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病院に運ばれた彼だが、摂取量がわずだった事が幸いして、あっさり帰れと言い渡された。

その裏で、担当した医者と私情に流されまくった女性職員との熾烈な戦いが繰り広げられた事はまた別の話である。





トリコと小松と別れ、シェアハウスに戻れば、入口の前に集まる老若問わずの女達。

「……」
「……」

思わず無言になった2人だが、なまえは徐にココ背中を同情すように2回叩いた。

その意味を察したココがなまえを見下ろす。
なんとなく、飼い主に見捨てられ、人間不信になる寸前の大型犬が脳裏を過ったが、生憎とこんな面倒臭い犬を飼った覚えはない。

「なまえ?」
「ま、がんばって」

ココの眉間に皺が寄る。
何かを言い返そうと口を開きかけた時だった。

「ココ様!!」

入口でココの帰りを待ち構えていた集団の中から声が上がる。

「!!」

ぎょっとなるココの隣でなまえがブハッっと吹き出した。

「ココ様!!」
「心配しておりましたのよ!!」
「ちょっと何よ、私の方がずっとずぅっと心配してたわよ!!」

それだけの口論を腕や足を出し合いながらも彼女らはまっすぐ「ココ様」に向かってくる。

「逃げなくていいの?」
「くっ!!」

踵を返し、だっと駆け出す。
それが一瞬だけ止まり、なまえを見たかと思えば、

「後で覚えてろよ!」

と、三下(さんした)辺りが言いそうな捨て台詞を残して走り去る。

「覚えてろもなにも、今日は迷惑しかかけられてないんだけどな」

そう言いつつもなまえはしてやったりとニンマリ笑う。

何かと口うるさい上に口ではいつも言い負かされる同居人にお前は母親か!と言いそうになった事は数えきれない。

言ったが最後、万が一にもチョーシにのって都合のいい時だけ「親代わりだ」とか言われてもそれはそれで面倒なので、あえて呑み込んではいる。

日頃の鬱憤を晴らしたなまえはココが去った方向にくるりと背を向け玄関のドアの向こうへと消えた。




数時間後

疲れ切った顔で帰って来たココに口論の末言い負かされ、なまえの悔し紛れに投げた飲みかけの缶ビールがココの顔面にヒットし、再び救急車を呼ぶ羽目になったとかならなかったとか。






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