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▼猫、学校へ行く(3/6)

「少しは落ち着いたかな?」
「…んー…まだ…ムズムズするぅ…」

猫耳をヒクつかせてクロはまどろんだ目で羽使を見上げる。その甘えた表情があまりにも愛らしく、羽使は思わずクロを抱き締めた。

「んんんもう!クロはほんとにズルいくらい可愛いんだから! でも早く支度しないと学校に遅れちゃうよ。転入初日から遅刻する気かい?」
「がっこう…? あ、そっか、ぼく学校に行くんだ」
「そこであの男の子に会うんでしょう?」
「…そうだっ!学校に行ったら会えるんだ!起きる!したくするっ」

自分の目的を思い出したクロはたちまち正気に戻って勢いよくベッドから飛び出した。
「まずはシャワーね」と言われて羽使に頭と体を隅々まで洗ってもらう。そして初めての制服に袖を通した。

「これは外しちゃダメだからね」

最後に羽使がクロの首に細い黒の首輪を取り付ける。クロは少し窮屈そうにその首輪の形を指でたどる。

「んん…これじゃまくさい…。なんで取っちゃダメなの?」
「これには発情を抑える力とかその他もろもろな効力を込めておいたから。クロが人間の世界に馴染むためには必要なの」
「ふーん、そうなんだぁ」

その他もろもろな効力とは何なのかは気にせずクロはあっさりと首輪を受け入れた。そんな単純なクロに今度は黒いピンを差し出す。

「これは…?」
「こうして、耳を留めて隠すの」
「うわわっ!?」

猫耳をペタンと倒してピンで固定する。ふわふわの猫っ毛に紛れて耳の存在はわからないようになる。

「えええっ!音が全然聞こえないよ!」
「人間の耳が付いてるんだから聞こえなくはないでしょ」
「でもでも遠くの音とかが聞こえない!」
「人間の聴力はそういうものなの」
「ふえぇ…。ヒトになるのって色々不便なんだね…」
「でも、こんな面倒なことをしてでも会いたい人がいるんだろう?」
「…うんっ!」

クロはとたんに目を輝かせて大きく頷いた。

…そう。クロにはどうしても会いたい男性がいるのだ。

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