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幼馴染の護り方(2/2)



船での事件も、強制的にとはいえりゅうの事も一件落着し、犯人とこの船の主催者が一緒だったという理由から目的地を急遽変更し戻る事となった。

船が出発地点へと再度戻ってきた頃には12時間以上過ぎていたがりゅうが目を覚ます事はなかった。


「りゅうさん、目覚まさないね」


「・・・俺のせいじゃねぇからな?」


「別に雨宮さんのせいだって言ってないじゃない」


「言葉にしてなくてもその目が言ってんだよ」


りゅうが寝ている部屋で雨宮とコナンが声を抑える事もなく話しているのだが、まったくと言っていいほど起きる様子はなかった。


「別に本当にそんなこと思ってないよ。多分、ずっと気を張って疲労が溜まってたんだろうね」


蘭がせめてもの気分転換になれば、と思って誘ったが彼女にとってこの船に乗ったことはただトラウマを、昔の出来事を無理やり思い出させられただけだったのかもしれない。


「・・・・・・」


「あっ!今の僕が言った言葉、絶対蘭ねーちゃんには言わないでね!」


急に焦ったように雨宮へと言葉を発するコナンに彼は「あ?」と小さく首を傾げた。


「折角、気分転換にでもなればって誘ったのが蘭ねーちゃんだから、さ・・・」


「なるほどね。気分転換どころか、こいつの傷を抉っただけになっちまった、なんて分かれば相当堪えるだろーからな」


「絶対にっ・・・」


「言わねーよ。毛利ちゃんの為っつーよりも、俺はりゅうの為にぜってー言わねぇから安心しろ」


ただでさえ、見せたくないであろう自分の殺意を散々毛利ちゃん達に見せちまったんだ。後悔と自責の念に駆られ、後々自己嫌悪に陥るのが目に見えてるしなー・・・なんて雨宮が煙草を口に咥えながら軽く言う。


「・・・雨宮さんって、りゅうさんの事本当によく知ってるんだね」


「そりゃあ幼馴染だからな」


「本当に、本当にただそれだけ?」


「あん?」


「だっておかしいじゃない。雨宮さんの知るりゅうさんって11年前のりゅうさんのはずでしょう?」


なのになんで、今のりゅうさんの事をそんなに詳しく知ってるの?


コナンが鋭い目つきをして雨宮を射抜けば彼は一瞬キョトンとした後、口角を上げた。


「俺のことが知りたきゃ、まずお前の正体でも明かすか?ガキ・・・いや違うか?」


「っ・・・・・」


雨宮の言葉にコナンは目を大きく見開き言葉を失った。今まで感じなかった寒気、嫌な予感、冷や汗が一気に噴き出した。


「まさ、かっ・・・お前、黒のっ・・・・?」


コナンの尋常でない様子に雨宮は苦笑いを零した。


「冗談だ」


「・・・は?」


「お前が言う、その黒の、が何かは知らねぇがこいつが復讐心で何かでっかい組織を追っている事くらいなら知ってる。お前の様子を見る限り、その黒の・・・がこいつが追ってる組織っつーことだろ?」


「ち、ちがっ・・・」


コナンは自分の失態に気が付き慌てて首を振る。


「しかもガキにも関わらずお前もりゅうと同じ組織を追ってる口か?」


「え!?いや、あのっ・・・・」


「・・・安心しろ。俺はこれ以上踏み込まねーよ」


「・・・え?」


焦るコナンに雨宮はふっと笑った。そして彼の言葉にコナンは意味が分からない、という表情を浮かべる。


「俺が関わっていい方向に転ぶ、とは思わねーからな。こいつが俺に助け、協力を求めてくるのならどんな危険なことだろーと手を貸すさ。けど、こいつはそれを望んじゃいねーだろうからな」


「・・・りゅうさんの、心を護る為?」


「これ以上、こいつに失わせるわけにはいかねーだろ?」


りゅうの知る、親しい人が誰一人としていなくならないように。そう言った大輔の表情は、優しい顔をしていて、りゅうを見つめていた。それからすぐ、下船準備が整ったと声が掛かり、雨宮はりゅうを抱えて部屋を出て行った。


「・・・結局、俺が聞きたかったこと答えてねーよな、あの人」


コナンは一人部屋に残されて、半目で苦笑いを零した。


今のりゅうさんを知りすぎてる気がする。だが、だからと言ってあの人が黒の組織の奴らの仲間だとは考えにくい。暫く考えたがそれが纏まることはなく「あーー!!」と頭を掻いた。


「ダメだ。あの人も赤井さんと一緒で全然読めねー・・・・」


いや、もしかすると赤井さん以上に読めないかもしれない。けれど、あの人がりゅうさんを見るあの目は、絶対に敵ではないと言い切れる。りゅうさんの為に、自分自身を抑えて、あえて首を突っ込まないようにしているんだ。本当だったら命に危険があると分かっていても知りたくて、手を貸したいはずなのに・・・


「・・・これが、雨宮さんなりの、りゅうさんの護り方」


降谷さんが、りゅうさんに忘れられていてもずっと陰から護り続けた護り方と同じように、赤井さんとはまた違う護り方がーーー





「久しぶりっすね」


「えぇ、お久しぶりです」


船から降りて、蘭たちと少し話してから気を失っているりゅうを連れて別れた後、そんなに離れていないが、待っているであろう場所へとたどり着けば、赤い車に寄り掛かり立っている人物へと近づいた。


「あー・・・・理由を話すと長くなる、んですが」


気まずそうに視線を泳がす雨宮。


「話はりゅうと、コナン君から聞いています」


りゅうがお世話になったようでありがとうございます。と沖矢はりゅうを車の後部座席に寝かせた後雨宮へと頭を下げた。


「それは、そのー・・・全部?」


「えぇ、雨宮さんが強制的にりゅうを黙らされたと・・・」


「なんっつー説明してんの!?あのガキっ・・・」


「おや?違うんですか?」


「ち、違わないです・・・」


始終ニコニコしている沖矢に、余計怖いんですが・・・と顔を背ける雨宮に沖矢はまじめな表情をした。


「別に怒ってませんよ。それどころか感謝しています。りゅう自身、止める事が出来なかった感情を一番最善な方法で止めて頂いて」


「沖矢サンが居てくれたらこんな厄介な事にはならなかったと思うんですがね」


会った時から、少し情緒不安定そうだったりゅう。そんな状態の彼女をなんで独りにしたのか、と雨宮が問えば沖矢は困ったように笑った。


「私も独りにさせたくないと言ったんですが・・・頑固なんですよね、彼女」


そう言いながら後部座席で眠るりゅうを見る沖矢。


「・・・頑固、か。それは今も昔も変わんねーわ」


いつの間にか煙草に火を点けていた雨宮がカラカラ笑いながら答えれば沖矢は複雑そうな表情をした。


「幼馴染っていうのは本当に厄介ですね」


頭では分かっていても、正直妬けますね。と言う沖矢に雨宮は「本当に妬いてるのかも疑わしいけどな」と困ったように笑った。


「妬けますよ。なぜ、今回の時のように彼女が不安定な時にあなたが近くにいて、私が居ないのか。私がいれば、痣も、殴りつけたときの拳の傷も付けさせずに済んだんですから・・・」


ニコッと笑顔で言った沖矢に口元を引きつらせるしかなかったーーー



幼馴染の護り方
(お、怒ってないといいつつ、しっかり怒ってんじゃねぇかっ・・・)
(さぁ?何のことですか?)
(・・・・;まぁ、いいや。俺も帰るわ、そいつが目覚ましたらよろしく言っといてくれや)
(あぁ、すぐ連絡させますね)
(いや、それはマジで勘弁だわ;(ぜってー怒鳴られる))
(くくっ・・・)
(俺で遊ばないでもらえませんかね?沖矢サン)
(遊ぶなんてとんでもない。ちょっと八つ当たりしてるだけです)
(余計質悪ぃっ・・・あ、そうだ忘れてた。ガキから聞いたか?警察が・・・)
(・・・えぇ、聞きましたよ)
(鮫崎さんからの伝言だ。)
ーー元とは言え、刑事である俺がいう言葉じゃねぇのは分かっちゃいるが、伝えておいてくれねぇか?もし、もしも本当に五反田を殺したんだったらーーー
(・・・・・)
(逃げ切って欲しい。時効の15年まで後4年。絶対に捕まらないようにーーってよ)
(・・・元刑事さんが、逃げ切ってほしい。ですか・・・)
(伝えるか伝えないかは沖矢サンに任すわ)


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