番外章(五)
└十三
「お母さん、私…私…お義父さんに…っ」
「やめてっ!!」
母の声が台所に響く。
背負われた幼い弟が、むずがって愚図った。
「…今の…この幸せな生活がるのは…あの人の…邦継さんのお陰よ」
(…お母さん…)
お母さん、どうして
ちゃんと最後まで私の話を…
「わかるでしょう?結…」
わからないよ、お母さん。
「結だってお父さんが出来て嬉しかったでしょう?」
違うの。
お母さん、私、あの人が怖いの。
汚れていく自分が、怖いの。
ねぇお母さん。
「せっかく…!せっかく"家族みんな幸せ"になれたのよ!」
極めつけの一言は、私の心を容易に砕く。
お母さん…
その"家族みんな"の中に、私は入ってる?
「…私には…どうにも出来ないのよ…わかって…結…」
でもね、お母さん。
私、ひとつだけ知っているの。
暗闇で揺れた、お母さんの矢絣の着物。
知っているの、お母さん…
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