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妹を愛してくれてありがとう(1/2)







「明美が死んだのは、あなたのせいじゃないわ」




りゅうは赤井へと小さく呟けば彼は顔を俯かせたままピクッと反応を返した。





なーんで・・・こうなったかなぁ;りゅうは内心ため息を吐きながら今の状況を思い起こしていた。












バスジャックの時、志保と久しぶりの再会を果たし喜び合ったのもつかの間。



明美の元恋人である諸星大・・・基、FBIの赤井秀一が態々私に接触してきたのだ。




なんでも明美と顔が似ているのを見て心底驚いたそうだ。



そう言われればバスジャックの時に隣に座る際、随分と驚いていたのを思い出した。



最初は他人の空似だと思ったが、志保と話している姿を見て気になったらしく、接触を試みたそうだ。



事情聴取が終わるのを見計らって待ち伏せをしてまで・・・だ。




始めは関わりたくなくて、無視しようとしたのだが、彼があまりにも傷ついたような、罪悪感に満ちたような表情をしていたので放っておけなかったのだ。




そして私の家で話すことになり家についた瞬間、すぐさま彼に切り出されたのだ。




「俺を知っているか?」



と・・・・もちろんその問いにはYESと答えた。





「諸星大、組織ではライと呼ばれていて組織潜入の際、私の妹、宮野明美に近づき恋人となって妹を利用したFBI・・・でしょう?」




嫌味を込めてそう言ってやれば彼は困ったような表情をした後、静かに「あぁ」と答えた。



言い訳をする気はないようだ。



妹を利用したことをーーー




「・・・・・あなたがFBIだとばれた時、一番危険なのは明美だと・・・分からなかったわけではないでしょう?」




「・・・あぁ」




「ならなんでっ・・・明美なのよ!!あの子は組織の中では一般人に近いっ・・・」




「だから・・・だ」



「は!?」



「組織の中でも・・・普通の女だったから、近づきやすいと思ったから利用した」




淡々と言う赤井の胸倉を掴み、思い切り壁へと叩き付けた。




ダンッーーーー



「・・・・・」




彼は一切手を出す気はないようで、ただ黙っていた。





「騙すならっ・・・最後まで騙しぬきなさいよっ!!バレる嘘ならっ・・・最初から吐くな!!!」





「・・・・・そうだな」



そう言って彼は目を瞑った。



恐らく何をされようが、ましてや殺そうとしようが彼は手を出さないだろう・・・



そんな様子を見てりゅうは掴んでいた胸倉を離し、赤井から離れた。




「・・・・一つ、聞いていい?」




「なんだ?」




「明美の事・・・本当にただ・・・利用してただけ・・・?」



少しも・・・好きでもなかった?そう問うりゅうに、赤井は明美の姿を思い出した。




FBIだと打ち明けたとき、知っていた彼女になぜ知っていながら俺から離れなかったのかと問う俺に・・彼女は涙を流しながら今目の前にいる彼女と同じ事を言った。





あの時は答えてやることなど出来なかったーーー




今はそれさえ後悔していた・・・・




「愛してた・・・・いつの間にか、本気で明美を愛していた」





そう言って赤井は寂しげに笑った。





「・・・・そう。だったら・・・もういいや」





「?」




「あの子が好きだった・・・明美が愛していたあなたを・・・同じように明美を愛してくれたあなたに・・・私がこれ以上何かを言う権利なんてないもの・・・・」





「・・・・憎くないのか?」




「なんで?」




「妹が死んだ原因が目の前にいるんだ」




「確かにあなたは明美を利用した、それは紛れもない事実よ」




「・・・・・・・」




りゅうの言葉に顔を俯かせる赤井。



「だけど・・・明美が死んだのはあなたのせいじゃない」




「っ・・・・・」




「明美が死んだのは・・・私のせい。あの時、私が明美を護りきれなかったか。ら・・・・」




目の前でジンに撃たれる明美の姿を・・・私はただ見ていることしかできなかった・・・




「だから・・・あなたのせいじゃない」




赤井は恐らくずっと自分を責めてきたのだろう。明美が死んだ原因は自分にあると・・・



ずっと許せずに、今も尚己を責め続けて・・・





「もう・・いいよ。あなたが自分を許せないのなら・・・私があなたを許すわ。あの子の・・・妹の代わりにね」



あの子だってきっと・・・あなたを責めていないもの・・・・



とても、やさしい子だったからーーー





「・・・なぜ、お前は俺をそんな簡単に許せる?」



黙って聞いていた赤井がゆっくりと言葉を紡げば、りゅうは優しく微笑んだ。




「明美が愛した男だから・・・じゃ駄目かしら?」




ーーー大君、あなたのことが好きなのーーー




その笑みが、その言葉が、今はいない彼女を思い出させてーーー



赤井は静かに自分の手で目を覆った。



暫くして赤井は部屋を出て行こうとした。



そして玄関で立ち止まり、りゅうに背を向けたまま、彼女に尋ねた。





「・・・・お前の名を聞いてもいいか?」




「・・・・りゅうよ」




「りゅう・・・・」



「・・・赤井、秀一だったわね?」




「あぁ」




「ありがとう。妹を愛してくれて・・・あの子にまたあんな風に笑うきっかけを与えてくれて・・・・」




本当にありがとう、そう言って微笑むりゅうを赤井は堪らず抱きしめた。



「赤井!!?」



「すまない・・・少し・・・少しだけこのままで・・・」



居させてくれないか?





そう言った彼がなんだか儚げで、消えてしまいそうでーーー




りゅうは小さく息を吐いて、ポンポンと彼の背を叩いた。







・・・・・・・・・・・・・・・
(・・・・・明美の代わりをするのはいまだけだからね)






紲記様!リクエスト企画にご参加していただきありがとうございました!!
もしも哀ちゃんと明美ちゃんの姉が居たら・・・のリクエストだったのですが・・・今回の小説・・・結構難しくて、姉だったら・・やもしもシリーズを書いたことがなく、このような出来になってしまいました><

哀ちゃん出せなかったし・・・;
このような仕上がりになってしまいましたが楽しんでいただけたら嬉しく思います!
IFシリーズ!初挑戦の場を頂きましたことを有難く思います!

本当にありがとうございました!




         おまけ→



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