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病室には、眠っている莉緒がいた。
でもいつもの莉緒じゃなかった。
包帯を巻かれ細い腕には点滴の管が繋がっている。
いつもの明るい笑顔はそこにはなく、眠っていても怪我の痛みに顔を歪ませていた。
「命に別状は無いって。そのうち目を覚ますだろうってさ。」
新羅はそう説明してくれた。
「どうして…誰が、誰が莉緒を…っ!」
「臨也、言おうかどうか迷ってたんだけど、莉緒ちゃんを襲った奴ら分かったんだよ。」
───全部俺のせいだった。
莉緒を襲ったのは俺が趣味として、人間観察の対象としていた男の一人だった。
その男は適当に騙して、借金を背負わせてやった。
そんなぐらいにしか記憶に残っていない、つまらない奴だった。
その男は借金が原因で全てを失い、俺を恨んだ。
そしてその腹いせに莉緒を襲った。
俺は男を同じ目遭わせた。
莉緒と同じように大怪我を負わせた。
それでも足りないぐらいだった。
せめてもの償いだった。
その後だった。新羅から莉緒が目を覚ましたと連絡があり、俺は病院へ走った。
病室のドアを開けると莉緒がいた。
「莉緒っ、ごめん、俺のせいで、俺のせいでっ…」
「臨也、顔あげて?大丈夫だよ?見てよ、私元気じゃない。ね?
それに新羅から聞いたよ?私を襲った男に復讐してくれたんだよね…でももう良いよ、私は大丈夫だから。臨也がそんなことする必要ないよ?」
莉緒は笑顔でそう言った。
全部俺が悪かったのに、そんな俺に笑顔をむけた。その笑顔が俺には辛かった。
俺は莉緒の優しさに耐えられなくて、俺が居なければもっと幸せだった筈なのにと思って、
彼女の前から姿を消すことを選んだ。
彼女の幸せを願って────
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