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八年間(2/2)





「綺麗な朝焼けですよ、外に行きましょうか?」



あれから一時間もしないうちに、彼は完全に目が覚めた様で二人とも起き上がり服を着替えた。



そして窓から外を見ていた沖矢がりゅうへとそう聞けば「んー?そだね」と返事を返し、外へと出た。



「おはようございます」



「みずきさん、でしたよね?朝から大変ですね、お手伝いしましょうか?」



ホテルを出れば入り口で雪かきをしているみずきが挨拶をしてきたのでりゅうは、小さく頭を下げた。



沖矢も挨拶を返した後、手伝いを申し出れば「私は仕事ですから、それに毎朝の事ですので慣れてます」と笑顔で答えた。



りゅうはそれを横目で見ながら手すりに積もった雪で雪兎を作った。




「雪兎・・・ですか。上手いもんですね」



二匹が寄り添っている形の雪兎をみて沖矢は小さく、それを撫でた。



「こんなの簡単よ?」



「さしずめこの二匹はりゅうと私ですか?」



「あはは、それだったら昴の分は狐かな」



「・・・あなたは毎回人の事を狐に例えますね」



ジョディ達が工藤邸へと来た時も狐のイラストを描いていたのを思い出した。



「その目が狐を連想させるんだもん」



「・・・・・・」



その言葉に、フムッ、と考え込む沖矢。



「・・・・だったらこれならいいか?」



耳元で聞こえた言葉に首を傾げながら沖矢へと目を向ければそこには翡翠の瞳を開けている沖矢の姿。



「っ・・・・」



その瞳と視線が絡めば一気に顔を朱に染めた。



その事に満足したのか、喉を鳴らす彼の腕をバシバシと叩いておいた。




少しすると子供達もホテルから出てきた。




「わー!雪だ!」



「雪合戦しようぜ!!」



雪を見てハシャぐ子供達と、その後ろをゆっくりと歩いて付いてくるコナンと灰原の姿。



りゅうさん、昴さん、おはよう!と元気な声が聞こえてきて小さく笑いながら「おはよう」と返せば子供達は雪合戦を始めた。



最初は断ったにも関わらず、雪を当てられ少しムキになったコナンと灰原も雪合戦へと参加していた。




「・・・・・子供は元気だねー」




「元気が一番ですよ」



例えどんな悪戯をしようと、大人を困らせようと・・・ね。と沖矢が言えばりゅうはクスッと笑った。




「あれ?」



雪合戦をしている子供たちがホテルと道路を挟んである家の庭に入り込んでしまったようで、そこの家の子供と話しているのが見えた。



でもなんだかその様子がおかしくて沖矢と共に首を傾げた。



すると「あ・・・」と声が聞こえ後ろを見れば、雪かきをしていたみずきの様子がおかしい事に気が付いた。



そしてそのまま、みずきは道具を放り投げたまま、そちらへと走って行った。



りゅう達も顔を見合わせた後、ゆっくりとそちらへと向かえば、小五郎と博士、それに昨日居た同級生たちがいつの間にか集まっていた。





「冬美の息子の冬馬は八年前のある朝、元の村からほど近い崖下へ転落、気を失っている所を当時冬馬が可愛がっていた犬が見つけてくれたんです」




武藤が話し始めた言葉を聞いていればなんでも、八年間その意識が戻る事はなかったが、今日、目覚めたということらしい。



その日は丁度山尾がひき逃げを起こした日と同じで、平和な静かな村で一日に同時に大きな事件があったと騒ぎになったそう。



その時母親の冬美は診療所の夜勤中、彼女は未婚の母で父親はおらず、祖父と祖母も冬美が小さい時に雪崩に巻き込まれて亡くなっているらしい。



「発見されたのが、雪崩に合って30分後で、もう15分早ければ助かったかもしれないって・・・」



武藤の言葉に光彦が首を傾げた。



「15分?」



「雪崩に巻き込まれた場合、タイムリミットは約15分。それ以上は助からないと言われてるの」



子供たちの後ろに立っていたりゅうが言えば、隣に立っていた沖矢が言葉を続けた。




「その15分が生死を分けると言われてるんですよ」




「15分じゃ・・・短いね」



歩美が悲しげに呟いた言葉に光彦も元太も小さく頷いた。



そんな話をしていれば、家から医者と冬美が出てきた。



言葉を数回交わすと医者は車で帰って行って、冬美は小さく頭を下げた。




「冬美!」



「みずき!武藤君も・・・皆も来てくれたんだ」




「どうだった?」



「うん、冬馬の身体に異常はないって。ただ・・・心がね。崖から落ちた日の記憶が無いのよ。だから、何で自分が八年間眠り続けていたのか、理解できないみたいなの」




冬美の言葉に悲しげな表情をする皆。だが、みずきは涙を零し、「でも、良かった」と小さく呟いた。




その際に、眼鏡を外した顔を小五郎が見て、鼻の下を伸ばし、眼鏡よりコンタクトにしたらどうか?と提案していた。



「メガネはこう・・・冷たい感じがして好かんのですよ」




「・・・奥さんの事かな?」



「かもしれませんね」



そんな小五郎を見ながらりゅうも沖矢も小さく笑った。




「ねぇ、昴さん」



「はい?」




コナンに名を呼ばれた昴は視線を合わせる様に屈んだ。




「昴さんも・・・気にならない?」




「あぁ、冬馬君の事故と山尾さんの事件の日が一緒だと言う事ですか?」




「うん」




「まあ、少し引っ掛かりますが・・・・」




「偶然、にしてはちょっとねぇ」




「だよね・・・・」



沖矢とりゅうの言葉に深く考え込むコナンだったが、すぐに新たな声が聞こえてきてそちらを向けば、男女の中学生くらいの子たちがそこには数人いた。




なんでも冬馬の同級生で目を覚ましたと聞いて会いに来たんだとか・・・




「彼、大丈夫かしら?」



「え?」



「会わせるの、早すぎるんじゃない?」



「・・・だな」



コナンと灰原のやり取りを聞きながら家へと入っていくその子たちを見ていた。







八年間
(りゅう?)
(・・・え?あっ、何?)
(どうかしましたか?)
(何か引っ掛かる事でもあるの!?)
(あー・・いや、そうじゃないんだけど・・・)
(??)
(・・・ごめん、毛利さんのみずきさんを口説いてる声がどうしても耳に入ってきて・・・;)
(・・・ははっ;おっちゃん直球だから・・・)
(もうっ!!お父さん!!)
(そして蘭ちゃんの声と不機嫌そうな態度がどうしても目に入る)
(まあ、みずきさんが美人だという事はわからなくもないですがね)
(・・・・へぇー、昴もタイプなんだ?)
(タイプと美人はまた別では?)
(・・・・私、先部屋に戻ってる)
(え!?りゅうさん!?)
(くくっ・・・)
(・・・・あなた、相当いい性格してるわね)
(え?)
(江戸川君にはまだ早かったかしら?彼、りゅうさんが妬く言葉をわざわざ選んで言って、彼女の様子を見て楽しんでるのよ)
(おや?楽しんでるなんてとんでもない。ただ・・・)
(ただ?)
(見ていて可愛くないですか?)
(・・・・・・ははっ;(この人も相当捻くれてるよな・・・))



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