眼精疲労には目薬



ガラガラと銀の小さな玉がぶつかり合う。沢山敷き詰められたその玉の入った箱を何箱も持ちながら、銀時は満足そうに頬を綻ばすと、その箱をカウンターまで持っていった。

銀の玉=パチンコの玉。

どうやら本日は勝利の女神が降臨してくれたお陰で軍資金3000円だったのだが大勝利を収めてしまった。これなら0が5つは行くかなーっと店員にそれを渡すと、ふと一般景品の棚が目に付いた。特殊景品で溢れた端数を何時も此処でチョコレートとか甘い菓子に交換してもらっているのだが、今日はチョコレートではなく違うものが目にとまった。


「銀さん、今日は大当たりじゃねーか。ほれ特殊景品と…余りはどうするね?何時もと同じチョコでいいか?」

「…あー…悪いな。板は一旦返すからよ。そこにあるカロリーエイトありったけくれや。んで残った球数を特殊景品にしてくれ」

「は?全部カロリーエイトで?」

「おう」

「どうしちまったんだい銀さん?こりゃあんまり甘くねーぞ?」

「…非常食になんだろ。いーからそうしてくれ」

「?へいへい」


特殊景品より一般景品のカロリーエイトをメインでくれだなんて、あの坂田銀時らしくないな…と思いながらも、店員は一旦渡した特殊景品の板を回収するとカロリーエイトを全て紙袋の中に詰め込んだ。そしてもう一度計算をしなおすと残り分の球数を特殊景品として渡してやった。
かなり金額は減っちまったか?と思ったがカロリーエイトを買い占めぐらいではそこまで料金もかからなかったらしく板の枚数は結構ある。
その事に、よし!と鼻息を荒くすると、渡された大量のカロリーエイトを抱え換金場所へと向かった。


「おー!今日の俺やっぱすげーじゃん!!」


換金を終えた札をひーふーみーっと数えながらかぶき町を歩いていれば、背後から「銀さん?」と声が掛かった。この特徴のない声は聴き慣れていてすぐに分かる。
銀時は数えていた札を急いで懐へとしまい込むとクルリと背後に振り返った。


「おう、ぱっつぁん。どうしたよ」

「トイレットペーパーが無くなってたんで買出しです。ってか、それ…またパチンコ行ってたんですか?」

「あ゛」


振り返った先にいたのは従業員の志村新八で、自分の姿を呆れたように見てきている。
急いで金を懐に隠したが、景品のカロリーエイトの紙袋は抱えている。しかもご丁寧に紙袋には大江戸パチンコとロゴ入りだ。

銀時は渋々観念するように後頭部を掻くと「勝ったからいじゃねーか」と言ってその足を進めた。が、それを新八が引き止める。


「ちょっと、まだどっか行く気ですか?仕事の電話が入るかもしれないんですからいい加減帰ってきてくださいよ」

「わーってるわーってるって」

「わかってるって…じゃぁどっち行くんですか。家そっちじゃないでしょ。ってかあれ?何で景品カロリーエイトばっか何ですか?珍しくないですか?」

「………」


目ざとい。
眼鏡をくいっとあげながら紙袋の中を確認してきた新八に銀時は若干顔色を悪くさせると「うるせーな」と少し強めに声を出して振り切るように足を進めた…のだが、何故か新八もその後をついてきてしまった。


「銀さん!本当どこ行く気ですか!」

「うっせ!!お前はさっさとケツ拭く紙買いにいけ!!早く行かねーとテメーの髪でうんこ拭くぞ?!」

「はあ?!ってか何そんなに慌ててるんですか?!何処に何しに行く気何ですか?!」

「お前に関係ねーだろ!!」


…本当にそうだ。
自分は何処に何をしに行く気なのだろう。
いや、それはわかっているのだ。
このカロリーエイトを美国に届けようとしているのだ。
だがしかし、何故自分はそうしようとしているのだろう?別にこれをくれてやる義理はないのだ。そりゃ。この前競馬で勝たせてもらったし、依頼と称して金ももらったが………そう!それだ!その礼のため、自分はこれを彼女に届けようとしているんだ!別に何ら可笑しな事はない!!

そう自分に言い聞かすと銀時は若干悪かった
顔色を元に戻すと気持ちを切り替えて足を進めた。






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