後悔の海に沈む


頬をくすぐる風に少し肌寒さを感じる。



潮風が香るこの風は、私の思い出の場所。



夕日の沈む海岸線を背景に砂浜を歩く。



寄せては返す海の流れはあの日と何ら変わらない。



だから、私はこの場所が大好きなのだ。



『今年も来たよ。』



空に届けるようにして言った言葉は、誰の返事ももらえない。



海へと体を向けて立ち止まると、過去の思い出が脳裏を駆け巡っていく。



笑い合った思い出。



喧嘩して言い合いになった思い出。



2人して涙を流して抱きしめ合った思い出。



すべてが美しい思い出だった…。



ツンとしたゆるい痛みが鼻の奥を走る。



『…会いたいよ。』



立ち止まり空に向けて手を伸ばす。



溢れ出した涙も、胸をえぐるようなこの気持ちも思い出も…。



『あなたがいないとダメなんだよ…?』



あなたがいない私の思い出。



あなたを失った2人の思い出。



失われていく2人の思い出。



『私も…。』



ゆっくりを海の中へと歩を進めていく。



冷たい水に、それでも歩みを止めることはない。



『……っ。』



ーーバシャッ。



まだ浅瀬のこの場所に座り込んでしまったこの私は臆病者。



あなたに会いに行く勇気すらない臆病者。



『ごめっ……、ごめんね…。』



子供のように泣きじゃくるしかできなかった。



あなたに会いたい気持ちは、どうしようもなく溢れているというのに…。


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