消えゆく恋のつなぎ止め方
君が僕じゃない誰かを見つめてるような気がして、それが確かなことだと断定できるまで、そう長くはかからなかった。
『明日どこに行こうか?』
明日のデートの予定を決めるため、2人で来たのは最近よく雑誌で特集されているおしゃれな喫茶店。
君はカフェラテ、僕はシンプルなホットコーヒー。
風味を味わうようにして口に含むと、少し苦いコーヒーの味が口に広がっていく。
『そうだね。どこにしようか。』
そう言いながら君の手には携帯。
『どこか行きたいところある?明日なら少し遠くても運転頑張るよ。』
『そうだね…。どこでもいいよ。』
ポチポチと携帯を押している君の指先は、僕じゃない誰かとの会話を繋いでいく。
『ねぇ…。』
『んー?』
『これからもずっと一緒だよ。』
『うん…。そうだね。』
気持ちのないその言葉は、多分きっとこの先などないということの肯定なのだろう。
もう僕らには、2人一緒の未来などないということなのだろう。
『…あ。』
携帯にメールが来たのだろう。
君がすぐにそれを見る。
『明日用事できちゃった。デートはまだ今度にしようか。』
そういうなり鞄を持ち、君は立ち上がる。
『…そっか。…うん。…わかった。』
『じゃあね。』
手を振り足早に立ち去る君を僕は止められない。
喫茶店の窓から外を見ると、携帯で楽しそうに誰かと話をしながら歩いている君の姿が見えた。
あの笑顔を知っている。
特別な人にだけしか見せない笑顔。
少し前まで、僕にだけ向けられていた笑顔。
今はもう、僕には向けられなくなった笑顔…。
『カウントダウン…開始かな。』
再びコーヒーを口に含む。
広がる苦味に、頭が冴え渡るような感覚がした。
今頭の中で、君を再び取り戻す方法を探っている。
カウントダウンなんて、そんなもの…。
『止めてやる…。』
心に湧き出た黒いそれは、君との時間を守るため。
『待ってて。』
さてと…。
君を迎えに行くとしよう…。