死にゆく君に何ができるか




私、明日死ぬの。



君はそういうなり、僕にニコリと笑顔を向ける。



悪い冗談だと思った。



その言葉には真実味など感じられなかったから。



『なんでそんな冗談言うの?』



おどけた顔した君とは正反対に真剣な顔をして問いかけると、君は眉尻を下げ困った顔をして答える。



『…そうだね。冗談ならよかったのにね。』



いつも笑顔の溢れた君だった。



嬉しいことは倍喜び、悲しいことは笑顔で吹き飛ばす。



涙を流す姿など見たことはなく、そんな想像も出来なくて。



なのに今の君は今にも泣き出しそうに俯いている。



どうしてそんな顔をするの…?



『いつもの笑顔で“なんちゃって”って…。言わないの?』



君は何も答えない。



それが問いかけに対する答えなのだろう。



どうして君なの?



神様はどうして彼女を選んだの?



彼女じゃなくて、どうして僕を殺してくれないの?



『私を追いかけちゃ、ダメだからね。』



俯いたまま君は言う。



そんなの、頷けるはずがない。



『じゃあ…。僕が先に逝く。』



僕らはずっと一緒なんだ。



いつも共に在るべきなんだ。



引き止める彼女を振り払い、僕はベランダの手すりに足をかける。



君がいなくなる世界になど、未練はない。



『どうして…?』



『…僕は、君のためだけに生きてきた。そしてこれからもずっと、そうありたいと思っていたんだ。』



だから…。



君のいない世界でなど、生きていく価値はないんだ。



『君がどうしようもなく大好きなんだ。』



君に背を向けたまま。



今君は、どんな顔をしているんだろう。



『…それなら…。』


いつの間にか隣に立っている君が僕を手とる。



『来世でも、ずっと一緒にいるために…。』



その手を互いに強く握る。



そしてそれを合図のようにして、僕らは空へと飛び立った。



来世でも、僕らは共に在りますように…。



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