繋がり




会議室に集まった何時もの人員に加え、今日は今回の仕事に重要な役割を担った夏見も参加する事に。資料を持った谷崎が説明をした。

行方不明になった生徒の名は久木孝太。行方が分からなくなったのは昨日。多忙な両親に代わって家事全般を熟す家政婦が何時になっても帰らない孝太に電話をするも、コールは鳴るのだが応答は無く、心配になり両親に連絡した。孝太がよく行く店や友達にも聞いたが誰も孝太の学院を出た後の行方を知らなかった。「警察沙汰は避けたい御両親は、夢ノ咲学院の上層部と相談した結果、社長と古い知り合いの方が武装探偵社を斡旋した…って事ですか?」と夏見は問うた。



「うん。久木孝太の御両親は、日本でも指折りの数に入る音楽家みたいでね。無闇に騒ぎを起こしたら、自分達の仕事に影響が及ぶと思ったンじゃないのかな」

「自分の子供が行方不明になったのに…」

「地位もあり、世間的にも名声があればそうなっても仕方無いのかも」



普通の家庭なら、子供が居なくなれば必死になって探す筈。納得がいかないと表情を曇らせる敦に対し、夏見が云った台詞には或る意味では説得力があった。



「両親の名前は?」と夏見。

「父親は久木藤太。母親は久木岑子。何方も日本で有名な作曲家だよ」

「(あれ…其の名前…何処かで…)」

「で、調べて解ったんだけど…此の久木孝太君は、二人の本当の子供じゃないのだよ。実の子供は、一年前学校の屋上から飛び降りて自殺している。名前は久木祥一郎。当時、夢ノ咲学院のアイドル科に通う二年生だったらしい」

「っ」


太宰から告げられた一人の名前を聞いた瞬間、心臓が嫌に早く鳴った。ドクン、ドクン、と煩い。資料を掴む手に力が入り皺が出来た。それから誰かが何かを話していた気がするが夏見の耳には全く入っていなかった。会議が終わった後、フラフラと事務所を出て屋上に来て壁に凭れ掛かり、ズルズルと座り込んだ。



「そっか…どっかで聞いた事ある名前だと思ったら、彼の毒親だったんだね」



立てた膝に顔を埋めた夏見は拳を強く握り締め、心配になって様子を見に来た敦が来るまでずっとそうしていた。








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