ひとりじょうず | ナノ




最終章
   └二十七



「…未来を一人で作るか誰かと作るかは自由だよ」

「…っく…」

「君の心はいつだって君だけのものだ」



白夜はふっと私を通り越して、通りの向こうを見つめた。




「…思ったより早かったな」

「…??」

「まぁ、いいか」



ニヤリと笑うと、今度は私の目線に合わせるように少し屈んだ。




「―結、君は誰とどんな未来を作りたいの?」

「…わ、私…っ」




―もうこれ以上願ってはいけないような気がして。

これ以上、甘えては罰があたりそうで。



でも、本当は…


本当は、私…





「結」

「っ!!」




ふわりと空気が揺れて、白夜の腕の中に収められた。

目の前で綺麗な白銀の髪が靡く。




「首の傷…ごめんね」

「そんな……もう痛くないよ…」



白夜は首の包帯に顔を寄せると、ギュウッと私の背中で腕の力を強めた。





「…僕は甘えん坊で無邪気な君が好きだよ」

「…白夜…っ」

「きっといつまでもいつまでも、僕は君が好きなままなんだ」




白夜の肩越しに白じんで行く空を見ながら、小さな頃の二人を思い出していた。

星降る池のほとりで、赤い風車をまわしながら、笑い合ったあの日…


スッと私から体を離すと、白夜は柔らかく微笑みながら私の頬を撫でた。





「白夜……」

「…………」

「わた……っ!?」


ぷちゅ




柔らかい感触は、少しして離れていった。

間近で白夜の赤い瞳に覗き込まれて、漸く何が起こったのか理解する。





「な、な、な……!?」



動揺する私に、白夜は悪戯な笑みを向ける。




「いいじゃん、これくらい。ご褒美ご褒美♪」

「…ご、ごほ…っ!?」



と、次の瞬間。





ひゅんっっ




風を切る音がしたと同時に、白夜が私の頭の後ろで何かを掴んだ。




ちりんっ


(あ…この音…?)



聞き覚えのある音色に、どきんっと心臓が鳴る。





「危ないなぁ…結の頭に刺さったらどうするのさ」



怒り混じりの白夜の声。

私は恐る恐る振り返る。




「う、嘘……」



朝靄の中、ゆっくりと人影が近付いてくる。

この距離でもわかる冷ややかな視線…




「く、薬売りさん!!」



そこには寝巻きに羽織姿の薬売りさんが、鬼の形相で立っていた。



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