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「(あれ?)」
ふと体育館の外を見ると、空はもう真っ暗になっていた。ずっと帰宅部だった私はいつも学校が終わったら真っ先に帰っていたから、こんな時間に学校にいるなんてなんだか変な感じだ。
「お疲れ様でーす」
「え?葵ちゃん1人で帰んの?」
「クロ先輩?そうですけど……。」
「送ってくって、夜道に女の子は危ないしな」
「え」
「え?」
「……クロ先輩が優しい」
「いやいや、俺は優しいよ?それじゃ俺らすぐ着替えてくるから部室の前で少し待ってて」
「はい(俺ら?)」
葵は言うとおりに部室の前で待っていると、制服に着替えたクロ先輩と研磨君が一緒に出てきた。
「おまたせー」
「葵、帰ろう」
「うん」
クロ先輩と研磨君にそう言われて彼らの隣を歩いた。
「いつも二人で帰ってるんですか?」
「うん」
「俺らの家はご近所さんだからなー。ちなみに葵ちゃんの家ってどっち?」
「研磨君の家の近くですよ」
「え、って事は最寄り駅一緒?じゃあ俺んちも近くか」
「そういう事になりますね」
「じゃあ毎日送って行けるな。女子高生が夜道を1人で歩くのはちょっとなぁ」
「えーっと、ありがとうございます」
確かにここらへんは暗いし、1人で帰るよりは2人がいた方が心強いかもしれない。
研磨君とゲームの話をしながら帰れるし。
次の日、いつものように学校へ向かうと見覚えのある顔を見つけた。
「あ、おはよう山本君」
「!?」
(え!?今俺、如月さんに挨拶された!?)
「え、あ、お……おはよう、如月さん」
「今日も一日頑張ろうねぇ」
「え、お……おう」
朝から美少女の笑顔が見れるとかもう……
ありがとうございます!!
ていうか俺、どもりすぎ、
格好悪……。
「(いやいや、そもそもだ……如月さんみたいな美少女に話しかけられて普通でいられる野郎なんて居ないね!断言出来る!)」
つーかでも、黒尾さんとかめっちゃ触ってたし、よく触れるよな……さりげない感じがもうプロだ。
「あ」
「?」
如月さんが何か言ったかと思えば、俺の横を通り過ぎて早足で歩いて行った。
「研磨君、おはよう」
「……おはよう」
「昨日ついに上位ランク行ったんだよね」
「え、もう上位なの?早くない?」
「おかげで寝不足だよ……ふぁ」
「1人でクエストやったの?」
「うん、だから結構時間かかったよ。しかもキークエ最後のモンスターが凄く強くて」
「……。」
「研磨君?」
「……。」
「怒ってる?」
「……別に」
「(あ、機嫌が悪い)……ねぇ研磨君」
「何?」
「お昼休みって空いてる?一緒にクエスト行こうよ」
「!」
「ダメ?」
「いいよ。俺が上位ランクに上がるまでずっと手伝って」
「いいよー、じゃあお昼ごはん一緒に食べよう」
「うん」
山本「……。」
なんだあれ羨ましすぎる!!?
研磨の奴、如月さんに不貞腐れてたし……。
いや、ていうか如月さんという美少女に挨拶されても当たり前な表情なくせに、ゲームを1人で進めちゃって機嫌を悪くするとかどういう事なんだ。
感情の変化はソコじゃねぇだろおおおおお!?
美少女だぞ!?
俺なんかと触れ合う機会なんて一体いつ訪れるか分からない美少女だぞ!?
「羨ましくなんか……ぐず(泣)」
(美少女の扱い方・話し方を教えてください)
(……山本、なんで頭下げてんの?)
(……ぐず(泣))
(え、何で泣いて……)
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