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消えるつもりだったーーー(2/2)







「っ・・・・・」



ガクッとその場に膝を着くりゅう。



「りゅうさん!!」



「やはり庇うか、Phantom」



ニィッと口角を上げるアイリッシュへと肩を抑えて睨みつけるりゅう。







「りゅうっ、外へ・・・外へ連れて来い・・・」



すぐさまタワーへと向かいたいのを必死に抑えて、ライフルを握る手へ力を込める沖矢。



やはり、彼女は大切な者たちの事になると武器を、心を殺す事も出来なくなる。護りたいと、真っ先に身体が動いてしまうのだろう。



決して自己犠牲が激しい性格ではないが、それでも自分自身を護るということには疎いのだろう。



「・・・身を護る事を優先させる様に帰ったら説教決定のようですね」



沖矢は落ち着かない自分自身を落ち着ける様に必死に自分へと言い聞かせた。



「・・・大丈夫、お前を信じているさ」



ーーー何があっても、生きる事を諦めず必ず俺の元へ帰ってこいーーー




ーーーうんーーー




約束した出来事を思い出しながら彼女を想ったーーー







ドガッーーー



「くっ・・・・・」



蹴り飛ばされて倒れ込むりゅう。



そして撃たれた肩を思いきり踏まれた。



「ぅあっ・・・・・くっ」



「はははっ!随分と手こずらせてくれたな、Phantom」



お前は、ここまでだーーーとアイリッシュは銃口をりゅうへと向けた。



「っ・・・・・」



「さよならだ」



グッと引き金へと指を掛けるアイリッシュ。それを睨みつけているりゅう。




「ふ、ふふっ・・・」



「気でも触れたか?」



笑みを浮かべるりゅうをアイリッシュは怪訝そうな顔で彼女を見た。



「ボウヤ!!」



「うん!!」



りゅうの声と共にコナンが時計をアイリッシュへと投げつけた。



「なっ?!」



その時計は明かりが灯っていてーーー



真っ暗な闇にいきなり浮かんだ光に一瞬目が眩むアイリッシュ。




ヒュンッ――――と風を切り、パリンッとガラスが割れる音が聞こえたと同時にアイリッシュが持っていた銃が吹き飛んだ。




「くっ・・・なんだ!?狙撃、だと!!?」



「私達には鷹の目がついてるのよ?それこそ、狙われたら絶対に逃がさない、外さない絶対的な鷹の目がね」



フッと笑ってりゅうは体制を崩したアイリッシュを蹴り飛ばし、彼の横を走り去った。



その際、蘭を心配そうに一瞬見た後、怒りに燃えるアイリッシュをみて、標的はコッチを向いたと確信し「大丈夫」と言い聞かせて、近くに居たコナンを抱えて外へと向かった。




「わっ、りゅうさん!僕走れる!!」



「黙って!」



「は、はい・・・」




ダダッーーーと一気に走り、アイリッシュの視界から消えるりゅうとコナン。




「鷹の目だとっ!!?このタワーを、この高さを狙えるとしたら600ヤードは軽く超えてるあそこしかねぇっ・・・・!!!まさかっ!!?」



アイリッシュは思い当たる節があったのか、ニィッと口角を上げた。



「工藤新一だけじゃなく、まさか赤井秀一まであのお方に差し出せるとはな。くくくっ、これでジンも終わりだ」



ガキの姿の工藤新一の正体を見抜けなかっただけでは、奴を失脚させるには弱いとは思ってはいた。しかし、そこに奴の宿敵、赤井秀一が生きていたとなれば別だ。







「・・・昴、ごめん。バレタかも」



<かもしれませんね。ですがまぁ、いいです。あなたの正体がバレていて、あなた一人だけを危険に晒さなくて済む>



陰に隠れながら通信機の電源を入れ、沖矢と連絡を取り合うりゅう。



「・・・ごめん」



<・・・阿呆。気にするなと言っているだろう?>



作戦がダメになってもまた考えればいい、それよりもお前を独りにしないで済む。と言われてりゅうは目を見開いた。



「っ・・・・・」



<やはりな、お前の正体がバレたら、俺の元を、沖矢昴の元を去るつもりだったな?>



「だっ、て・・・・」



私がPhantomだとバレれば、私の傍に居る昴が危険になる。なによりも真っ先に考えた事、それはーーー



沖矢昴の前から姿を消す事だった。



<・・・お前が考えそうなことだな。ずっと不安にさせていたな>



耳から聞こえてくるのはいつの間にか変声機を切っていた赤井の声だった。



ブンブンとその場で首を振るりゅうだったが、赤井にその行動は見えてはいなかった。



しかし、風が少し早く切る音で想像はできた彼は小さく笑った。



「あり、がとっ・・・戻るから、絶対あなたの傍に帰るから」



待っていてーーーー



<あぁ、信じているさ。りゅう−−−>



それだけ交わした後、ピッともう一度電源を落とした。




涙が零れ落ちないように上を向き、大きく深呼吸するりゅうを、コナンは優しい顔で見ていた。






消えるつもりだった―――
(昴さん、なんだって?)
(信じてる、ってさ)
(そっか。・・・ねぇ、りゅうさん)
(んー?)
(・・・居なくなるつもり?)
(え?)
(俺の正体はまだアイリッシュで止まってるけど、りゅうさんの情報はどこまで伝わってるかは分からない。そしたら、俺たちの前から消えるつもりなのかな?って思って・・・)
(・・・秀一と一緒で本当に厄介ね、シャーロキアンっていうのは。顔にも態度にも出したつもりなかったのに・・・、私だけで決めるつもりだったのに、あっさりバレちゃうなんて)
(りゅうさんは、表情とか読めなくて分かりにくいけど、それでも、一人で背負い込もうとするから簡単に推理できちゃうんだよ)
(・・・独り、だったからね)
(今は、違うでしょ?)
(・・・・・)
(消えちゃ、だめだよ)
(え?)
(居なくなるな。俺と赤井さんがぜってー護るから。俺や蘭たちの前から居なくならないでくれ)
(・・・護る?私を・・・?)
(あぁ、ぜってー護ってみせる!だからっ・・・)
(・・・ははっ、カッコいーね、ボウヤ。惚れちゃいそうだよ、新一君)
(・・・・はっ!?ほ、惚れっ・・!?何の話!!?)
(あははははっ)
(りゅうさん!!!)
(ありがとね。小さな探偵さん(まさか護らなきゃと思ってた存在から逆にそんな言葉が聞けるなんてーーー))



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