日常編 | ナノ



朝のホームルームが終わり、本日メインのおにぎり実習の時間になった。

だけど私は作り終えるのに時間がかかったため、他の女の子達には先に教室に行ってもらったのだ。

京子と花は私が作り終えるまで残ってようとしてくれたけど、やっぱり先に行ってもらった。






「ふー、やっと作り終わった!」



やっとのことで作り終えたおにぎり。

…実は料理はあんま得意じゃないんだよね。
だから時間がかかってしまったのだ。



「げっ、時間やばい!早く行かなきゃ!」



時計を見ると予定時間よりかなり過ぎている。

急いで教室に戻らなきゃ!
作ったおにぎりを乗せた皿を持ち、急いで調理室を飛び出した。が…



ドンッ



飛び出した勢いで誰かにぶつかってしまったのだ。



「す、すみませ……」



謝ろうとそのぶつかった人を見ると言葉が止まってしまった。

何故ならその人は会うたびに追いかけられる黒髪の学ランの人だったからだ。
自分の顔が青ざめていくのが分かる。




「奇遇だね、柚木杏。こんなとこで会うなんて。
今日こそは逃がさないよ。」



そう言ってその人はトンファーを持つ。

いつもなら逃げるけど…今日はおにぎりを持っているから素早く逃げることは出来ない。


ど、どうしよう!殺される…!



「今日は逃げないんだ?やっと君を咬み殺せるよ。」



その人はもう私にトンファーで攻撃しようとする寸前だ。

必死にそれを防ぐ方法を考え、あることが思いついた。



「こ、このおにぎりあげるから許して下さい!」



そう言ってひとつのおにぎりを差し出すとその人の動きは止まってくれた。

いや、でも普通に考えて無理だよね…どうしよう!



「…………」

「…え?」




するとその人はおにぎりを受け取ってくれた。

ダメもとだったからびっくりだ。



「あ、あの…?」

「…何?君が受け取ってほしいって言ったんでしょ?」

「そ、そうですけど…って今食べるんですか!?」



会話の途中だったのに無言でおにぎりを食べるその人。

まさか今食べるなんて…。
な、なんか目の前で食べられるのってすごく緊張する…!



「…うん、見た目は歪だけど味はまぁ良いんじゃない?」

「へ?」

「じゃあね、杏。次は逃がさないから。」




その人はそう言うと私に背を向けて歩き出したのだ。





まさか感想言ってくれるなんて意外だ。

ていうかあの人私のこと名前で呼んだよね。
いきなりすぎてびっくりした。

うん?名前…



「あ、あの人の名前知らないや…。」



そういえばそうだ。

何回も会ったことがあるのに。
さすがに未だ名前を知らないのは失礼だろう。



「次会った時に聞こうかな。…って時間ー!」




ただでさえ時間に遅れている私。
今のでかなり時間取ってしまった。



「急げー!」



なのですぐに急いで教室に向かって行った。



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