年月とは残酷なもので

※side Kenya

「ほんっと、最低」


どないして、俺はこんな修羅場に遭遇しとんのやろか。

「なまえ先輩落ち着いてください。謙也さんビビっとるやん」

そうや、こいつがそもそもの元凶や。何をいけしゃあしゃあと落ち着いてくださいなんて言えんのや自分。
ちなみにここは府立の総合病院。中学時代の後輩がちょっと女関係でトラブって刺されたらしい。末恐ろしい世の中やなぁ……

せっかくの可愛らしい顔を歪めとるんも中学時代の仲間。久しぶりにあったら昔からかわえかったんが随分と別嬪になっとる。この状況やなかったら良かったんに、ホンマ。
中学ん頃は推薦でこっちに来とって、高校からは向こう今回は仕事で大阪まで来たらコイツが入院しとるいうから見舞に訪れてくれたらしい。

「ちゅーかなまえ先輩しばらく会わんうちに口悪くなったんとちゃいます?」
「はぁ?どの口が言ってんだっての」

確かに昔の優しい女神のようななまえはどこに行ってしまったんやろう。せやけど、光が悪いんは一目瞭然なわけで。四股ってふざけるんも大概にせえっちゅー話や。付き合ってるわけとちゃうけど許せないってなまえの気持はよう分かる。光、弁護は出来へんで。

「アンタ一度去勢してやろうか」
「なまえ、それはあんまりや。それにここは古代中国やあらへん、現代日本や」
「謙也さんよく知っとりますね、世界史苦手やったんに。あ、性的なことやからか」

ヤバい、殴りたなってきたわ。

そして、さっきまで居った看護士さんがまた後でね、なんて意味深にウィンクして出ていきよった。

「……なんなん、あれ」
「あぁ、あの人パイズリうまいんスわ。巨乳やし、女はやっぱし胸やわー」



「ふざけんなや己えええええええええええええええええええ!」


せやった。顔立ちも悪くなく性格もいいなまえの唯一のウィークポイント。

……貧乳や


ちゅーかなんで看護士さんまでくっとんのやお前は。どんだけ入院生活満喫しとるん。


ほんで、なまえが本気で光を手にかけるんやないか、って時にタイミングよくなまえの携帯が鳴った。仕事の呼び出しみたいや。


「じゃあ、お・だ・い・じ・に」
「あ、待ってやなまえ。下まで送ってく」

力一杯引き戸を閉めて出ていったなまえを追いかけて出ると、階段とこで蹲っとって具合でも悪いんかと慌てて駆け寄る。


「……なまえ……泣いとん、の……?」
「謙也くん、私もう嫌」
「なにしたん、なまえ」
「……なんで私あんな最低なヤツ好きなの、なんで謙也くんみたいな優しい人じゃないの」

初耳や、そんなん。

なまえはぼろぼろ泣いとる、俺はなんも出来ひん。

「心配して、損した。もう知らない……このままなかったことにする。」
「そうや、なまえならもっとええ男見つかるわ。忘れた方ええ。後でテニス部の連中でみんなで集まるやろ?そんときは全部気にせんで騒ごうや」

そう言って頭を撫でてやると、なまえは久しぶりに笑ってくれた。
やっぱしなまえは笑顔が一番や。

しっかし、なまえはいつから光を好きやったんやろう。中学ん時はそんな素振りなかったんに。







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