小説 | ナノ


▼ 珈琲屋のお客さん 4

ガチャ

はぁ、今日も疲れた。
あれから2時間。2時間をこんなに長いと思った日はないだろうと思うぐらいあいつが帰った後の2時間は長かった。

ベッドに横たわり、期待しながら携帯の電源を入れるが、期待していたメールは届いていなかった。


チッ

やっぱり拒否しといていきなりあれは気持ち悪いか。

過去の自分の行いの気持ち悪さと後悔に、つい舌打ちが出る。
さすがに本格的に避けられたかもしれない。
何かを考える気にもなれず、とりあえず風呂に向かうことにする。

ぼーっと風呂に入りながら考えるのはあいつのこと。
もう二度と店に来てくれないかもしれないと思うと、少し涙が零れた。
クソだせぇ。


風呂から上がり、寝る準備を整え、あとはもう寝るばかり。
日付はもう変わっていて、アラームでもセットするかと携帯の電源を入れた。


―新着メール一件―


どうせ迷惑メールかと思い、受信BOXを開くと、そこにはあの客からだと思われるメールがあった。

名前と電話番号とよろしくお願いしますという文だけのそっけないメール。
嬉しさと混乱でそっけない文章なんて何も気にならなくて、俺はその書かれた番号に電話を掛けていた。




『はい、もしもし。榎本ですけど。』

「もしもし。夜分遅くにごめんなさい。真部です、珈琲屋の店員の。メールありがとう。いきなりごめんね。」


心臓がドンドコと太鼓を打っている。冷静なように聞こえるかもしれないが、実際冷静ではなく手汗はべっちゃりだ。



「あ、いえ、俺も遅い時間にメール送っちゃってごめんなさい。お仕事お疲れ様...です。」


電話の向こうの榎本くんの顔が想像できて、ついクスッと笑ってしまう。
きっと困ったような顔してるんだろーな。


『ありがとう。さっき仕事から帰ってきたばっかりだから、全然大丈夫。』


あぁ、顔見て話してぇな。
今日店で会ったばかりなのに、もう会いたいと思う。

瞬間、口からポロリと言葉が零れていた。


『あのさ、今週の土曜日の午前中...空いてる?会いたいんだけど...さ。ちょっとランチでもしない...?』

「えっあっ、あ、は、はいっ、暇です。全然暇です。お、俺もっ...会いたいです...。」


予想もしていなかった相手からの 会いたい という言葉にカッと顔が熱くなる。
嬉しい。愛しい。ほんっとやべーな。


『...すっごい嬉しい。じゃあ、今週の土曜日の10時に、この前会った本屋の前で大丈夫?』
「はい、大丈夫です。」
『よかった。じゃあまた土曜日に。おやすみ。』
「おやすみなさい。」


携帯の電源を切り、ベッドに横たわる。
心臓が飛び出そうなほどバクバクしている。叫びだしたい。興奮して寝れそうにない。

はぁ。

俺は再び携帯の電源を入れると、電話帳を開き、とある番号に電話を掛けた。






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