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desultory -2-




『・・・で?』


「はい」
『片付けはやっとくと言った筈だが?』
「それは助かります」
『・・・で?』
「はい」
『何でココはワタシの後ろにいるのかな』
「何でもです」
『・・・・・・』
「・・・・・・」
『手を洗いたい?』
「洗いません」
『コーヒーのおかわり?』
「今はいいです」
『じゃあ何だ?』
「言ったじゃないですか」
『何て?』
「脈絡無くても気にしないって」
『確かに』
「ちゃんと認めてるって」
『言った』
「告白するなら今日、って」
『占いが』
「今しかないって、室長が」
『言ったね』
「そういう事です」
『・・・・・・』
「・・・・・・」
『・・・脈絡無さ過ぎじゃないかな?』
「脈絡に程度が在るんですか?」
『最強の屁理屈だ』
「最高の正論です」
『困ったな』
「何が」
『まずその手をどけようか』
「嫌です」
『このまま背後から絞められそうだ』
「このまま背後から抱き締めます」
『とりあえず一歩下がろうか』
「下がりません。逃げそうなので」
『逃げないよ』
「その根拠は?」
『鬼ごっこは得意じゃない』
「ボクが鬼ですか」
『当然』
「ひたすら追いかけますよ」
『だろうね』
「逃がしませんから」
『見れば分かるよ』
「じゃあ観念して下さい」
『本気で?』
「本気で」
『・・・・・・』
「・・・・・・」




「・・・・・・まずこの手をどけてくれませんか?」
『どけたら、取り返しが、つかない、だろっ?!』
「顎がひしゃげそうなんですけど」
『そんなヤワじゃない・・・だろ?!』
「随分な馬鹿力ですね」
『馬鹿みたく接近するからだ』
「ちょっとくらい良いじゃないですか」
『唾液の交換にちょっとも何もあるか』
「別に飲んでも死にませんよ」
『どんだけ出す気なんだよ!』
「本気で顎がひしゃげそうだ」
『むしろ折れても良い気がしてきた』
「往生際が悪いですよ」
『引き際も大事だって習っただろ?』
「何でそんなに頑固なんですか」
『乙女の貞操を疑問視するな』
「・・・乙女って年齢ですか」
『悪、かっ、たね、良い、年で』
「年下で悪かったですよ」
『誰もそんな事言ってない』
「そろそろ体力の限界なんでは?」
『それは・・・残念だなココ』
「何でボク?」
『聞こえないかな?休憩時間終了が』
「え。」
『体力の前にタイムリミットだ』
「・・・開始はフライングでしたけど?」
『細かい事は気にしない』
「・・・・・・」
『ささ、仕事しろ』
「・・・・・・」
『そんな目で見るなって』
「ずるいです」
『ずるくない』
「ずるい」
『何がずるい?』
「返事を聞けてない」
『あぁ・・・返事ね』
「断る人はいないんですよね」
『自分で言うか?!』
「室長が言ったんです」
『また屁理屈だ』
「だって」
『分かった。でもその前に』
「何ですか?」
『洗い物するからホントに手をどけなさい』
「・・・分かりましたよ」



『・・・さっきの話の続きなんだけどさ』
「何ですか?」
『欲が無いね、の辺り』
「あぁ・・・賞与?」
『そう』
「何か欲しい物有りますか?」
『じゃあデッキ』
「そこに購入の上申書を出してます」
『早っ』
「後で決済を下さい」
『はいはい』
「で、他には?」
『良いから無駄遣いするな』
「しません。それより」
『何?』
「話逸らしましたね?」
『ばれたか』
「残念ですけど、逸れてませんから」
『どういう事?』
「賞与で買う物です」
『決まってるの?』
「決まってます」
『残りは貯金だったっけ』
「いいえ」
『じゃ何?』
「3か月分ですから」
『え?』
「ギリギリです」
『・・・・・・は』
「不満なら貯金と今月の生活費も削って」
『本気か?!』
「ところで指のサイズはいくつですか?」
『おいおい』
「当然薬指を聞いてます」
『脈絡どころか話が飛んでないか?』
「飛んでません」
『飛ぶどころか始まってもいない気すらしてるんだが?』
「ボクはついさっき始まった気がしましたが」
『ココはワタシを都合良く脚色してるんだって』
「何故?」
『自分の理想像に仕立ててるって事』
「それは無いです。」
『じゃあ聞くがココはワタシの何を知ってるんだ?』
「何って」
『社内のワタシだけがワタシじゃない。分かるか?』
「分かってますよ。」
『随分自信ありげだね?』
「色々調査済みですから」
『今何て言った?!』
「色々調査済みです、と」
『色々って・・・・・・』
「・・・何ですかその目?」
『犯罪っぽく感じたのは気のせいか?』
「ギリギリですけど、抵触してません」
『半分ジョークに聞こえないよ』
「冗談も何も、ずっと見てましたから」
『ずっと?!』
「ずっと」
『えーっと』
「此処に配属される前からです」
『マジで』
「追っかけ入社でした」
『うっそ』
「選んでもらえるように必死でした」
『・・・何と言うか』
「何ですか」
『本気か?』
「本気です。」
『・・・・・・』
「・・・・・・」



『・・・コーヒーでも飲むか』
「いきなりですね」
『静か過ぎるんだって』
「さっきから言ってますよ?」
『音が無い分気が散るんだって』
「ボクは平気ですけど」
『何で』
「回答待ちなので」
『・・・覚えてたか』
「忘れると思うんですか」
『思わない』
「逃げられると思うんですか」
『思わない』
「じゃあ、どうぞ」
『どうぞってココ・・・』
「何ですか」
『心の整理が』
「手伝いましょうか」
『何を』
「雑念の片付けを」
『・・・何か企んでるだろ』
「室長の口が動くのを待ってるんです」
『こらこら、何してる』
「室長の口を動かそうとしてるんです」
『無茶言って人の前に立たない!』
「立ちます。逃げそうなので」
『逃げないって』
「その根拠は?」
『後が怖い』
「ひたすら追いかけますからね」
『だろうね』
「諦めませんから」
『見れば分かるよ』
「じゃあ観念して下さい」
『全く・・・』
「・・・聞いてますか室長?」
『・・・聞いてるよ』
「どの辺が?」
『・・・この辺かな』
「・・・・・・」
『・・・・・・』





「・・・・・・反則だ」
『そうかな』
「あれほど頑固だったのに」
『それはそれ、これはこれ』
「ずるいです」
『ずるくない』
「ずるい」
『何がずるい?』
「子ども扱いが」
『事実部下の一人だからね』
「・・・・・・」
『顔赤いよ?』
「赤くもなりますよ!」
『ココが言ったんじゃん』
「何を?」
『口が動くのを待ってるんです、って』
「だからっていきなり・・・」
『いきなり?』
「・・・・・・」
『さて。コーヒー淹れようかな』







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