消えるつもりだったーーー(1/2)
バキッ、ドゴッーーーと、時々嫌な音を立てながらりゅうとアイリッシュの攻防は続いていた。
ドォン!!と発射されるアイリッシュの銃、それを引き金が引き終わる前にその腕を蹴り上げ銃口を逸らす。
「すげっ・・・・」
その攻防を目の前で見ていたコナンはボソッと呟いたが、次の瞬間、予想外の出来事が起こったのだ。
「コナン君!!」
「蘭ねーちゃん!!!?」
こちらへ駆け寄ってきたのは蘭。まさかの出来事に目を見開くコナン。
「来るな―――!!」
「え?」
大きな声で叫ぶコナンにピタリと足を止める蘭。
「なんでっ・・・・」
彼女の声とボウヤの声に反応して驚いた様に後ろへと視線を向けた時、隙を見つけたと言わんばかりに、アイリッシュは一気にりゅうとの距離を詰めた。
ガシッーーーと腕を掴まれ、驚きながらも距離を空けようと後ろに飛ぼうとするが、アイリッシュがそれを許さずーーー
「しまっ・・・」
「油断大敵だな」
ゴスッと鳩尾に膝蹴りが入り「かはっ・・・」と少量の血を吐き出すりゅう。
そのまま顔を殴られ、後ろへと吹っ飛ばされる。
「っ・・・・」
「りゅうさんっ・・・」
後ろへと吹っ飛ばされる瞬間に見えたのはボウヤの姿。
マズい、このままだとボウヤも巻き込んでしまうーーーと、りゅうは咄嗟に手を着き軌道を変えた。
コナンを巻き込むことはなかったが、咄嗟に避けた為、その場所が悪かった。
ズサァ―――と倒れ込んだ先にポールがあり、そこへと頭を強打した。
「うっ・・・・」
トサッと倒れ込むりゅう。そしてコナンが慌てて駆け寄ろうとするが、それはアイリッシュによって塞がれてしまう。
喉を目がけて蹴りを喰らったコナンは柱へと身体を叩きつけられた。
「がっ・・・・」
「コナン君!!」
蘭の角度からは何が起こっているのか分からず、ただ吹き飛ばされて柱へと叩きつけられるコナンの姿のみが分かった。
蘭は慌ててコナンへと駆け寄った。
「だ、めだ・・・蘭」
喉に攻撃を受けた為、声が掠れて満足に音が出ない。
「君たち、大丈夫か!?」
その声と共に駆け寄ってきたのは松本管理官の姿で、蘭はホッとしながらも立ち上がった。
「大変なんです!下で刑事さんたちが・・・」
「あぁ、犯人に襲われてな」
蘭の言葉にすぐに返す松本だったが、蘭の足をガシッと掴むコナン。
「どうしたの?」
慌ててしゃがむ蘭だったが、コナンは声が出ず、蘭が「もう大丈夫よ」と安心させるために優しい声で言葉を紡いだ。
しかし、その瞬間、蘭と共に一緒に来ていた職員がドサッと倒れ込むのが分かった。
「!!」
そのことに驚く蘭だったが、カチャッーーと聞こえてきた音に目を鋭くさせた。
「あなた、松本警視じゃないわね?」
「ふん・・・・・」
コナンを庇う様に前に立ち、銃を構える松本と対峙する蘭。
「蘭、ねーちゃ・・だめだ・・・」
「大丈夫よ」
京極さんみたいに、ライフルは無理だけど、拳銃なら・・・・
蘭はそんな事を思いながら、新一に聞いた事があった言葉を思い出していた。
ーーーなぁ、蘭。知ってるか?ライフル銃の速さは大体秒速1000メートルくらい、それに比べて、拳銃は1/3の秒速350メートルくらいしかないんだぜ?ーーー
それを思い出して蘭はフッと笑った。
「何がおかしい?まさか弾が避けられるとでも思っているのか?」
「その通りよ」
「面白い、やってみろ」
その言葉と共に一気に空気が張り詰めたーーー
引き金の指が少し動いたのを見逃さなかった蘭は、宣言通り弾を避けた。
ドォンーーーー
「なっ!?」
「はぁっ!!」
驚く松本に、蘭はすぐに手刀を打ち込み、拳銃を手放させ、そのまま彼を後ろへと倒してしまった。
拳銃を避けた事や、大柄な男を簡単に倒してしまう蘭を見てコナンは「すげ・・・」と零すが、すぐに顔を顰めた。
「やるねぇ・・・、忘れていたよ、お嬢ちゃんが空手の達人だって事をなぁっ!!」
立ち上がると直ぐに蘭へと向かう松本。
今度は蘭と松本、いや、アイリッシュの攻防が続いた。
だが、やはり相手は大柄な男性、しかもプロときたら蘭には少し不利な様で、簡単に蹴り飛ばされてしまう。
「きゃっ・・・・」
フッ飛ばされた蘭へと追い打ちをかけようとするアイリッシュだったが、蘭もただやられているだけではない。足払いをし彼と距離を取った。
「フン・・・」
一度距離を空けたが、すぐに始まる攻防戦。
蘭も何発かはアイリッシュへとパンチや蹴りを入れるが、彼に取ったら浅く、軽いらしく、平然としていて・・・
しかし、蹴りがアイリッシュの顔を掠ると、彼の変装が半分取れてしまう。
その顔を見て目を見開く蘭。もちろん、その隙を彼は見逃さず、蘭へと数発重いパンチや蹴りを繰り出し、フッ飛ばしてしまう。
「はっ・・・ぁ・・・・」
立ち上がろうと必死になる蘭。
「蘭!立つな!あとは俺たちに任せろ!!」
意識が朦朧としている蘭の耳に届いたのは新一の声、そしてーーー
「はぁっ!!」
バキッーーーーとアイリッシュへと飛び蹴りを喰らわせ、蘭との距離を空けさせたのはーーー
「りゅう、さんっ・・・」
「蘭ちゃん、ごめんね。大丈夫?」
「は、い・・・」
「彼の言う通り、私たちに任せて蘭ちゃんは寝てて?」
そんなりゅうの言葉、優し気な笑みにフワッと笑い気を失った蘭。
「またお前か。頭を強打したのに加え、あばらも何本かいってるはずだ。随分頑張るじゃないか」
「・・・・・・」
「そんなに大切か?その小娘やあのガキが」
アイリッシュの言葉にピクッと反応するりゅう。
「くくっ、はははっ!!初めて反応したな?銀りゅう、いや・・・Phantom。思ったよりも随分と甘いようだ」
「・・・・・・・」
「貴様の弱点、見破ったり!!」
先ほど拾った拳銃をアイリッシュは構えた。
その銃口が向いている方向にはりゅうの後ろで気を失っている蘭。
「・・・動けない相手に随分卑怯なことするじゃない?」
「くくっ、挑発して気を逸らせようとしているのか?残念だったな。邪魔になりそうなものはどんな手を使っても消す。それが俺ら組織のやり方さ」
「えぇ、知ってるわ。昔から・・・嫌というほどね!!」
その言葉と共にニヤリと嫌な笑みを浮かべ蘭へと向けて発砲した。
バァン!!
「らぁぁぁん!!!」
やり取りを聞いていたコナンが慌てて陰から出て蘭の名を叫んだ。
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