ゆっくり、雲が流れた。
ゆっくりゆっくり。空に浮かんでいたくじらは不格好に歪んで、やがて形を無くした。 絵本の中の雲は自在に姿を変えて子供を喜ばせてくれるのに。その瞬間俺はぼんやりと、少しの喪失感を抱いた。
「シマ」
青から群青へ、少しずつ深く色づく空を背にゆっくり、やっと作られたくじらが空に溶けた。夏の匂いを孕んだ風に揺れた髪が、懐かしい記憶を呼び覚まして、無意識に声が零れ落ちた。
「高瀬?」
‘
白くじら
と
群青
’
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