Oh, bother!2

麦わらの一味と隻眼の女





海賊船の上


「いつの間にか麗しいレディが一人増えてるゥゥ!!どこのどなたか存じませんが、マドモアゼル、ひとまず紅茶をどうぞ」
「ど、どうも…」


金髪の男の人がダイニングに入ってきた私を見て大声を上げ、キッチンからくるくる回りながら寄って来た。若干、というかだいぶ引き気味だ。おそるおそる紅茶を受け取る。見た目はかっこいい、けど、こんな人初めてだ。すごいな。眉毛もすごいな。


「空に着いたってこんな時になんだけど、何かオヤツを頼んでいい?この子をもてなしたいの」
「ん任せてナミすわんっ!とびきりうめェのを作ってくるぜ!」
「ど、どうも…」


紅茶を飲むと、ほんの少し気持ちが落ち着いた、ような気がした。クッキーもおいしい。


「さて。あんまり時間割いてられないんだけど、あんたにいくつか聞かないといけないわ」
「は、はい。私も、聞きたいことがたくさんあるので!!」
「その前に、そこ!コソコソするくらいなら入って来い男ども!!」
「「うっ」」


ビシッと指を指した方を見ると、鼻の長い人、それから看病していてくれたぬいぐるみのようなよくわからない動物がビクビクして私を見ていた。どうやらまだ海兵のスパイではないかと疑っているようだった。
私が座るテーブルの向かい側にナミさん、その隣にこれまた美しい黒髪美人さん。キッチンで何やら作りながら、ちらりと覗いているのは、先ほどの金髪ぐるぐるまゆ毛さん。壁にもたれてじろりと視線が怖いロロノア・ゾロ。キッチンのカウンターに悠々と座り、楽しそうに私を観察しているのは麦わらのルフィだ。視線を一身に受けて、そわそわしてしまう。緊張も高まる。そんな中、ナミさんが話し始めた。


「まず、あんたは何者で、どうやってここまで来たのか。教えてくれるわよね?」
「はい。私は、訳あって海軍本部に身を置いている者で、ユナといいます。一応、海兵ではありません。とある悪魔の実の能力者に出会い頭になぜかいきなりこんなところに飛ばされて…自分でも全く理解できていないんです」
「こんなところまで、空を飛んできたっていうの?」


ぽかんとするナミさん。驚くのも無理はない。信じてくれるだろうかと不安を感じていると、黒髪美人さんが口を出した。


「…とりあえず、嘘をつくとは思えないわ。信じていいんじゃないかしら、航海士さん」
「……そうね、いろいろ驚いたけど…空に海があるくらいだわ、”あり得ない”は通用しないってことは痛感したものね」


信じてくれたようでホッと胸を撫で下ろす。今度はこちらが聞く方だ。


「ここは一体どこなんですか?」
「雲の上、上空7000メートル。私たちはこれから更に上って空島スカイピアに行くのよ」
「………ええっ!?」


予想外すぎた。これは夢か。空の上の島なんて、そんなのフィクションだ。でも雲の上に乗っかっているのはこの目で見たし。本当なのか…!!真っ青になって身を乗り出す。


「ここからどうやって帰ればいいんですか!?」
「私たちと一緒に帰るしかないんじゃないかしら?」
「来ることしか考えてなかったから、帰りのことなんか今のところアテはないけど」
「ええええ…!!じ、じゃあ、空島に海軍支部とかないんですか?そこへさえ預けてもらえば、なんとかなるんですけど」
「ないわよ。ここは地上の海とは違うの、空よ?海軍なんていないに決まってる!」
「ええええええ…ど、どうすれば…」


もはや涙も出ない。突っ伏して嘆いていると、あっけらかんとした声が聞こえた。


「おれ達と来ればいいじゃねェか!空島を冒険できるし、いいことづくめだろ!!」


顔を上げると、にっしっしと麦わらのルフィが笑っていて、ぽかんとしてしまう。そんなにあっさり誘っていいものなのか。


「…で、でも。私は曲がりなりにも、海軍に身を置いていたので…海賊の方とは…それに、見ず知らずだし…」


いきなり船に乗せてもらうだなんて申し訳なさもあるが、何より立場的に後ろめたいというか。素直に頷けず、うだうだと言っていると、ロロノア・ゾロがため息とともに言った。


「んだよ、うざってェな。仕方ねェだろ、こんな状況だ。他に方法はねェんだろ。腹ァ決めろ」
「…そうですけど。お世話になっても、いいんですか…?」
「…そりゃ、ルフィが決めることだ」


不服そうにロロノア・ゾロがため息を吐く。おずおずと麦わらのルフィを見ると、気さくに笑って、大きく頷いた。


「おう、いいぞ!じゃあ、お前は今からおれの仲間だな!ユナ!」


爆弾発言をさらりとしたルフィさんに慌てて皆が止めに入る。


「待て待てさすがにぶっ飛びすぎだろ!仮!せめて仮、だ!」
「そうだぞ!ルフィ!!」
「い、居候ってことで!!次の島までの間、お願いします…!」
「えー、面白そうな奴なのになー。まあいーや、じゃあイソーローだな!よろしく!」


ちゃんとわかっているのだろうか、カタコトだった気が…。不安になってナミさんを見ると、まああんまり気にしないでいつものことだからと苦笑された。これいつものことなんだ……
それにしても、初対面の得体の知れない女を船に乗せてくれるだなんて。海賊とは思えない。本当にこれ海賊船だろうか。動揺を隠せないでそわそわしていると、声をかけられた。


「一ついいかしら」
「はい、何でしょう」


黒髪美人さんが、私を見つめる。思い出したように私はロビンよと名乗ってくれた。


「あなた、どうして海軍本部に?見たところ、一般人のようだけど…訳あって、とは、どういうことなのかしら」


ぎくりとする。左眼のことを言っていいものだろうか。
いや、やめておこう。クザンさんとセンゴクさんから、能力のことは無闇に明かすなと言われている。海賊相手ならばなおさらだ。海賊とはいえ悪いことをするような人たちには見えないけれど、念のためだ。私を船に乗せてくれるという人たちに嘘を付くのは罪悪感があるけれど、仕方ない。


「ええっと…私、身寄りがないところを保護してもらって…雑用とかをさせていただいてます」


これは割と、本当だ。少し語弊があるけど。じっと見つめられ、そう、と短く答えられた。


「他にも聞きたいことはあるけど…まあ、後々ね。難しいことは考えないでいきましょ、お互いにね」
「そうですね…。ありがとうございます、これからお世話になります」


深々とお辞儀をすると、にっしっしと笑って嬉しそうなルフィさんがひときわ大きく声をあげた。


「よーし!んじゃ、行くかァ!スカイピア!!」


そうして、複雑な気持ちを抱えて私は麦わらの一味居候となったのだった。



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