思春期 | ナノ




02







どうしたものか、好きと言われたのは一昨日で、今日部長と会うなんて。俺は心の中で頭を抱えた。告白といってもそれが本気なのかそうでないのかも分からない現状では、頭を抱えるほか俺にできることはないのだけど。
結局電話もメールもしなかった。

気分の重いまま授業を過ごし、放課後を迎えた。心なしか足も重い。鍵を受け取り、部室へ向かう。まだ誰も来ていないようだ。

ゆっくりと制服からジャージに着替えているうちに部員がぽつぽつと部室に入ってきて、十分くらいで大体が集まった。というか、十分も部室でももたもた着替えている自分、なんだか溜息をつきたくなった。というかついた。

練習内容を確認してコートに向かった。ゴンタクレの一年生は、今日三年生が来ることを知って「試合できる!?できるんか!?」と執拗に聞いてくる。少しうっとうしい。というか、その明るさに余計気分が重くなりそうだ。

「財前、金ちゃん。」

背後から名前を呼ばれ、振り返った。そこにいた人物にデジャヴを感じた。

「白石ー!!」
「金ちゃん、久しぶり。」
「やっとるなあ。」

先に同じクラスの二人が来た。多分あとからラブルスの二人らへんが来るんやろう。いつも通りの部長の様子に俺はかえって困った。
「試合しようやー!」という金太郎に「練習が終わったらな。」と部長は笑って、金太郎を練習に行かせた。

「蔵りーん!謙也くーん!」

そのあとすぐに小春先輩の声がして、それに続いてユウジ先輩の「待ってや小春ぅ!」という声が聞こえた。そしていつも通りうっとうしい絡み方をされた。

笑っている部長がなにを考えているのか俺には分からなかったが、目が合ったとき俺は咄嗟に逸らしてしまいなんだか罪悪感に似たようなものにもやっとした。



先輩達が、というより部長がいて俺は少々やりにくかった。
部長がいつもと変わった様子はやはりこれといってなかったけど、部活中は話しかけてこなかった。それくらいしか気にならない。(結構大きなことかもしれない。)

部活が終わり、練習の後先輩らとテニスもしてた金太郎がもっとやりたいと駄々をこねていた。俺はなんとか金太郎を宥める。部長は、毒手を出したりせずにただそれを見ていた。

「謙也、もう一回だけ金ちゃんとやってやりぃ。」
「えっ。」

俺は少し驚いた。謙也さんはなんで白石がやらないのだろうという表情をして、でも部長の笑顔に逆らえなかったのか、もしくは金太郎のキラキラとした眼差しに負けたのか、「よっしゃ!金ちゃんいこか!」とコートへ向かった。
小春先輩とユウジ先輩は審判をやるそうで、俺は部長と二人きりになってしまった。
もしかして部長はこれが目的だったのではないか、なんて、今更気づいたって仕方のないことだ。

「財前。」

名前を呼ばれ、部長の方を見る。

「部室、行かへん?」

優しい笑みの中に、どこか不安そうな表情が見えた気がして、俺は断れなかった。

そうでなくとも、断るなんてできなかった。





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