日常編 | ナノ




「ほら、綺麗に着れてるわよ、杏ちゃん。
お祭り楽しんできてね!」

「奈々さん、ありがとう!行ってきまーす!」



バタンと玄関の扉を立てて少し駆け足で並盛神社に向かう私。

今日は並盛神社でお祭りがある。
だから浴衣を奈々さんに着せてもらって、今向かっているのだ。




「あ、杏来たー!」

「はひ、杏ちゃんこっちですー!」



並盛神社前に着くと、浴衣姿の京子とハルちゃんが既にいた。
待ち合わせをしていたのだ。


私は二人の姿を見つけると更にスピードを速めて駆けて行った。




「わぁ、二人とも浴衣似合ってて可愛い!」



二人のもとに着いて第一声に出てきた言葉。

だって本当に可愛いんだもの!



「そんなことないよ。杏も似合ってるよー!」

「杏ちゃんベリープリティーです!」

「本当に?奈々さんに着せてもらったおかげかな!」



そんな他愛ない話をしながら歩いていると、ある屋台を見つけた。



「あ、ツナ達だ」



ツナ、隼人、武がチョコバナナの屋台で働いていたのだ。

でも何で働いているんだろう。
働くなんて聞いてなかったのになぁ。

ま、ちょっと気になるけど別にいっか。




「「「チョコバナナくださーい、」」」

「杏!ハルに京子ちゃん!」




京子とハルちゃんと一緒にみんなのいる屋台に近づいて言うと、ツナ達はみんな私達に気づいたようだ。




「けっ、お前らかよ」

「おっ、杏じゃねーか!浴衣似合ってるぜ!」




ツナに続いて他の二人も私達に気づいたようだ。



「野球馬鹿、そんなこと言ってるとコイツ調子乗るからやめとけ」

「んなことねーって。素直になれよ、獄寺!」

「なっ、俺は別に…」



相変わらず対照的な二人だが。
この二人のやりとりももう慣れてしまった。



「はいはい、私で悪かったですねー!」

「お、俺は別にそんなこと…!それにその浴衣…似合ってなくもねぇよ!」

「!」



隼人がそんなことを言うなんて珍しい。

でもなんだか嬉しいなぁ…、奈々さんの着付けのおかげだ。

そういえば気になって何でお店をやってるのかと聞いてみると、七夕大会で武が公民館の壁を壊したからその修理費を払うためらしい。



「そうだったんだ…。言ってくれれば私も手伝ったのに」

「いーっていーって!杏達は祭り楽しめよ!」



そう言って武からチョコバナナを受け取る。

と、その時一つの足音が…。




「5万」



よく知ってる人物がそう言って屋台にやってきたのだ。



「雲雀さん!?」

「雲雀さんー!?」



なんとそこにいたのは堂々と風紀の紋章をした雲雀さんだったのだ。

ツナはすごく、みんなもかなり驚いている。
もちろん私も。




「雲雀さん、何でここに…?」

「僕がここにいたらいけないのかい?風紀委員として活動費を貰いに来たんだよ。

それにしても杏、君は何で風紀の仕事もせずにここにいるの」

「え…」




雲雀さんに言われ、数日前の記憶を巡ってみる。
確かに今日は風紀委員の仕事があると言われたような…。

あれ、でも任意だった気がするよ。



「ご、ごめんなさい!でも今日は任意ですよね?
だからみんなでお祭り楽しんでたんです!」

「ふーん。ま、人数足りてるから別にいいけど」



特に表情も変えずに言う雲雀さん。

あぁ、良かった。
特に怒ってはいないみたいだ。

ということはこのままみんなといていいんだよね?


そう思って安心したような少し残念な気持ちになっていた、が…。





「あぁ、でも杏、ちょっと来て」

「えっ!雲雀さん!?」



なんと雲雀さんは私の手首を掴んで、みんなのもとからどんどん引き離して行ったのだ。




「杏!」

「はひ!杏ちゃんが!」



みんなが私の名前を呼んでいる声が聞こえるけど雲雀さんは無視。

…かと思いきや彼の動いていた足がピタッと止まり、振り向いて言った。



「安心しなよ。ちゃんと後で杏は君達のもとに返してあげるから」



それだけみんなに言い残して私は手首を掴まれたまま、どんどん先に進んで行ったのだ。




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