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absent "G" -1-



自分で言うのも何ですが、今回はとても頑張った気がするんですが?!
頑張れた理由?それはもちろん人々のため。・・・えぇ。『人々』の中にはボク自身も含まれていますけど。
でも人間って、それが根底に在るからこそ頑張れるものですよね?だからボクも頑張った。結果頑張れた。それじゃダメですか?これは自己中心的な考えなんでしょうか?


この期に及んで聞くのも何ですが敢えて聞きます。『見返り』って言葉の意味って何でしたっけ?!


つい先日、仲間と共に四獣を倒しました。それこそボロボロになりながらも何とかやり遂げました。
世界中の人々もボクらのそれを心の底から願い、見守ってくれていた筈です。
だから全員で食べました。四獣の肉を。みんなで分かち合う精神は今までもこれからも健在です。だって、見守ってくれていた事。それだってきっとボクらの力の一部分になっていたでしょうから?
・・・疑問形なのは敢えて突っ込まないで下さい。目の前の現状から一時的にネガティブに拍車がかかっているだけです。たぶん。


この期に及んで言うのも何ですが敢えて言いましょうか。『見返り』ってのがほんの少しくらい有っても良い気がするんですよ?!


フラッフラな体にムチ打って運びましたよ。四獣の肉を。プライドが笑顔を形成してくれて、絵面は微笑ましかったでしょうがね。
運んだと同時に『勝利の宴だ!』なんてトリコが言い出したから、ボクは『だったらまずはこの格好を何とかしよう』と提案しました。何せズボンがずり落ちそうなやつもいましたから。そうしたら『まずは体力回復だろボケ!』とかゼブラに理不尽にどやされて、『でもこれでは流石にはしたないよ』って危ういラインのズボンを指差したら『減るもんじゃねーよ』って全てにおいて無頓着すぎる食いしん坊ちゃんはボクのズボンをどうにかしようとして。『何するんだ!』って怒ろうとした言葉より先にサニーが『ざけんな!風呂が先だし!』とかキレたりなんかして。少しばかり味方かと思ったら『前は最後な、毒あるし。』とか突き放されて。やり場の無くなった怒りに加えて『キショいもン見せんなよ?』なんてトドメまで貰って。挙句『勝手に行け』って無関心を決め込んだゼブラを座っていた椅子ごとサニーの髪がひっくり返して、トリコが便乗してゼブラの手から肉を奪ったもんだからゼブラの怒号で窓が割れて。それを止めるどころか所長は『余興も大概にな』なんて酒をラッパ飲みしてるし、事務局長は冷めた口調で『まだ暴れる体力があるの?ココちゃん?あーたまさか手を抜いてたとか言わないわよね?』って。あれ?何でボクが呆れられてるんだろう?的な状況も全てひっくるめて大人以上に寛大な心で静観してましたけど。

そんなボクに追い打ちをかけるように、食べたかどうかのタイミングでやれ感謝状授与式はどうするとか、グルメ新聞の取材だとか、何処かの国の国王が銅像を建てたいとか、映画化決定に伴って役者は誰が良いかとかあわよくば出演できませんか?とか、とかとかとか。挙句、早くも半裸のボクらの中継動画が闇流通しだしたとかマニア垂涎のベストアングル?の写真が高値で取引されているとかどうでも良いような報告まで飛び込んできて、言葉の通り心も体ももみくちゃにされて。
他の三人はともかく、ボクが早々に帰宅したくなったのは当然ですよね?


この期に及んで聞くのも何ですが敢えて聞きますよ?『見返り』の意味。『相手のしてくれた事に対して何かをする事』でしたよね?!


それともなんですか?体力も消耗したまま、フラフラしたままで帰宅すれば良かったんですか?
サニーみたく公衆の面前で銅像にすべくポーズをドヤ顔で決めれば良かったんですか?
映画初挑戦でセリフ棒読みでも女性客の動員数とDVD販売で元が取れますか?まぁ取れますよね?!
ひょっとしてズボンがずり落ちるのがボクだったら許されたんですか?マニア垂涎以上の文字通り『出血大サービス』ですよ?!と言っても出血するのはボクじゃないですけどね?!
・・・。
・・・・・・。


この期に及んで言うのも何ですが敢えて言いましょうか。『見返り』がこれってあんまりじゃないですか?!

それよりも何よりも。
根本的な問題ですけど。いないんじゃないですか?
何って?
カミサマ、アナタの事ですよ?!






ボクは空を見上げた。此処に到着したのは早朝だったかな。もう昼になろうとしている。
天頂から注ぐ光は恵みと言うよりは試練なんじゃないか。紫外線以外にも色々降ってきているのがボクの眼には丸見えだ。
暫く無駄に顔面を日光消毒した後、ボクは真正面に向き直った。
在るべき筈の場所に、在るべき物が無い。もっと言えば、周囲を見渡しても何も無い。
根こそぎ、だ。根こそぎ。根こそぎ破壊された。誰にって?四獣の手足その1に、だ。
何をって?大地をですよ。ボクの家が在った、その崖丸ごと。グルメフォーチュンの街だってあちこちが壊滅状態だ。

・・・・・・。
・・・まぁ特に大事すぎて無くなったら困る物は無かったけど。どうしてもと言うなら。封を開けていない紅茶の缶があったかな、くらい。今飲んでいるものを飲みきってから、なんて言ってないで思い立った吉日に一杯くらい淹れれば良かったな。
・・・・・・。
・・・それでも。
一般市民に比べたらボクは恵まれてるんだ。だって銀行には預金がある。両手で足りないくらいの桁数で。通帳なんか無くたって顔パスで平気だろ。その気になれば全てを一から作れる。作れば良いんだ、作れば。費用なんか利子程度なんじゃないかな。何なら今度は3階建てにしようか。
・・・。
・・・・・・・。

・・・やる気が起きないです。カミサマ、聞いていますか?!

・・・。
・・・・・・・。
・・・それでも。
いつまでも此処でぼーっとしていてもしょうがない。そう思って移動を決めた。
キッス、と言いかけた口を慌てて押さえた。そうだった。キッスも負傷。それもかなりの重傷だ。
だから敢えて、ボクはキッスの背中に乗らなかったんだ。余計な負荷をかけないように。その身一つで飛んでくれ、って。

・・・で?!

此処に到着したのは早朝。ボクが乗ってきたジェットは当然帰還。今頃倉庫でメンテナンスの最中だろう。だって飛ばしてたから。すごく飛ばしてたから。とにかく急げってオーラ全開で操縦を見詰めていたからね。操縦士、かなり震えてたもんね。呼んだってもう絶対戻って来ないだろうな。
急げって言った手前、以前と違う目的地を見てもやっぱり戻る、とは言えなくて。降りたボクもボクだけどさ。

とりあえず今はそんな話をしたい訳じゃなくて。
そんな話よりも何よりもまず言わないといけないのはただ一つな訳です。
根本的な問題ですよ。いないんじゃないですか?
何って?


カミサマ、アナタの事ですよ?!








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