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▼ 生きたい俺と死にたいあいつ

俺は死にたかった。

特に親しい友達もいない。無趣味。毎日に楽しみがなかった。
そんな中、あいつと出会った。

出会いはコンビニ。あいつが店員、俺が客。一目惚れだった。
毎日通い詰めて認識してもらえて、話すようになってメールをするようになって。毎日が充実していた。
あいつと遊ぶようになって数回目。勇気を振り絞って人生初めての告白をした。あいつも俺のことがすきだったらしく、俺らは付き合うことになった。

そこからは毎日が楽しかった。
休みの日は会える限り会ったし、体を繋げたりもした。
授業中もあいつのことを考えてニヤケて注意されるぐらい、いつもあいつのことを考えていたし、毎日が本当に本当に充実していた。もう死にたいなんて微塵も思っていなかった。


だからあいつがポツリと「死にたい」とこぼしたとき、初めて俺らは喧嘩をした。
この楽しい日々にもいつか終わりがくるだろうから、今この幸せの絶頂期に俺と死にたいとあいつは言った。俺は生きてお前とずっと幸せに暮らしていきたいと言っても、物事に終わりはつきものだよ、とあいつは嗚咽交じりに泣きながら言って、聞き入れてもらえなかった。


その2週間後、二人で海に来た。
海という無限に広がる雄大な景色を見たら、俺と生きたいと思ってくれるんじゃないかって期待したからだ。

二人で数時間海を眺めて、空が赤と橙の混じった色になってきた頃、ようやくあいつが口を開いた。


「ねぇ。俺と死んで。」


気付いたら首をすごい力で絞められていた。霞む意識の中、ぼろぼろに顔を崩して泣くお前が最後に見えて、俺はそのままあいつに何も言えずに、意識を失った。




気が付くとそこは病室だった。
ベッドには、あいつが泣きながら座っていた。
「ごめんなさい。なんで。俺だけ生きてても意味ない。一緒に死にたかった。許して。ねぇ早く俺を殺しにきて。」

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