ring-secret-


街中で、ふと見つけたジュエリーショップ。
ショウウィンドウから、紅い石が嵌められたリングが見え思わず足をとめた。
エルザに似合いそうだな、と思ったらほぼ無意識に購入していたのには自分でも驚いた。
しかも、店員に勧められそれの男性用ペアリングも買ってしまったのだ。
我ながら馬鹿だと思う。


「買ってどうするんだよ…」


会いに行くのも、会いに来るのも許さないのに、彼女を誰にも渡したくないなんて。
こんな指輪なんか買って、牽制のつもりか。

待たせ続けている自覚はある。
でも、迎えに行く勇気なんてない。
彼女には彼女の生活があり、居場所もある。それを考えたら、どうしても出来ないのだ。
それでも、彼女は待っている。
ジェラールが来るのを、ただ待っているのだ。
エルザは強い。
強く、したたかで、どうしようもない阿呆だ。
来るかも分からない男を待ち続けるなんて、ただの阿呆でしかない。
でも、そんな彼女が愛しくてたまらない。
今すぐにでも抱き締めたい。
キスしたい。触れ合いたい。
傍にいたいのに…。


「エルザ…」


ずっと待ち続ける馬鹿なエルザ。
ごめん。今はまだ会えないから、せめてこれだけでも。
会う勇気が出たら、これが本当はペアリングだったと教えるから。


名前も住所も書かないかったが、彼女ならわかってくれる。
根拠はないが、そんな気がする。


「愛してるよ」


らしくもなく、最後に魔法をかけたのは、魔がさしたからだ。




















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