」

右を見ると、まるで茹で上がったタコのように顔が真っ赤の加州清光がいた。
表情までは確認できないが、絡められた手はカタカタと震えている。

「よしよし。」

頭を軽く撫でてあげると、すこしにやついた口元が見えた。

「僕はね、本当は加州くんのこと、すきだったよ。」

もう二度と、隣の彼には会えないかもしれない。この顔を見ることができるのは、もうこれが最後かもしれない。そう思ったら、自然と口から言葉が飛び出していた。

「う…そ…。うそだぁ。だって」
「ごめんね。本当にごめん。僕たちは人間じゃないから、恋愛なんてそんな人の真似事しちゃいけないと思って。あと、浮ついた気持ちで戦場に出るっていうのが、自分的にどうしても許せなくて。ごめんね。君と同じ気持ちを胸に抱いていたのに、最後の最後まで言えなかった。」

ごめん。いくら謝っても足りない。
傷つけてごめん。
君の気持ちに答えられないと言っておきながら未練がましく君を想い続けていてごめん。
こんなやましい気持ちを持ってごめん。
最後にこんなズルい形で伝えてごめん。

もう二度と会えないかもしれないっていうのに。

「謝んなよ、堀川。」
「……だって…。」

隣にいる君の赤い瞳に情けない顔の僕が映っている。

「また会えるじゃん。言ったろ?また俺から告白するって。だから、会えないかもしれないじゃなくて、会うんだよ。また、俺たち。」

そう言って笑う君の顔からは寂しさなんて全く感じなくて、
前見た時より更に綺麗で。

「また会おうね。加州清光くん。」

僕は、笑えていただろうか。











目が覚めると、どこかの屋上だった。
自分の身体を見てみると、いわゆる学生服というものを着ている。
どうやらここは学校のようだ。

恐る恐る立ち上がって、屋上から教室へと階段を降りると、見知った黒い髪・赤い瞳の学生がいた。

「か、加州清光くん?」
「どーしたの堀川センパイ。センパイから声掛けてくるなんてめずらしーね。」

思うより先に身体が動いていた。

「っ…!」
「すきだ。すきだよ。……会えてよかった。」

彼の身体をぎゅっと力強く抱きしめた。
目からは涙が零れて、目の前の彼の制服を濡らす。

「やっと、やっと思い出したんだね。会えて、本当によかった。俺からも言わせて?……すきだよ、堀川。」

身体を離して彼を見ると、彼の瞳からもポロポロと涙が零れている。


彼の赤い瞳の中の僕は、幸せそうな顔で笑っていた。



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