図書館で調べものをした帰りに、公園で必死な顔をした女子高生に頭を下げている仗助を見た。彼女は悲しそうに首を振り、仗助に背を向けてとぼとぼと歩き出す。仗助はその後ろ姿を見ながら肩を落として嘆息し、ベンチにどさりと腰を下ろした。
彼女の姿が完全に消えたのを見計らい、オレは仗助に歩み寄る。
「見てたんスか」
目を丸くした仗助に問われ、「たまたまな」と頷く。
「綺麗だと思ったが……フったのか。好きな奴とじゃなきゃ付き合わない主義か?」
「そういうわけじゃあないんスけど、ね」
言い淀んだ仗助の隣に腰を下ろしながら、オレはわざと「好きな奴がいるのか」なんて分かりきったことを聞いてみる。
「それは」
「でも、その相手は本当にお前にとってベストなのか?」
陰険な台詞に仗助は顔を強張らせた。うまいい具合に不安を抉ったようだ。だがオレに罪悪感なんてものはない、むしろこれは親切のつもりでいる。
仗助の想い人はろくな男じゃあない。ワガママで自分勝手で欲しいときだけ寄ってくる。オレみたいに恋愛が行き止まりになってる奴ならいいが、仗助が幸せになりたいなら、本気では接しないほうが良い。
「……何か知ってるんスか」
絞り出すような声に「ただの推測だ」と返しつつ、何もかもばらしたい衝動にかられる。腕にすっぽり収まる細い身体の感触と、ひっきりなしに漏れる淫らな息の熱さ。あの男がオレと寝ていると知ったら仗助はどうするんだろうか。いかにも、それでも構わないと言いそうだ。彼ぐらいの年頃の恋は、しょうもないくらいに盲目な筈だから。
「オレは……その」
仗助はベンチに背を預けて宙を仰いだ。オレのちょっとした嘘には気付いたんだろう。
「わかってるんスよ、釣り合わないって。でも諦めらんない」
真剣な目に、可哀想な奴だと思った。
釣り合わないのはたしかだが、天秤にかけたときにどちらが重たく沈むのか勘違いしている。あまりに眩しすぎてオレには手を出そうとすら思えないっていうのに、自分の価値が見えちゃあいない。
光で心がじくじく爛れる。どうやらオレは仗助に嫉妬しているらしい。彼が欲しがっているものをおおよそ手に入れているのだから、馬鹿馬鹿しい話だ。
「諦める、か」
「……本当は、諦めたくないんスけどね。告白もしてねぇのに、何言ってんだかって感じですけど」
仗助は微かに笑い、気合いを入れるようにぱちんと両頬を叩いた。
「……よし、今日はちょっと、露伴ち行ってみようかな」
好きにしろって言葉を飲み込むかわりに、オレは「やれやれ」と呻いた。話は希望と逆に向かってしまったようだ。しかしどちらにしろこういうのは、痛い目に遭わなきゃあ悟れないんだろう。
ポケットの携帯を探り、あの男に電話をするか思案する。守りたいのか見捨てたいのか、そろそろ自分でも分からなくなっている。
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エレメントの斎野しぐれさんに承露前提で悪い男に引っ掛かって青春を無駄にする仗露をリクエストし、小説をいただいちゃいました!
す、素敵////
露伴と関係をもっていることに優越感を感じている太郎さんがすばらしくエロティック。こいつはそのことを仗助の前でどんな顔して思い出しているんだろう…どうしてそんなこになっちゃったの太郎いいぞもっとやれ。露伴と。
とにかく感動しているんだけど気の効いた感想が打てないですスミマセアア……
斎野さん、お忙しいなかありがとうございました!!あいらーびゅっ