小さなすれ違い(1/2)
ジョディとキャメルが爆弾処理を成功させていると同時刻。
「患者以外にも宅配業者の人たちが随分と目立つよね」
病院の入り口から出入りする患者以外にも気がつき言えば赤井とコナンはお互いに顔を見合わせて病院内へと急いで向かった。
「君は行かないのかね?」
二人が駆けてく姿を見ていれば横に居たジェイムズに声を掛けられた。
「まぁ、二人が居れば見落としたりはないだろうし・・・」
「随分二人を買っているんだな・・・」
「それよりよくわかったね、私があの時の女と同一人物だと・・・」
「最初は驚いたがな、なんせ見た目が全く違ったのだから・・・変装術を身に着けているとは・・・」
さすがに11年、たった一人で組織を相手してきただけの事はある。
そう言ったジェイムズにりゅうはフンと鼻を鳴らした。
それからすぐに赤井とボウヤが戻ってきた。
またも爆弾を持って・・・・
「また爆弾?」
二人が戻ってくる頃に丁度ジョディとキャメルも戻ってきた。
「これ一つの爆弾では病室一つを吹っ飛ばすのがやっとの威力だろうが同時に数十個もの爆弾が爆発すれば・・・」
「!!!」
赤井の言葉にジェイムズとジョディが目を見開いた。
「この病院は間違いなく倒壊する」
ボウヤの言葉に息を呑むジョディ。
「じゃぁ・・まさか奴らは水無怜奈の奪還じゃなく・・・・」
「病院諸共始末するーーーと?」
ジョディの言葉にジェイムズが続けて言った。
「いや・・・だとしたらもっと確実性を狙うだろうね。さっきみたいに複雑なトラップだらけの爆弾じゃなく、簡単に解除できる玩具みたいなもの・・・・」
赤井が手に持っていた爆弾を貸してもらい、ピッと一つの線を抜いた。
「ちょっ・・・・」
なんの躊躇もなく爆弾の線を引っこ抜いたのが驚いたのだろう。
「爆発さえしなければ大したことがないただの玩具・・・」
ピピッと爆弾のタイマーが止まりジョディはホッとした。
「ちょっと!無闇に線を引っこ抜かないでよ!危ないでしょう!?」
「大丈夫大丈夫、機械には強いほうだから」
「・・・その割には携帯の・・・」
GPSのマーク自体知らなかったようだが?と口を挟もうとする赤井めがけて止めた爆弾を投げつけた。
「ちょっと黙ろうか?」
怒りマークを付けたまま笑顔で言えば赤井は小さくため息を吐き、やれやれと呟いた。
「まぁなんにせよ、爆弾の爆発時間までにはまだかなり時間がある。構造も猫君が言ったように信管を抜いてしまえば機能は停止する」
猫君て・・・;私の名前は猫決定ですか?
ジェイムズの言葉にあきれたような表情をすれば、下からもその名で呼ばれた。
「ねぇねぇ、猫さん!」
こいつら、本当に喧嘩売ってんのか?
ボウヤを嫌そうな目で見れば彼は気にした風はなくニコッと笑った。
「猫さん?」
ジョディはその名に首を傾げ、赤井は楽しげにククッと喉を鳴らしていた。
「・・・・なに?」
「猫さんって・・・仲間とかいるの?」
「は?」
「例えば・・・りゅうさん・・・とか?」
どこか探るようなボウヤの目線。
こいつ・・・やっぱ侮れない・・・
「誰?それ・・・」
呆れたような口調で言えばボウヤは、なんだー・・・・と残念そうに呟いた。
「猫さんがりゅうさんと繋がりがあるのなら、りゅうさんがなんで僕のことを知ってたのか・・・なんとなくわかる気がしたんだけどなー・・・」
そう、りゅうさんは知っていた。俺が黒の組織を追っていることを・・・そして彼女、猫さんは11年もの間やつ等を相手していると言っていた。
そんな猫さんなら俺がやつ等を追っていることはすぐに調べられるだろうし、なにより・・・
「第一、何でそう思ったのか知らないけど、私は一人が身軽なの。仲間なんて必要ないわ」
「そっか・・・・なんか、猫さんの雰囲気が・・・りゅうさんに似てる気がしたから・・・」
「・・・は?」
「・・・ううん!気のせいだったみたい。変な事言ってごめんね?」
気のせいか・・・、第一この人、さっき物凄い笑顔で爆弾を赤井さんに投げてたし・・・怒りマークはあったけど・・・
「(あの人はそうそう笑顔なんて見せる人じゃねーしな・・・)」
コナンは自分の中で気のせいだと完結させた。
「・・・・・・」
危ない・・・このボウヤ、本当に危険・・・
少しでもボロを出せばすぐさま私を=りゅうだと結びつけるだろう。
・・・まぁ、ボウヤや赤井に関わってしまっている時点である程度は諦めているので、バレたらバレたでいいが、まだバレていないのなら知らないふりでいこうと思った。
「(恐らく、先ほど笑って赤井に爆弾を投げつけてたからだろうが・・・うん。この変装の時はよく笑う子にしよう)」
「・・・・・・・」
そんなりゅうと、コナンのやり取りを赤井は面白そうに見ていた。
「とりあえず片っ端から見舞い客へと送られてきた物を調べて爆弾を処理するようにすべての捜査官へ!」
ジェイムズが言えば、ジョディとキャメルは返事を返して駆け出していった。
「ねぇ・・・・」
そんなジョディ達を呼び止めるりゅう。
「何?」
「その玩具が爆発目的だけだとは限らない・・・せいぜい焦って行動に移らない事ね」
挑発的に笑んで言えば、ジョディは多少ムッとしながらも、「ご忠告どうも!」と言って去っていった。
「しかし・・・こうなるとかなり厳しいな。彼らは水無怜奈を奪還しに来るとばかり思っていたんだが・・・・」
「えぇ・・・まさか最初からその命を絶ち、口を封ずる腹積もりだったとは思いもしませんでしたよ・・・・なぁ?ボウヤ・・・」
「うん・・・そうだね・・・」
「・・・・(やっぱ、この二人コンビで組めば結構お似合いなんじゃない?)」
赤井とコナンの様子を見ながらバイクの持ち手に顎を乗せて見ていれば赤井が不意にこちらを向いた。
「だが・・・お前はこの爆弾はそうじゃないと踏んでいるんだろう?」
「・・・まぁ、口封じならもっと確実性でくるでしょうね。爆弾も気づかれないように、しかも簡単に解体できる仕様じゃなくね・・そもそも・・・」
「?」
「最初の鉢にあった爆弾さえ寄越さなかったら爆弾には気がつきにくい・・・!!!」
そこまで考えてハッとし目を見開くりゅう。
「どうした?」
「今すぐ捜査官に伝えて!爆弾を所持したまま歩き回るなと・・・!間違っても水無怜奈の病室にはっ・・・・」
そこまで言えば無線から入る声にジェイムズが応答すれば。
「何?水無怜奈がテレビに出ている!?」
「!!」
ジェイムズの言葉に驚く赤井にボウヤ、そしてりゅうはチッと舌打ちをした。
「気づくのが遅かったかっ・・・・」
「なるほどな・・・・」
「それがやつらの狙い・・各ブロックのリーダーさんに伝えて!水無怜奈の病室には絶対に行っちゃだめだとっ・・・」
赤井が呟けばコナンもハッと気がつき慌てて声を上げた。
「もう遅いでしょうね、テレビで流れたと同時に・・・数人の捜査官は向かっているだろうし・・・・」
バイクから降りてジェイムズの車の隣にバイクを停め、院内へと足を進めれば後ろから赤井とコナンも同様に着いてきた。
「・・・・・・・」
院内に入り、足を止めれば、二人も足を止め、首を傾げた。
「どうした?」
「・・・・どうしたじゃなくて・・・先歩いてくんない?場所なんて知らないから・・・」
「あ・・・そう言えばそうだったね」
なんかもう猫さん、普通にFBIの人たちと違和感ない位だから、当たり前に知ってるのかと思ったよ。
なんて呟きながらボウヤが先を歩き出した。
そして4階のある部屋の前には想像通り、数人のFBI捜査官が集まっていた。
「なんだ・・・ちゃんといるじゃない・・・でもどういうこと?」
ジョディの声が聞こえてきて小さくため息を吐いた。
「忠告してやったのに・・・・」
「まぁ、お前さんほど警戒心が強いやつ等ばかりじゃなくてな・・・・」
「あなた・・・それにシュウ・・・どういうこと?」
ジョディはこちらに気がつき聞いてくれば赤井が答えた。
「俺たちは踊らされていたんだよ、やつ等の手のひらで・・・思い通りにな・・・」
フッと笑いながら言う赤井。
なんだか楽しそうですねー、まんまと出し抜かれたにも関わらず・・・・
そんな赤井を私は呆れたように見た。
「おっ・・踊らされてた・・・?」
「さっきのテレビの映像は、前に彼女が爆発事故に巻き込まれて怪我をした後の番組復帰の時のコメント映像に、入院着とバックの病室を合成したものだよ」
「でも・・なぜ彼らはそんな映像をわざわざ電波ジャックしてまで流したのよ?」
「FBIの人たちをこの病室に集めるためさ、病院内で携帯電話とかを使わないのを見越してね・・・」
「だから・・・私たちをここに集めて一体何をっ・・・・」
コナンの視線へとしゃがみながら言うジョディ。
「さっきまで探し回っていただろう?」
「え?」
赤井の言葉に首をかしげながらジョディは立ち上がった。
「やつ等が病院内でばら撒いた玩具・・・今どこにある?」
「あぁ・・爆弾なら信管を外してポケットに・・・回収したらすぐ別の部屋に調べに行かなきゃいけないからって・・・あっ・・」
「漸くお気づきですかー?」
「まさかこれにっ・・・・?」
「あぁ・・・その玩具に付けられていたんだよ・・・厄介なオマケがね・・・・」
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