メルトする脳髄に砂糖をまぶして


私が無理矢理に下ろそうとした幕は最後まで下りることなく中途半端なところで引っかかっていた。
その取っ掛かりは時と共に自然となくなるものだと思い込んで(言い聞かせて、の方が正しいのかもしれない)ヴェールの向こうに視線を向けないでいたのは私の弱さでしかない。

「……光、くん」
「好きや、なまえ。中学ときから変わらん、一番好き。俺はアンタにしか興味ない」

何年かの間に張り続けた意地を今更解くにはいかなくなっていたけれど、幼い日の過ちとして片づけるには彼の想いは真摯過ぎる。

「……私……は、」

燻ったままの恋心は冷えきって醒めていくことはなく、逆に慢性的に鈍痛のように長引いて時折まるで慣れていかない為に激痛を与えることっ私を苛み続けてきた。
そして、彼の中では確かに恋だったかもしれないあの感情はもう限りなく近くはあるもののもう別のものへと〈執着〉と呼ぶに相応しいものになってしまっていた。

「……私は、私も……好きよ。」

諦めにも似た思いで口にすると、性急に降ってきた接吻。それに大人しく応える私は、非難されるべきかもしれない。
ここまで彼を引きずり下ろしたのは、私だ。
その責任を取るだなんて言い方もおこがましいし、そんなつもりもない。罪滅ぼしでもない。これはただの私のエゴイズムで、拒絶しきれない弱さでしかない。

「……初めから、素直に認めればええのに。なまえのドアホ」

今まで見た中でも一番と言っても過言ではないくらい嬉しそうに(私の記憶の限りでは謙也くんに太松堂の限定善哉を買ってもらったときと同じかそれ以上)笑う彼に私はなにも言えない。

「うん……ごめんね」

なんとか絞り出した声は、消え入りそうにか細く弱々しかった。

こうしてまた、意思の弱い私はもうひとつ、もうひとつと枷を外して堕落していくのだろう。
果たして最後までいってしまう前に、歯止めをかけられるのか。

多分、不可能だけれど






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