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爆弾投下中(1/3)




あれから警察が来て、スノーシュートレッキングは急遽中止、ホテルのある部屋へと集められた。




そこにりゅうは居なかったが。




「後、一人。人数が、足りないと思うのですが」



帽子を被っている刑事が、ゆっくりとした口調で尋ねれば沖矢がすぐさま答えた。




「彼女は少々具合が優れないみたいなので、部屋に居ますよ」



もしなんでしたら連れてきますが、彼女は一番離れた位置に居たので話は私たち以上にないと思いますが。と言えば「そうですが、具合が優れないのでしたら無理にとは言いません。接点もないようですし、皆さんと一緒に居たのであれば、皆さんのお話だけで十分でしょう」と刑事は言った。




「あのおっちゃん、喋りおせぇーな」



「うん」



「眠っちゃいそうですよ、僕・・・」




元太と歩美、光彦は刑事の話し方の方が気になっていたようだった。










「只今戻りました」



沖矢が部屋へと戻ればりゅうは椅子に座って外を眺めながら転寝をしていて、その様子を見た瞬間、クスッと笑い、薄い毛布を掛けようとした。




「・・・・すばる・・?」



「起こしてしまいましたか?」



「ううん、大丈夫」



横に腰かけその足に毛布を掛ければりゅうは、トンッーーと、沖矢の胸に頭を置いた。



「疲れましたか?」



「いや、そんなことないよ。ただ・・・」



「ただ?」



「ちょっと平和すぎたから、いい事があったから、少し・・・少しだけ・・・」



幸せなんて思ってたのかもしれない。このままでいたいだなんて・・・そんな事許されないのに・・・。



「馬鹿ですね・・・」



「・・・・・」



ゆっくりとりゅうの頭を撫でながら沖矢は頬をりゅうの頭に乗せ、小さく口づけた。




「・・・お前が自分自身を責めるのも、許せないのも分かる。だが・・・それと、幸せだと感じる事に罪悪感を感じる事も、許される事じゃないとそう思う事は・・・全くの別物だ」




いいんだ、幸せだとそう感じてもいいんだ。お前は今を生きてるんだから・・・



沖矢の言葉にカタカタと身体を震わせ、彼の首へと腕を回して抱き着いた。




「っ・・・・・」




「お前が自分自身を許せないのなら俺がお前を許す。お前が自分を責め続けるのなら俺がお前をその分甘やかす。・・・ずっと、自分を責めて責めて責め続けて・・・疲れたら、少しくらいは自分を許してやれ・・・」




「昴っ・・・・」



「お前は、俺が愛した女なんだ。お前が自分を許せなくても・・・自分自身を許せるようになるまで・・・ずっと言い続けてやる」



もう・・・いいんだ。とーーーー




「あっ・・・りがとっ・・・秀一っ・・・」




ギュッと沖矢へと抱き着き‘彼’の名を呼べば、チュッと額へと口づけを落とされた。



そしてそのまま、涙が溜まっている瞳、流れた一筋の線が入った頬、そして口へと深い口づけを落とす。




「んっ・・・・・はぁっ・・・」




「・・・・このままゆっくり寝ろ」



チュッと小さくリップ音を鳴らし、口づけを放した沖矢は、意識が朦朧としている彼女へと小さく笑い言った。



「・・・・でも」



「朝方、日の出を見に行くことだしな」



「え?」



「泣き虫なお嬢さんからのお誘いだ。元気がなかったお前を心配していたよ」




「泣き虫なお嬢さん・・・?心配?あ、蘭ちゃん?・・・そっか」



蘭ちゃんはよく見てるね。と小さく呟けば「そうだな」と沖矢は笑った。



「だから、寝れるのなら今のうちに寝るとするか」



「・・・・あなたも?」



「そうだな。このままここで、ゆっくり二人で転寝するのも悪くない」



夕飯も部屋で食べると言ってあるし、明け方前にロビーに集合だから、ゆっくりできるしな、との事。




「・・・ふふっ、転寝って・・・今夕方よ?朝方まで時間がありすぎるわよ」



眠たげな表情のまま、小さく零すりゅうに、彼も笑った。



「そうか・・・ならベッドでゆっくりするか」



すぐに起きても横になるだけでも大分違うしな・・・と提案されてギュッと彼へと抱き着いた。



その様子にクスッと笑みを浮かべながらりゅうを抱き上げた。



「珍しいな」



彼女がこうやって沖矢へと甘える様に抱き着き、ベッドまで運んでくれと態度で示すのは数える程度で・・・



「・・・甘えさせてくれるんでしょう?」



怖いから・・・離さないで。と小さく呟けば沖矢はベッドへと移動しながらギュッと彼女を抱きしめている腕に力を込めた。



「ああ、絶対に、離したりしないさ」



例え、お前が離して欲しいと懇願しても、もう離すつもりはない、と言い切った彼の首元へスリッと頭を摺り寄せた。



二人でベッドへと潜り込めば彼は腕枕をし、その腕は彼女の頭を抱え込むように包んだ。




りゅうは沖矢の首へと片腕を伸ばし抱き着く形で小さく寝息を立て始めた。




「・・・お前はいつまで自分を責め続ける・・・?」



兄が生きていた。それで漸く彼女の笑みは悲し気な笑みから本来、あったであろう綺麗な笑みへと変わりつつあった。



それでも、組織が壊滅しない限り、彼女の真の笑顔は見れることはないとは思っていたが・・・



「・・・まさか、事件が起こるたびにこうも不安定になるとはな」



今までもそうだったのだろうか?



表に出す事も、弱音を吐くこともなかったが、事件に巻き込まれるたび、誰かの死に直面するたびに、過去の出来事を思い出し、自分を責める。



そこまで考えた後、米花百貨店で起こった出来事を思い出した。



あの時りゅうは、女の死の瞬間の顔を見るのが好きだと言った男に対して、なんの躊躇もなく、引き金を引いた。



後の反応を見れば、引き金を引いた銃が空砲だったことを知っていた、ということはないだろう。




「・・・・・・」



沖矢は、どこか難しい表情のまま寝息を立てる彼女の額に小さく口づければ、その難しい表情がなくなり、小さく笑ったように見えた。



「・・・感情が昂った時、もしくは同情の余地なしと自分の中にある一線を越えた者には・・・容赦なし、ということか?」



だとしたら・・・最初の頃に思った事、ゆうなと呼ばれた幼馴染達に会った時のあの事件を踏まえて、沖矢は「・・・やはり、家族や親友を殺した犯人を・・・」そこまで小さく呟いた後、ゆっくりと首を振って、思考を停止させた。



その腕にしっかりと彼女を抱きしめ、沖矢も浅い眠りへとついた。



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