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複雑な想い(1/3)




「早く!!」



キュラソーの大声にハッとしたりゅう。



「・・・子供たちの事、任せるわよ」




「え?」



灰原が驚き後ろを振り返るが、そこにはもう既にこちらに背を向けて降りて来た方へと上っていくPhantomの姿。




「今の声って・・・りゅう、さん・・・?」



先ほどまでとは違い、最後の一言だけ、声が違い、灰原はその声に聞き覚えがあった。




「・・・変装用ってわけね」



キュラソーもその事実に気づき、Phantomの姿、声などは変装用であるという事が分かったが、組織に対し裏切り行為をしている今の自分には関係がないと灰原を連れてその場から駆け出した。




「・・・・・・・」



来た道を戻りながらりゅうは、自分がキュラソーに言いかけた言葉が頭の中をグルグルと回っていた。



ーーー私は別に組織に居る人間全てをーーー



「・・・憎んでないとでも、言うつもりだった?」



そんな事ない。私は昔からずっと組織を憎んできた。その中で主にジンに対しての復讐心が強いが、組織全体を憎んでいたのは確かだ。



組織さえなければ、ジンと言う人間もいなかったし、父が組織を追って、知りすぎて殺されることもなかった。今も、家族みんなで笑っていたかもしれない。




なのにっ・・・組織に居る人間すべてを・・・何?私、なんて言おうとしたのっ・・・?



アイリッシュの言葉に、キュラソーの子供たちを助けようとする姿を見て私は絆されてる・・・?



「私なんで、キュラソーになんか哀ちゃんをっ・・・子供たちを任して別行動してるの?」



あいつが本当に子供たちを助けてくれるとでも・・・?



そんなこと・・・、それじゃまるでーーー




「私がっ、組織の人間を信じてるみたいじゃないっ」



バカみたいだ。なんで、組織の人間なんかに任せて私は上に向かってるの?頭ではそう思っているのに、足はひたすら元の場所に戻っていてーーー




「お兄ちゃん!」




「りゅう!?」




前方に見える影が、消火栓の前で止まっている。恐らく全ての電気が落ちた時に視界を奪われ、爆弾の配線が見えなくなっているのだろう。




「やっぱり、この暗さじゃあ配線が見えなくて困ってるんじゃないかと思って・・・」



お兄ちゃん、携帯も持ってなかったみたいだし。と小さく言葉を発しながら兄へと近づき携帯の明かりを差し出した。




「あぁ、助かったよ。後二つ、配線を切れば終わるという所まできて視界を奪われたんだ」




「見える?」



「あぁ、よく見える。後はこの配線と、こっちを切ればっーーー」



二本の配線を切った瞬間、基盤についている赤いランプが光り出した。



「「!!」」


降谷もりゅうも驚きに目を見開き、降谷は、しゃがんで明かりを差し出してくれていたりゅうを咄嗟に引き寄せてギュッと抱きしめた。




「・・・・・?」



「・・・・・間に合った?」



ランプが光って少し経つが、何も起こらない事を確認して二人は「はぁ〜・・・」と項垂れた。



「ギリギリだったな・・・・」



抱き寄せられている腕が弱まり、りゅうはコツン、と兄の肩に頭を置いた。




「りゅう?」



「・・・・ん、なんでもない。ごめんね」



まだ安心出来ないのに、時間ロス出来ないよね。と苦笑いしながら立ち上がるりゅうを見て、降谷は同じく立ち上がってもう一度ギュッと抱きしめた。




「お兄ちゃん?」と首を傾げて降谷を見上げるりゅう。



「今回のこの事が全て終わったら、時間を作るよ」



「え?」



「話そうか。今までお前がどうやって生きて来たか、そしてこれからの事・・・組織の事」



フッと笑う兄が何処か寂しげに見えてりゅうは泣きそうになった。




「でもっ、私・・・・」



「・・・大丈夫、ちゃんと聞くよ。お前の話」



「え?」



「その話の結果がどう転んだとしても、俺はお前の兄で、お前の味方だから・・・」



それだけは絶対変わらないと誓うよ。と降谷はりゅうの頭を撫でて優しく笑った。



「お兄ちゃんっ・・・・」



ギュッと首に腕を回して抱きしめるりゅうに応えるようにその背へと腕を回した。



「俺はお前に救われたんだからな・・・・」



「え?」



「・・いや、なんでもないさ」



身体を離した二人は爆弾の位置を確認した。



「主に二か所だね」



「右側の車軸と左側の車軸か・・・・」



「反対側に回って見てみる」



りゅうが駆けだせば「気を付けろよ!!」と声を掛けられて振り返り、ニコッと笑った。



「お兄ちゃんも!絶対!ここから出て話!しようね!!」



「あぁ!約束だ!」



駆けだすりゅうを見て、降谷はフッと笑った。




「・・・俺が護ってやらなきゃいけない程、あいつは弱くはない・・か」



その笑みは何処か悲しげだった。



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