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「ねぇ独歩くん、泣かないで」

気がつくと俺の頬にはまた涙が伝っていた。

名前は俺の顔に手を添えて、わたしに手紙が来てから独歩くんはよく泣くようになったね、と悲しそうに言った。

・・・そうかもしれない。

何をしていても、名前といる時も、寝ている時でさえ夢に名前が居なくなった世界を見る。

考えるだけで、心臓がキュッと掴まれたようになり、不安が常に付き纏う。

名前、名前。

なんでこんな世界になったんだ。

地球にいた頃は名前の身体は弱くても幸せだった。

名前が俺の側から消えるなんて考えたこともなかったし、俺も死ぬなら名前と、なんてかなり重いことも思っていた。

結婚して、子供が生まれて、そして傍には名前がいつもいる。

・・・誰が悪いんだ、
地球をめちゃくちゃにした人間?
食糧不足を解消するためにこんな政策をとった政府?
名前を弱い体に産んだ両親?
・・・それとも、俺か。俺が悪いのか。
思えば名前にばかり気を遣わせて俺は何もしてあげれていない。

俺はいつも仕事ばかりで、名前を遊びに連れて行ってあげたことなんて数える程しかない。

こんな恋人が最期に看取る人間だなんて、最悪だ、

・・・大好きな名前がいなくなる時にこんなことしか考えられない自分が1番最悪だ。

ねぇ独歩くん、わたし独歩くんと恋人になれて幸せだったよ。

嘘だ、嘘だ、俺はお前に何も与えることが出来なかった。

本当は、独歩くんと結婚して、可愛い子供欲しかったけど、

あぁ、俺も欲しいよ、お前との子供ならお前によく似てすごく可愛いんだろうな。
性格だけは俺に似ないでくれよ。

独歩くん、わたしがいなくなっても、わたしのこと忘れないで欲しいけど、独歩くんはちゃんと自分の幸せを見つけてね。

俺が幸せを感じるときなんて、お前といる時だけなんだよ。お前無しでどうやって幸せなんて感じたらいいんだよ。

独歩くん、

「大好きだよ わたしと出会ってくれてありがとう」

俺は堪らず名前を抱き締めた。

・・・病人に配慮した力加減ではなかったかもしれない。

名前が俺の首に手を回し、しくしくと泣いている。

名前が泣いているのを見るのは随分久しぶりな気がした。


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