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ボギーの大学の入学祝いと称して読んだレストランのデリバリーサーヴィスはやはり調理(仕上げ)が一般家庭なだけに厨房器具や環境の整ったレストランよりはほんの少し劣るが、それでも食前酒、アミューズ(前菜)、ポタージュ(スープとパン)、ポアソン(魚料理)、アントレ(第一の肉料理)とどれも美味しく、上機嫌になる。ついでに言うと事前に銘柄や年数を指定して用意して貰ったワイン(勿論料理に合わせて数種類)も非常に美味であった。
このクオリティなら、この後のソルベ(冷菓)、ロティー(第二の肉料理)、サラダ、アントルメ(生菓子)、フリュイ(季節のフルーツ)、カフェ(コーヒー)まで安心して食べられるだろう。

キンキンに冷やしたグラスに盛った柑橘系のソルベを軽く平らげ、ロティーが運ばれてくる。それに合わせて新しく注がれるワインの香りを楽しんで、それからすくりと肉にナイフを入れる。
ミディアムレアに焼かれた肉をぱくりと口に含んでもぐもぐ食べていくうちに、視界がぐらぐらと揺れるのに気が付いた。


「…待っ、これ、何、肉……?」
「酒乱牛で御座いますが、」
「……ボギー大丈夫、…じゃ、ない、か」
「ウィー……ック、」
「うあヤバい俺も酔ってる…」


もういいから帰って、と給仕達に指示を出して下がらせ、誰に電話をしようかと逡巡したはいいがくらくらと頭が酔いで回って気分が悪く、その場にしゃがみ込む。
基本的にいくら飲んでも酔わない体質だが、動物性アルコールに弱いことが最近判明し、それは兄弟の中でも髪や体質が似ているボギーも同じだったらしい。というかアルコール分を含む動物肉を使わないでくれと頼んでおいた筈だが手違いがあったのだろう。最悪だ。
ボギーに水を飲ませてやらないと、と立ち上がってふらふらキッチンに入る。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してテーブルに戻れば、がしりとYシャツに手を掛けられて勢い任せに引っ張られ、上の方のボタンが幾つか飛んだ。


「………な、ちょ、何、」


引き寄せたなまえに擦り寄るボギーがすりすりくっ付いてくるのをあやすように頭をぽんぽんと叩く。
もにょもにょと何かよくわからないことを呟いて見上げてくる、トミーと同じで、そして自分の片目とも同じ紅い双眸がへにゃっと歪んだ。


「…なまえ〜」
「ボギー、水飲め、早く…」


ごそごそと甘えてくるボギーの髪を引っつかんでキャップを取ったペットボトルを口に突っ込んでやる。酔っ払ったら幼児返りするのかとげんなりしながら携帯に手を伸ばし、ショートコールを鳴らした。


「兄さん助けて俺の自宅、事故的に酔っ払っちゃって頭痛い死にそうしかもボギーが重たい早く来てええ!」


がしゃんっ!と手にしていた携帯が弾き飛ばされて、床に押し倒されてのし掛かられる。困った。純粋な腕力では勝てない不利な状況だ。
闘ってみてもいいが部屋が荒れるのは嫌だし、そもそも異常体質持ち二人が暴れて部屋が吹き飛んでも困る。ウワアァ!どうしよう!とどうにか何か考えようとするがアルコールが回った思考はひどく鈍くて、何も思いつかなかった。
取り敢えず性的な感じは無いので(当たり前だが、)見かけより遥かに重たいボギーに押し潰されないように、と肘でボギーの横っ面を叩いた。異常事態を察知した兄が来る迄の辛抱だと、殴られて余計燃えたらしいボギーに(酔いが醒めたら説教してやる!何その性癖!!)更なる抵抗を開始する。
いい大人がフローリングの床で転がってどたばたとプロレス紛いの争いごとをしている所に、程なくして兄・スタージュンが登場した。



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