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目に見える変化(2/2)






ホテルへと着けば、子供たちはもうすでに中にいるようで、りゅうと沖矢もスノーモービルを元の場所に止め、ホテルへと入って行った。




「寒いっ!」



「すっかり湯冷めしてしまいましたね」



温かい飲み物でも飲みます?と沖矢が自販機を指して言えば「じゃあ、お茶」と答えるりゅうに「了解」と一言残し買いに行く沖矢。




「りゅうさん!!」



歩美ちゃんの声が聞こえてそちらを向けば、暖炉の前で五人ほど座ってる人たちの近くに皆の姿があった。



「・・・・あ、どうもありがとうございました」



先ほど車で会った男性が居て頭を下げれば「どういたしまして」と返ってきた。



「りゅうさん、ご迷惑かけてっ・・・」



蘭が頭を下げようとしていたので「大丈夫」とすぐにそれを制した。



「たまたま昴と居たからよかったよ」



「りゅうさん、あのっ・・・」



足元で気まずそうな光彦に首を傾げれば元太も歩美も横に並び「ごめんなさい」と頭を下げてきた。



「ん。次は気を付けてね」



いつも異変に気付ける場所に居るとは限らないよ?と言えば「はい」と返ってきた。



そうとう反省したようで、りゅうは小さく笑い、三人の頭を撫でた。



「あのっ・・・」



「ん?」



「手が・・その、冷たかったですが・・・」



僕たちのせいですよね、と光彦が顔を俯かせた。



あぁ、口を塞いだ時に使った手が冷たくて、ずっと気にしてたのか、と苦笑いした。



「元々冷たいから大丈夫、それに今昴が温かい飲み物買ってきてくれるから」



そういうと光彦は少しだけ元気を取り戻した様で小さく笑った。



すぐに沖矢も合流すればお茶をりゅうへと手渡しながら子供達と話を交わす。



謝罪とお礼のようで、沖矢は「いえいえ、どういたしまして」と笑顔で返し、子供たちはホッとしたように笑顔になった。



どうやら迷惑、心配を掛けた全員に謝罪、お礼を言い終わって漸く安堵したようだった。





そして会話が元に戻ったらしく、りゅうと沖矢はよく分からずになんとなくそちらを見ていた。



するとその五人は、どうやら幼馴染、この北ノ沢村の同級生の様で、会うのは八年ぶりだと言う。


その五人の中の二人は昼間役所であった二人だった。



山尾渓介、氷川尚吾という名らしい。

そして同級生の女性の遠野みずき、立原冬美、運よく車で拾ってくれたのが武藤岳彦と、自己紹介された。


「八年ですか!!?まさに感動の再会ですね!」



歩美と元太が顔を明るくさせてそちらを見れば光彦が声を上げた。



「でもさー、なんで八年間会わなかったの?」



コナンの言葉に氷川と呼ばれた男がある紙を取り出した。



「それは・・・これだよ」


そして見せられた紙には、そこに座っている山尾の記事で、ひき逃げ事故の見出しがあった。



「ちょっとっ、やめなよ、氷川君!」



同級生である冬美が声を上げれば、その隣に居たみずきと言う女性は顔を俯かせた。



ひき逃げ事故を起こした山尾は思いなおし、自首はしたものの、色々な余罪が付き、八年間務所に入っていたという。


そして轢いた女性が、みずきの妹であったという。



「・・・・・・・」



記事を見せた氷川をジッと見ていれば隣に居た沖矢が首を傾げ名を呼んだ。



「りゅう?」



「え?あ、なんでもない」




そして山尾が八年間、務所に居る間にダム建設が始まり、村はダムの下に沈んだという。



「・・・山尾君、私今でもあなたの事許してないよっ・・・」



みずきが山尾へと言えば彼は顔を俯かせていた。



「許せないのは俺も同じさ。氷川!お前はダム建設の話が出た時、真っ先に賛成し、代替地を高く売ってさっさと、東京へと行ったお前ら一家が許せねぇっ!」



「おいおい、武藤・・・」



「そんな知恵を俺の両親につけたのはお前だろう!?お前は俺たちの大事な故郷を売ったんだ!分かってるのか!?」



「世の中利口に立ち回らなきゃ駄目さ!」



先ほどの元太たちの言い合いの様にドンドンヒートアップしていく喧嘩に顔を俯かせていく子供達。


蘭や園子も困ったような表情をしていてーーー



パァン!!と両手を叩けば妙に響いた音に、言い合いがピタリと止まった。




「部屋に戻ろうか」



皆が手を叩いたりゅうへと視線を向ければ彼女は小さく言葉を発した。



「そうじゃな、これ以上は皆さんの邪魔をしては・・・」



「・・・そうだね、皆、部屋に戻ろう?」



博士と蘭がそう言えば、子供たちは小さく頷いた。



「じゃあ、お邪魔しました」


ペコッと頭を下げる蘭に皆がその場を後にした。



暗い表情をする子供達の頭をポンッと撫でれば顔を上げる三人。



「人の振り見て我が振り直せ」



「え?」



「なんだそれ?」



「確か・・・人の行いを見て・・・」



首を傾げる歩美と元太に、光彦が必死に思い出しながら言葉を発した。



「いい行いは見習い、悪い所は改めなさいよって言うことわざ。あの人たちの喧嘩を見て、悲しくなってきたんでしょう?それは君たちが喧嘩して歩美ちゃんが感じた感情と一緒・・・」




「「あっ・・・・」」



りゅうの言葉に元太と光彦が思い出したように歩美を見て「ごめんなさい」「ごめんな・・・」と謝罪していて、歩美はそれを見て笑顔になった。



「ううん!だって二人はすぐに仲直りしたし、お互いにゴメンナサイも言えたもの!」



と笑えば元太も光彦も笑顔になり、さっきまでの沈んでいた表情もなくなり、部屋でトランプしましょう!と走って行った。




「・・・・・」



そんな子供たちの後姿を見てフッと笑うりゅう。






その様子を見ていた蘭や園子は目をパチパチさせていて・・・



「子供は単純でいいな」



小五郎はそんな事を呟きながら「俺は今日は寝る」と部屋へと去って行った。



「ね、ね、蘭」



「何?園子」



コソッと蘭の耳元に顔を近づける園子、蘭も聞き耳を立てた。




「りゅうさんって、なんか雰囲気変わった?」




「あ、私も思った。前も最初の頃に比べると柔らかくなったなって思ったけど、最近はそれ以上に・・・あ!ほら!記憶喪失になってたあの後位からもっと柔らかくなって・・・」




「あー!確かに!あの後、記憶が戻った辺りから、近寄るなオーラとか、話しかけるなオーラとかもなくなって・・・」




「そういえば仲が悪そうだった佐藤刑事ともよく話してたっけ・・・」



「入院してる時、毎日病院に行ってたみたいだしね!」



そんな話を二人がしていればコナンと沖矢は顔を見合わせてフッと笑った。



「でも、本当。りゅうさん変わってきたよね、いい方向に・・・」



「えぇ、このまま彼女が穏やかに過ごせることが出来ればいいんですけどね」



まぁ、それは組織、ジンが居る限り無理な話なのだろうが、それでもこういう穏やかな時を過ごしていくうちに、彼女自身の傷が少しでも癒えたなら・・・



沖矢は小さく笑うりゅうの横顔を見ながらそんな事を思った。



「ねぇ、昴さん。りゅうさんが組織を追ってる根底的な理由って・・・復讐心?」




「・・・・・・・」




コナンが難しい表情をし、聞きづらそうに聞いてきたのに対し、沖矢はコナンをジッと見た。



「僕、今まで疑問には思ってたんだけど・・・りゅうさんが組織を追っている理由がどうしても分からないんだ・・・」



ねぇ、昴さん。とコナンはもう一度沖矢を見たが、沖矢はゆっくりと首を振った。



「これは・・・私が言っていい事ではない気がしますので・・・」




「・・・・だよね」



ごめんなさい、とコナンが謝れば、沖矢は「いえ・・・」と苦笑いを零した。





「・・・・クシュンッ」



「大丈夫ですか?」



小さく肩を揺らし、くしゃみをしたりゅうに、蘭が声を掛ければ「うん、大丈夫」と返ってきた。



そんなりゅうに沖矢は上着を脱ぎながら近づき、ソッと彼女の背に掛け肩を抱いた。



「部屋に戻ってもう一度ゆっくり、お風呂に入った方がいい」




「昴・・・」




「え?もう一度?もしかしてりゅうさん、お風呂入ってからこの寒空の下、子供たちを迎えに行ったんですか?」



園子が首を傾げれば蘭が「迎えに行ったんじゃなくてたまたまお風呂に入ってる時に異変に気が付いたんだと思うよ」と言った。



「え?」



「らっ・・蘭ちゃん!!」



「・・・あっ!!」



首を傾げた園子にりゅうが蘭の名を呼べば、少し考えた末に、蘭は「しまった」と言わんばかりに口を抑えた。





目に見える変化
(・・・・!!はっは〜ん?)
(園子っ・・・?)
(子供たちの異変に気が付くことが出来る、って事は外。外でお風呂、露天風呂。そして子供たちが居た場所を考えると・・・・)
(ははっ・・・;(昼間おっちゃんが行ったっていう混浴の露天風呂ね))
(何もないから!!その顔やめてくれないかな!?)
(っ・・・)
(蘭ちゃんも顔を赤くしないでよ!!何もないって言ってんでしょ!!?)
(それだけ真っ赤になってたら説得力の欠片もありませんよ?まあ、園子さんが想像することは何もありませんよ。私も外でいつ、誰が来るかも分からないのに彼女のそんな姿、誰にも見せたくありませんから・・・)
((きゃーーーー!!))
沖矢の言葉に蘭は顔を真っ赤にして叫び、園子は頬を赤らめたものの、顔はニヤついていた。
(あんたは黙ってろ!!)



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