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都合のいい考え(1/2)







「・・・・・・・・りゅう」




赤井・・・基、沖矢昴は繋がらない番号へと何度も掛けるが、やはり聞こえてくるのは機械音のみ。




来葉峠で死んだと見せかけ別人に成りすまし、水無怜奈を組織へと潜り込ませる為の今回の作戦。




ボウヤと二人でじっくり練った計画は驚かされるものが多かった。



りゅうやジョディがご執心の理由がよくわかる。



まさかあそこまで読んでいたとは・・・水無怜奈を組織に戻せば彼女は疑われる身。



それを潔白するために赤井秀一を殺せと命令されるはず。



そこで赤井さん死のうよ、とあっけらかんと言うボウヤに少々度肝を抜かれた。



死んだ事にして、別人に成りすませた方が後々やりやすいでしょ?なんて、不適に笑うボウヤにフッと笑ってしまった。



そして恐らくジンのことだ、赤井さんを殺すとなれば監視で着くはず。


そこで彼なら絶対に頭を狙うと読み、博士に頼んで発明してもらったのが、血糊が吹き出るニット帽。




次から次へと出てくるボウヤの言葉と作戦、道具に呆気に取られながらもその作戦は見事に成功。



話の中でボウヤが知ってる人は少ないに限るけど、猫さんには協力してもらった方がいいとの提案に大丈夫だとかえした。



彼女なら恐らく盗聴器で聞いていると思ったからだ。





次の日になって電話を掛けるが一向に繋がらない携帯に、病院の近くにあるホテルの彼女の部屋を訪ねれば、ベットでスゥスゥと小さく寝息を立てて寝ている彼女。



居る事に安心し、フッと笑い暫くりゅうの寝顔を見ていたが呼び出しがかかり、部屋を後にした。



メモ書きを残して。




彼女が盗聴器を聞いていないかもしれないと不安になったが、彼女が起きてからでもいいか、と車で仮眠を取った。



ジェイムズと電話に起こされて慌てて電話に出れば水無怜奈からで。



内心舌打ちをした。



こんなにも早く行動に出るとは・・・



りゅうへと電話を掛けるがまだ繋がらない電話。



その事に少々焦るが、もう時間もなく、仕方なく彼女に電話も話もできないまま来葉峠へと向かった。




ジェイムズに、りゅうが尋ねてきたら新しい電話番号を教えてほしいと頼んでおいて。




あれから暫くするが彼女から電話が掛かってくる事はない。



それどころか、彼女の携帯自体繋がらなくなった。




彼女に会いに行こうかと思案していれば、住み始めたアパートが火事になり、ボウヤとこの沖矢昴で面識を果たした。



そしてシェリー、明美の妹を護るために博士の家に転がり込もうとすれば小さな少女に全力で断られた。




そこで提案を出してくれたのはボウヤで、新一お兄ちゃんの家に住むことになった。




ここまでりゅうから何の連絡もないということは恐らく・・・・




「あいつ・・・盗聴器で聞いてなかったな」



チッと舌打ちした。




とりあえず、すぐにでも探しに行こう。



まずはあいつの家、その後に少々危険だが、自分が住んでいた家・・・そんな事を考えながら玄関を開ければーーー




「昴さん!」



ボウヤの姿があった。



「コナン君、どうかしたのかい?」



後ろに居る蘭の姿を見て先日はどうも、と頭を下げれば蘭も頭を下げた。



先日、飛行機野郎の紙飛行機で、園子と蘭と顔見知りになったばかりだった。



「この間、何も知らずに蹴ってしまったお詫びに・・・今日夕飯ご一緒にどうですか?」



蘭の提案に、沖矢はりゅうの事を考えて断ろうとすれば門の前に見慣れた姿が目に入った。



「あの方は?」



「あ・・・さっき見かけて誘ったんです。りゅうさんって言うんですけど・・・」




「でも蘭ねーちゃん、あれはちょっと強引過ぎるよ・・・・;」



下でコナンが呆れた様に言えば蘭はだってっ・・と顔を赤らめた。




「どうかしたんですか?」



早くりゅうに会いたいという衝動を必死に抑えて平然を装った。




「蘭ねーちゃん、この間も誘ったんだけど断られちゃって・・・今日も誘ったとき初めは断られたんだけど・・・」




「なんか・・・フラフラしてて危なっかしくて・・・顔色も悪いし、ちゃんと食べてますか?って、聞いたら・・・」



「ぜんぜん食べてないみたいでね・・・家で夕飯食べるか、このまま病院連れてくかって・・・りゅうさんの腕を離さなかったんだ」



「なるほど・・・それで諦めて夕飯を食べる事になったと?」



「はい・・・それでりゅうさんも居ますが、沖矢さんもご一緒にどうですか・・?」



どこか遠慮がちに言う蘭。



気がかりだった彼女が居るのであれば断る理由なんかなかった。




「・・・では、お言葉に甘えて」



そう言った沖矢に蘭はパァッと顔を明るくした。



鍵を掛けて彼女の元へと行けば、こちらを見ようともしないりゅうの姿。




「初めまして、沖矢昴といいます。りゅうさん・・・でしたよね?」




手を差し出せばチラッと差し出した手を見た後、フイッと顔を背けて歩き出した彼女。




「あ・・・あの、りゅうさん、ちょっと人見知りなところがっ・・・」



蘭が慌ててフォローすれば、沖矢は笑って気にしてないと答えた。




「・・・・・(随分と顔色が悪い・・・)」



これは確かに蘭が心配すると苦笑いした。



そして彼女が耳につけているヘッドフォンを見て少々驚いた。



出会った頃に彼女にプレゼントした赤井からの贈り物だったのだから。



そういえば一度も使っているところを見た事がなかった為、使う気はないんだろうと思っていた。



それが今、彼女が使っているのをみて、嬉しいという感情が起こった。




いつの間にか、蘭とコナンが前を歩き、りゅうがその後ろを歩いていて、沖矢が隣へと移動すればチラッと見た後、また前を向いて歩いているりゅう。




「・・・・・左利き・・・・」




「はい?」



まさか話しかけられるとは思っておらず、聞き返せばりゅうはチラッとこちらを向いて。




「左利きなんですか?」




「あぁ・・・」



聞きたいことが分かり自身の手を見た。


恐らく握手の際に差し出したのが左手であったから、そう思ったのだろう。



「左利きですよ。小さい頃はよく右に変えろと言われましたが、どうにも右手は左より使いずらくて・・・・」



「・・・・そうですか・・・」



それだけ言うとフイッと視線を戻し、何も話さなくなった。



蘭の家に着けば階段を上がって行く際、クラッと眩暈がしてよろめくりゅう。




「・・・っと・・・大丈夫ですか?」



「っ・・・すいません、大丈夫です」




落ちそうになる身体を支えればりゅうはすぐさま離れて階段を上がって行った。




「・・・・・・」



そんな後姿を見つめながら沖矢は溜息を吐いた。



大分堪えている様だ。



それもそうだろう、最初の頃言われた言葉。



ーーー私の為だと言うのならっ・・死なないでーーー



その言葉を不可抗力とはいえ、破ってしまったのだから。



あれから一週間だと言うのに大分やつれた彼女の姿。



目の下に浮かぶ隈。



恐らく寝れない日々を過ごしているのだろう。



自分自身を責め続けながらーーー



そこまで考えて早く彼女に本当のことが言いたいのだが、何分蘭たちの前で言うわけにはいかず、帰りにでも彼女を送って行くと言う名目で彼女の家に行き話そうと決めた。




部屋に通されれば座っててくださいと言われ、沖矢とりゅうは座っていた。




「あれ?お父さん?」



蘭は姿が見えない小五郎の姿を探す。



「蘭ねーちゃん、これ・・・」



ピラっとある紙を渡すコナン。


その紙の内容に目を通した後、蘭の怒りの声が聞こえた。



「また麻雀!!?もうっ!三日連続よ!!?」



「あはは;蘭ねーちゃん・・・お客さん居るんだから、落ち着いて・・ね?」



コナンの言葉に蘭はハッとして顔を紅くし、すいません・・・;と謝った。



「あぁ・・お気にせず・・・大変ですね。私も手伝いましょうか?」




「あ、いえ、大丈夫です!ありがとうございます!」



そう言って蘭は台所に行き、コナンが沖矢の横に座った。




「手伝うって・・・昴さん料理できるの?」




「・・・・どうでしょうか?」



「いや、どうでしょうかって聞かれても・・・;」



そんな二人のやり取りを耳にしながら目を瞑ればウトウトと眠気が襲ってきた。




何も考えずにスゥッと眠気に誘われるまま意識を沈めた。




「お待たせしまし・・・「「シィーーー!」」




ご飯を持って登場した蘭に、沖矢とコナンが同時に口元に人差し指を置いて言えば蘭はすぐに黙り、りゅうを見た。



「・・・・寝てるんですか?」



コトンッと小さくできるだけ静かに料理を置きながら言えば、えぇ・・・っと沖矢が答えた。




「寝れていなかったようですしね・・・」



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