真撰組に摩由がやってきたのは昨日
一応、歓迎会と言う名の宴会を開こうと言った近藤の申し出を断わり、摩由は山崎に屯所内の案内や隊士らの任務内容を確認して貰っていた


「あの、指揮官の名字はなんと言うんですか?」


屯所内を案内していた山崎が少し遠慮がちに聞いてきた
それに摩由は口端を少しだけ上げると『まだ無い』といって手元の屯所内見取り図に視線を移した


まだ無い?
それどーゆー意味?
「吾輩は猫である」的なボケ?!


困った顔で先を歩く山崎に気が付き、摩由は一言付けたした



『だから摩由で構わない。指揮官などと呼ばれるのは慣れていないしな』


「はぁ・・・・・」



そう言う事を聞きたかったわけじゃないんだけど・・・・・



山崎はバレないように小さく溜息を吐くとピッと姿勢を正した
それもそうだ、一応同じ真撰組の同士になったとは言え、彼女は警察庁の暗殺部隊最高指揮官。噂では松平片栗虎よりも実権を握っていると言われている。
少しでも無礼を働けば首を飛ばされるかもしれない。
もちろんこの時の首とは2つの意味で

そんな山崎の心情を読んだかのように摩由は見取り図に目を向けながら言葉をかけた



『そう堅くなるな、普段通りのお前で構わない、真撰組の最高指揮官といってもお前らと同じ一、隊士には変わりはない。何か粗相をしてお前の首を跳ねる事はない』



淡々とそう言う彼女に山崎は少し意外そうに摩由を見た
この女から出ている雰囲気はどう見ても冷酷で冷淡な感じしかないのに、こんな事も言うのか、と




意外と優しい人?




『だが、お前が任務を全うできなかった時は色んな意味で首が飛ぶから覚悟しておけ』



前言撤回。
副長並みに怖い人かもしれない
いや、もしくはそれ以上・・・・・・



山崎はヒクっと笑顔を強張らせると先程よりも姿勢を正し屯所内の案内を再開した







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