暇な時間の潰し方








「アイチ君、退屈です」

「僕に言われても……」

「映画でも見に行きましょうか?」


アイチが意外なレンの提案につい覗き込むようにしてレンの顔を見ると屈託ない笑顔を浮かべていた。
映画という提案はあまりに意外だった。見た目も中身も飽きっぽいようなイメージがあるからか映画なんて長時間座って何かを見るなんて痺れを切らすか、寝ていそうだ。


「ちなみに何ですか?」

「えっちな奴に興味があります」

「…………」

「嘘です、この前知り合いからホラー映画のチケットをもらったんです、一人で見に行くのもいいんですけどね……」

「ですけど?」

「怖がりそうなアイチが横で怯えるの見てる方が楽しそうなので」


色々アイチも物申したいことはあったが、とりあえず今は何も言わないことにした。
確かにアイチは怖いものは好きではない。夏の恐怖特番なんかはまったく見ないタイプだ、エミは非科学的なものは信じない主義である。


「ということで行きましょう」

「今から、ですか……?」

「ええ……早くしないと期限が切れてしまいますから、大丈夫です怖いなら僕にしがみついていても構いません」

「あ……そう言うことじゃなく!」


こういう時、軟弱なはずのレンの腕力は何倍にもなり、アイチに有無を言わさずに歩きだした。
なんとも楽しそうなレンの姿を見かけたテツはアイチを哀れんだ。




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