1、音駒に入学しました
春、出会いと別れの季節
中学を卒業して
そのまま高校に入学。
近所だから、という単純な理由で音駒高校に入学した。勉強もそこそこ出来たおかげで、特に苦労もせず合格。受験勉強なんてあまりせずにゲームばかりしていたのに、今思えばよく入試に受かったなと思う。
中学からの友達もチラホラいるし、
制服もまぁまぁ可愛いし、特に不満も無かった。
高校に入学して新学期、張り出されている新しいクラスを確認して教室へと向かった。黒板にはご丁寧にどこに座るのかそれぞれの名前が書いてあった。
「(あ……やった、後ろの方だ)」
後ろの席だと知り、少しうきうきしながら移動し、鞄を机の上に静かに置いて自分の席に着いた。
まだクラスの担任の先生は来て居ないのか、周りにいるクラスメイトは騒がしかった。まぁ静かになってるよりいい、騒がしい方が気楽でいいから。
中学の時の友達いないかなー?
なんて周りをキョロキョロしてみた。
「ん?」
ふと隣の席を見ると、ずっと机に突っ伏している男の子がいた。女の子みたいに髪が長いけど、制服が男子だからきっと男子生徒だと思う。
新しい学校生活早々に堂々と居眠りなんて、すごいなぁなんて思いながら頬杖をつきながらその男子を見つめていた。何もする事がなく退屈だったので、隣の席で居眠りをしている男子生徒を観察する事にした。
「ん、」
「(あ、起きた)」
もぞもぞとゆっくり起きたらしい彼は寝ぼけているのか、ぼーっとしていた。一体いつから寝ていたのか、というよりよくこんなにも騒がしい教室で寝られるものだ。
「?」
「……。」
「(あれ? どうしたんだろ?)」
「……?」
隣の席の彼は、ゆっくりこっちを向いた。
「……誰」
そして私にそう言った。
「おはよう」
「……おはよう、?」
「大丈夫? まだ先生来てないよ」
「……ああ、そうなんだ」
「……。(大丈夫かな?)」
何か話した方がいいのか迷っていたが、タイミングよく先生が入ってきたので、彼から前へ視線を変えた。
そして、やっぱりかと思いつつ一人ずつ立って順番に自己紹介をさせられた。新入生だからやるんだろうなとは思っていたが、正直こういうのは得意ではない。
「如月葵です。よろしくお願いします」
例文のような当たり障りのない自己紹介をして座った。笑いを取ろうと面白い自己紹介をする男子や、自己アピールの長い女子もいたけれど、あまり目立ちたくない私は簡潔に自己紹介を済ませた。
「孤爪研磨、……お願いします」
隣の席の彼もまた静かに名前だけ言って静かに座った。なんだかまだ眠たそうに見えた、体調が悪いわけではなさそうだったけど、なんだか大人しそうな印象だった。
「(孤爪君か、覚えた)」
隣の席の生徒くらいはちゃんと覚えておかなきゃ、と思い再び前を向いた。
クラス全員の自己紹介がやっと終わり、いつの間にか先生から部活動の説明をされた。中学の時は帰宅部だったし、特にやりたい部活もないから高校も帰宅部でいいかな……なんて思いながら聞いていた。
私には部活動よりもやりたい事がたくさんある。それだけは絶対に辞めたくない。
(一年生にとんでもない美少女がいる)
音駒高校では、
そんな噂が1人歩きしていた。
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