03

「許さないっ!」
「ええ……?」

手を腰に当て、目の前の青年を叱りつける少女。これもまた、紛れもなく名前だ。
そして叱られているのは、私ではなく10年前の俺。ルドガー・ウィル・クルスニク。ああ、そうか。この世界は10年前のあの日だ。

「可愛い彼女を一時間も放置だなんて信じられない!」

自分で言うなと言いたかった。きっと彼も思っているだろう。けれどこの日は借金返済用にジュード達とクエストをしていて遅れてしまったのだ。連絡も入れず、というよりも時間の感覚がなかったため連絡をしようがなかった。改めて見ても情けないと思う。

「う、悪かったよ……」
「挙句この後も仕事? もうお腹減って死にそうなのー!」

自身の過去を振り返りながらこの後の台詞を思い出す。仕事、という言葉に少々引っかかったが、それよりもこの後の彼女の策士っぷりには少々笑えるんだ。あの台詞を言ってはいけないよ、ルドガー。

「あー、時間はまだあるし、良かったら何か作るよ」

ああ、やはり私だ。

「そう? 私トマト料理のフルコースが食べたいかなー?」
「ええ!?」

ああ、このあとも恐ろしい。フルコースなどと、それもちゃっかり名前が人を呼ぶものだから人数分作ることになってしまったんだった。

「ジュードは研究所だし、エリーゼは学校休みって言ってたしー。レイアとアルヴィンはアスコルドでお昼から仕事らしいから、うん、皆呼ぼうか!」
「えええ!?」

アスコルド……? 今度こそ耳を疑った。アスコルドはアルクノアの列車テロによって列車が突っ込み封鎖されているはずだ。

「勿論、ユリウスさんもね!」
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