文豪短編 | ナノ
 拍手log4




―――白百合の如く美しい君に心奪われた。僕は君が好きだ

―――今日体育で転けたよね。怪我はしなかったみたいだけど気を付けなきゃ駄目だよ?君の綺麗な足は君だけの物じゃないからね

―――今日男子と話してたよね?僕が居るのに如何して君は他の男と口を利くの?

―――ねえ?昨日居た男は誰?あんなのが君の好みなの?あんな小さな男より僕の方が頼りになるし、何より君を一番理解している。

―――君は酷いね。僕がどれだけ君を好きだと思ってるの?知ってて他の男と居るの?そんな事をしなくても僕の愛は変わらない

―――夏見君は「ぎゃあー!気持ち悪い!寒気する!蕁麻疹出そう!」



頑張って手紙を読んだが途中で降参。十数枚の手紙凡て異能力で燃やし、灰と化した。発狂する夏見の傍ら、ジンを味わう中原は腹を抱えて笑いたいのを抑えていた。

場所は中原お気に入りのバー。夏見が読んでいた手紙、ここ二週間下駄箱に入れられていた差出人不明の手紙。最初は間違えて入れられた?と思ったが宛名が雪平夏見となっていたので今回は誰かの下駄箱には入れず、教室に持ち帰った。中身を読んで後悔した。気持ち悪い言葉が延々と綴られた文字を見るだけで鳥肌が立った。

単なる悪戯かと思った手紙は毎日毎日下駄箱に入れられていて、日を重ねる毎に手紙の内容は上記の様に酷くなった。手紙にある小さな男は百パーセント中原だ。読んでいる間、額に青筋が浮かんだが見ていない振りをした。

ぜえぜえと息を切らし、自分が頼んだベルモットを一気に飲み干した。祖国の酒は何度飲んでも飽きない。「すいません、ベルモットお代わりー」店員にまたベルモットを注文。ふう、と一息吐く。



「こんな気持ち悪い手紙寄越す人に心当たりが全く無い…」

「手前に好意を抱いてる野郎なのは間違いねェがな」

「其れにしたって度を越してます。気持ち悪いです」



人の行動に細かくけちを付ける輩の知り合いは居ない。いい加減気味が悪い上に鬱陶しくてしょうがない。明日辺り探偵社に行き乱歩に相談しようと決めたところでベルモットが来た。丁度ジンを飲み干した中原はメスカルを注文、+適当な肴も。



「面倒臭いです…。簡単に相手を割り出せる方法ってないですかね」



乱歩に相談しようと決めた矢先、早く解決したい夏見は良い方法は無いかと中原に訴えた。



「考えるまでもねェ。明日ぐらいには相手も動くだろうよ」

「何で分かるんですか」

「大人には分かるんだよ」



頭に?マークを浮かべる夏見は知らない。先程から、二人から離れた隅のテーブルで中原に憎悪を向ける男の存在を。気付いているのは其れを向けられている中原だけ。愉しげにくつくつと笑う中原は注文した肴ーローストビーフを口に含んだ。

納得していない表情で彼の横顔をじっと見つめるも愉しげに喉を鳴らして笑うだけで何も説明してくれない中原に諦めた夏見はまたベルモットを一気に飲み干す。伊太利亜に居た頃色仕掛け(ハニートラップ)が苦手だった為KGB出身の部下に教授を願うが無駄に終わり、其れで相手と飲む際誰よりも酒に強くないといけなかった。なので、アースクェークは三杯飲めるぐらい夏見は酒に強くなった。多少の酒なら一気に飲み干しても何ともない。一緒に酒を飲んで楽しめる相手が居るのは多いに喜ばしいがあまりに強いと面白くない。「すいません!ピッツァとグラッパ下さい!」今度は食べ物と酒同時。どれも伊太利亜で生まれた品。

家族(婆やは除き)は嫌いでも祖国は愛しているのだろう。店に着てから伊太利亜に縁がある品しか注文していのだ。早く来い来い美味しいピッツァとグラッパと歌う夏見に呆れつつ、ローストビーフを食べ終えメスカルを飲み干した中原も酒を頼んだ。今度はラム。酒は好きだが酔いやすい中原が珍しくまだ酔ってない。珍しい日もあるものだと内心思ったのは内緒。



続く

prev / next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -