30、何度だって言ってやる
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とある夏休みの日の夕方、


ジャージ姿の男子高校生とTシャツとショートパンツ姿の女子高校生が





「……。」

「……。」


街中でばったり出会ってしまった。





「(普通、こんな街中でばったり葵に会うかよ)」


(どーすんだよ、何を話せばいいんだ!? あの時はごめん? 元気だったか?2週間ぶり?夏休みの宿題を終わったか?今日は何をしてたんだ?ちょっと痩せたか?あー、何言えばいいんだ!?誰か教えろ!)






「……よう」


(結局、何も言えねー!)


ていうか久しぶりに会ったけど、葵はどこか元気がなさそうだ。夏が苦手って言ってたか?ていうか暑いにしてもそのショートパンツは短過ぎじゃねーか?色白の脚がなんというか。



……エロい。







「岩泉君」

「お、おう」

「久しぶり」

「おう」


(ん?普通、か?とりあえず逃げられるという心配はないようだけど)




「(えっと)」

「……。」

「(沈黙がつれぇ)」



やっぱり俺から何か話題を、







「……あの、よ」

「岩泉君」

「おう」

「……私、ね」

「……おう」



「ずっと岩泉君の事を考えていた」


「!?」








は?考えてたって何だ??
どういう意味だ?


祭りの日に泣かした仕返しか?
それとも好きだって言った事が


忘れないくらい嫌だったのか?





「それで、えっと」

「おう」

「色々考えてたんだけど、自分の気持ちがまとまらなくて、言葉にしようとすると、余計に絡まってくるの」

「……。」

「私は、岩泉君の事が好きなのかな?」

「!?」

「一人の男性として、好きなのかな?」

「……それを俺に聞くのは反則じゃないか?」

「……。」

「えーっと、とりあえずそこの公園行くか」




こんな所で立ち話してても仕方ねーし。


「うん」と葵は頷いて、一緒に近くの公園に向かった。日陰にあるベンチに座ると、葵が口を開いた。







「あの、ね」

「おう」

「私、恋愛ってよく分からないの」

「……は?」

「分からないのに、岩泉君の気持ちを受け入れるのも失礼かなと思って」

「(これは俺、また振られんのか?)」

「でも、岩泉君が私から離れていくのも嫌だった」

「!」

「ごめんね。私、我儘だとは分かっているんだけど、今まで一緒にいた時間を捨てたくない」

「……葵」

「はっきりしなくてごめんなさい」


葵は下を俯いた。







「わかった」

「え?」

「……本当は分かりたくねーけど」



要はアレだな。葵は幼馴染の俺と一緒にいたいって事だろ?








「とりあえず、夏祭りに俺が言った事は忘れてくれ」

「え?」

「ひとまず、今は友達って事でいいか?」

「……。」

「でも諦めてねェぞ。それでも、俺は葵の事が好きだ。もちろん幼馴染としてじゃねーよ」

「……岩泉君」

「葵に一人の男として好きになって貰う、んでまた告白する」

「え?……えぇ!?」


(彼は今なんと言った??また告白する?という事は私の気持ちが岩泉君にあるかどうか分かるまで待ってくれるって事?私、凄くおかしな事を言ってるのに、どうして呆れないの?)







「あ、あのね、私凄く酷い事言ってた、よね? それなのに……」

「うるせぇ、それでも葵が好きなんだから仕方ねーだろ」

「!」

「とりあえず泣くな、また及川がうるさくなるからな」

「岩泉君に泣かされたって言う」

「……やめてくれ」


(あのバカ兄貴は今度こそキレるぞ、まぁ負けねーけど)





「葵の事は今でも好きだ。けど今の葵に好かれても困る。同情で好きになられても困るからな」

「……すみません」

「いいって。俺もこのままじゃ諦めつかねーからな」

「……。」

「でも例えば、」

「?」

「例えば……だけど、葵が別の奴を好きになったら諦めがつくかもしれねェ」

「私今、好きな人いないけど」

「だから例えば、だ」


(葵にも恋愛感情が生まれて、誰かを好きになるかもしれない。それが俺じゃないかもって思うと、そりゃ苦しいけど、仕方がないって諦めがつく。葵が好きになった奴なら、そいつに葵を頼む)









「……ごめんなさい」


我儘ばっかりで、
岩泉君は私にいつも優しいのに


私は彼に何も出来ないし
何もあげれない。







「謝んなって、こうやって葵の気持ちを知れただけで充分だ。嫌われたわけじゃねーしな!」


もう一度、「好き」だと言えるんだ。






「これからもよろしくな」

「うん」







ありがとう


ありがとう



我儘言ってごめんなさい



ちゃんと「好き」だと言えなくて


ごめんなさい









(貴方の笑顔が、何よりも大好きです)



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