ひとりじょうず | ナノ




第五章
   └二十九



未だ混乱しまくる私達を、薬売りさんは呆れたように見ている。



「え、ちょ、えぇ!?」

「庄造さん赤ちゃんができたの!?」

「そうみたい!!俺、子供産むみたい!!」

「ちょ、あんたが産むんじゃないわよ!!」

『…結、庄造さんは産むんじゃなくて仕込ん…』

「薬売りさん!!余計な事言わなくて良いのよ!!!」




一頻り騒いだ後、絹江さんは自分のお腹をそっと撫でた。

そしてしみじみと呟く。




「そ、そっか…赤ちゃん…そうなんだ…」



嬉しそうに涙ぐむ彼女を見て、私の胸は熱くなった。





「絹江さん…おめでとうございます…!」

「結ちゃん…ありがとう」

「本当に本当に…!良かったね…!」



私達は、泣き笑いで手を取り合った。




「庄造さんも……ええぇ……」




庄造さんはというと…




「う…うぐっ…うぇえ…ひっく…」

『…無様な喜びようですね』

「薬売りさん!」



これでもかと言うくらい、大量の涙と鼻水を流しながらふるふると震えていた。




「お絹!!もう寝ろ!!今すぐ寝ろ!!床に就け!!!」

「え、は、はい!!」

「あー!ダメだ!走るな!慌てるな!!急げ!!落ち着け!!!」

「あんたが落ち着きなさいよ!!って、ちょっと!!」




庄造さんは我慢ならないと言った様子で、絹江さんを担ぎ上げた。




「ちょ、怖…ぎゃああぁああ!」



そして絹江さんの悲鳴と共に、部屋へと消えていった。




「…………」

『…………』



取り残された私達は顔を見合わせると

『…戻りますか』

「…ですね」

自分達の部屋に戻ったのだった。



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