番外章(四)
└三
「お前、この辺の奴じゃないだろう?」
「あ…は、はい…」
男の子は私を確認するように、じろじろと見た。
(…何だろう、この服…?)
どこかで見たような…?
何だかとてもいい着物のようだし…
「あ!!そうだ!貴族!!!」
「はぁ!?」
その子の着ている着物は、昔話に出てくる貴族のような着物だ。
あの変な帽子はかぶっていないけど。
「…何だ、俺のことは知ってるのか?」
「えっ?だ、誰ですか…!?」
「お前…ふざけてるのか!?」
男の子はムッと顔を歪めると、そのまま私のそばにしゃがみ込んだ。
「何だ、お前泥だらけじゃないか」
そう言いながら、ふと足のほうを見る。
「お前…怪我してるじゃないか」
「あ、あの、さっきそこから落ちてしまって…」
私がゆるゆると崖のほうを指差すと、男の子は呆れたように私を見た。
「お、お前よく無事だったな…」
「あ、あはは…」
曖昧に笑う私を見て、ひとつ息を吐くとポンっと膝を打った。
「え、きゃあああ!!」
「暴れるなよ、綺麗にしてやるから」
男の子はひょいっと私を担ぎ上げると、すたすたと歩き出す。
「あ、ちょっと待って!私、一緒に来た人が…!」
「あーもー暴れるなって!」
「く、薬売りさん!!」
必死に抗議する私を気にも留めず、男の子はある洞窟に入っていった。
「よっこらしょ」
「……ここは?」
外とは打って変わってひんやりした空気に、私は思わず身震いした。
男の子は慣れた様子で洞窟の中に蝋燭で火を点す。
よく見てみれば、辺りには少しだけ生活感のあるものがあって。
「……あなた、ここに住んでるんですか?」
「ははっ!違うよ、ここは俺の隠れ家」
「隠れ家…洞窟が?」
「そ。」
少し笑って答えると、男の子は奥にある荷物の入った籠をあさり始めた。
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