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組織への一本の糸(1/2)







「そういや、まだ水無怜奈の意識戻らないの?」




朝仕事に行こうとする赤井を引きとめ、昨日は仕事中に悪かったと謝れば、特別忙しいわけじゃないから問題ないと言われた。



忙しくない?その割には赤井は夜遅くまで帰ってこない事が多い。



ふと疑問には思ったが、そういえば・・と思い出したことを言えば赤井はあぁ。と頷いた。



「もう一か月以上経つのにね・・・・ってか水無怜奈の病室に付きっ切りでご飯とかちゃんと食べてないとか・・・言わないよね?」




「・・・・・・・」



おい;無言で目を逸らすなやっ・・・・




「・・・・全く、人には食べろってうるさいくせに・・・・・・・・・・お弁当でも作れば食べる?」




私の言葉に赤井は少々驚いた様に目を少し開いてこちらを見た。




「なに?」



「そんな提案が出てくるとは思わなかったもんでな・・・・」



赤井の言葉に、あー、そう。と素っ気なく返せば意外な返答が返ってきた。




「軽い物であればありがたい」



それだけ呟き赤井はじゃぁな、と部屋から出て行った。




「・・・軽い物?」



おにぎりだけとか、サンドウィッチとか?




「・・・・わかりづらっ・・・・」



だが、お弁当箱に詰めてという物は好まないのだろうと自己完結した。




「・・・まぁ、病院で食べるとしたら弁当箱なんか開けれないか・・・・;」




そんな事をすれば恐らく仲間から好奇な目で見られるどころか、誰からの物だと問い詰められるのが面倒なんだろうな・・・




とりあえず食材でも買いに行くか・・・・



部屋を出てデパートへと足を運んだ。



赤井には少し・・・いや結構迷惑をかけている気がする・・・・;



一度ならず二度までも仕事中に電話をしてすぐさま駆けつけてくれたのだ。




「赤井は気にするなとは言ってくれたけど・・・やーっぱちょっと・・・縋りすぎだよね・・・;」




独りで生きていくと決めていたのに、彼に縋ってばかりだ。



彼は俺に依存してもいいと言ってはくれたが、私自身彼を利用しているようで。



「・・・・愛してる・・・か」



あんなにも真っすぐに、私が殺人者でもましてや敵でも構わないくらい愛してると言ってくれた彼。




「殺人者でも・・・・」



もしかしたら彼は気がついているかも知れない。



私の手はもう・・・・



そこまで考えてフと嘲笑って首を振った。





「・・・・そろそろ・・・私の中でもはっきりさせなきゃね・・・・」



赤井の事をーーー



あんなにも真っすぐ言ってくれた彼にーーー



応えなくてはならないーーー



ただ・・・・どうやって・・・?



好きなのか、それともただ弱さを受け止めてくれた彼に縋っていたいだけなのか・・・





うーん・・・・と考えながら買い物を進めて行った。




「りゅうさん?」




考え込みながら食材を見ていれば声を掛けられて振り向けば。




げ・・・・・;



ヒロインちゃんアーンドホイホイボウヤの姿。




「・・・どうも」



気まずい・・・;


ヒロインちゃんはともかく、ボウヤとは昨日のあの出来事のすぐあと・・・




今日出かけようとしたのが間違いだったわ・・・;家でヒッキーしてればよかった




そこで、ん?と気がついた。



気まずいのは私だけだと思っていたが、なんだかヒロインちゃんとボウヤもどこかぎこちなく笑う。



「?」



首を傾げれば二人は何でもない!と慌ててかぶりを振っていた。



まぁ、いいか。




「・・・(蘭ねーちゃん、知らないフリ!だよ)」



「・・・(わっ・・分かってる)」



コソッと二人は何かを交わした後、ニコッと笑った。




なんなんだ;一体・・・



「何してるんですか?」



蘭がりゅうへと問えばりゅうはチラッと後ろの食材を見た。



「・・・・ハム見てる」



「あ・・・そうですか;」



素っ気なく答えれば蘭はキョトンとした後なんとか言葉を発したようだ。




「パンとレタスと卵とハム・・・後はふりかけ・・・サンドウィッチとおにぎりでも作るの?」




「・・・人の買い物を見て推理すんのやめてくんない?」



コナンの言葉に言えばボウヤはえへへっと笑った。



いや、なぜ照れる?




「夕ご飯ですか?」



「いや・・・これは昼食も食わずに仕事ばっかしてる奴に・・・・あ」



「え!?あ、お弁当!しかも仕事ばっかしてる奴って・・・もしかして彼氏さんですか!?」




つい口が滑ってしまった言葉にしまったと口を閉ざすが遅かったらしい。



パァッと顔を明るくして手をパァンと叩きながら嬉々と聞いてくるヒロインちゃんにヒクッと頬が引き攣った。




「・・・か・・彼氏ではないけど・・・」



「え?そうなんですか?じゃぁ片思いとか?」



「片思い・・・?」



はてと首を傾げて考えてみた。



「・・・今の所は・・・向こうが片思い・・・?」



うーんと考えながら言えば、蘭はえぇ!?と驚きに声を上げた。



「・・・よくわかんないや。いい加減私も答えださなきゃとは思ってるんだけどねー・・・」



「そうなんですかー・・・あ!りゅうさん今から暇ですか?」



蘭がいきなりそんな事を言えばりゅうは一瞬何かを考えた後、・・・まぁ暇だけど・・・と答えた。








あれからすぐに買い物を済ませて蘭の家へと招かれた。



そして夕食を御馳走になりお開きになった。



「・・・・・・」



ヒロインちゃんも毛利さんも何処かぎこちなかったように見えた。




ふと視界の先には今から博士の家に行くと言うボウヤの姿。



毎回毎回なんで私が送らにゃならんのよ・・・;




「ねぇ・・・」



「なぁに?」



私の問いかけにボウヤが振り返りながら首を傾げた。



「・・・・何か知ってるの?」



「え?」



「今日の君と、蘭ちゃん、毛利さんの様子がぎこちなかったし、笑顔もどこか・・・ね」



「あー・・・それは・・・」



ボウヤは目を泳がせながら言葉を濁した。



「一番はボウヤの行動が不自然なんだけどね」



「えっ!?僕!!?(俺は蘭やおっちゃんより上手く立ち回ったつもりだけどっ・・・)」




「・・・招き猫の事件からまだ一日しか経ってないのに、好奇心旺盛な君が何一つ聞いてこない。不自然な事この上ないわ」



私の言葉にボウヤはヒクッと頬を引き攣らせた。




「聞いてこないのは・・・知ってるから。なんじゃないの?」




「あっ・・・そのっ・・・」



その挙動不審さがまさに図星と言わんばかりだ。




「・・・・目暮さんね」



ハァーっと溜息を吐きながら言えばボウヤは僕が無理やり聞いたんだ!と焦ったように言った。




「別にいいわよ。誰から聞こうが、目暮さんを責める気なんてないわ」



もう何年も前の事だしね。素っ気なく言えばボウヤは表情を険しい物へと変えた。




「・・・本当?」



「え?」



「本当に・・・何年も前の事だと・・・吹っ切れてるの?」



違うよね?吹っ切れてるんだったら・・・昨日みたいに取り乱したりしないとボウヤは言った。




「・・・吹っ切れてるなんて言ってないでしょう?吹っ切れるわけないじゃない・・・」



そもそも吹っ切れてれば警察嫌いだとあんなに表に出さないわよ、そう言えばボウヤは静かに「そっか・・・」と呟いた。




「ねぇ、りゅうさん・・・」



「何?」



「・・・僕はやっぱ復讐がいいとは思わない」



「・・・・でしょうね」



君やヒロインちゃんは・・・まだ何も穢れを知らないお綺麗な人間なんだから・・・



でもそのままでいいと思う。



彼らには今のまま・・・綺麗なままでいて欲しいとすら思ってる。



「でも・・・正直分からなくなったのも確かなんだ」



「んー?」



「復讐はよくないけど・・・人が人を殺す理由なんて知ったこっちゃないと思ってたけど・・・世の中・・・そんな綺麗事で片付けられない感情があるって・・・確かにそうなんじゃないかって・・・・」




考え込むボウヤにポンッと頭に手を置いた。




「・・・いいんじゃない?今は迷えば・・・」



「え?」



「ただ・・・分かってほしいとは思わないけど、世の中には色んな感情があって、人それぞれ思う事が違うと・・・いつか分かってくれれば・・君は今よりももっと凄い探偵になると思うわよ?」



「りゅうさん・・・・」



「綺麗のままでいいじゃない。そんな感情・・・経験するもんじゃないわ。あなたはあなたのまま・・・自分が信じる道を進めばいい」




「・・・うん」



ボウヤが小さく頷けば博士の家に着き、じゃぁと背を向けたボウヤを呼び止めた。




「?」



「・・・一つ、一つだけ・・・何も言わずにただ・・・聞いてくれる?」



「え?・・・うん」



「・・・・今君が追っている件は危険すぎる。手を引く気はないかしら?」



「!!?」



私の言葉に驚いた様に目を見開くボウヤ。



なんで?どうして?と言っているようだったが、私が何も聞くなと言ったことを思い出し、静かに強い目を向けてきた。




「ないよ・・・ごめんね?」



「・・・例えば・・・君の事は私が何とかしてあげると・・・言っても?」



「・・・・これは俺の問題だから・・・りゅうさんが、なんで奴らを知っていて、俺が奴らを追っていることを知っているのかは知らないけど・・・・俺は・・・自分の手で必ず決着をつけるっ・・・」



そう言い切ったボウヤに、私はやはり愚問だったか、と溜息を吐き困ったように眉を寄せた。




「・・・・でしょうね」




「ねぇっ・・!一つだけ・・・一つだけ聞いていいかな!?」




「何も言わずに・・・って言ったでしょう?・・まぁ一個だけならいいけど・・・」




答えられるものならね、と言えばボウヤは深呼吸をして静かに言葉を紡いだ。




「りゅうさんはーーー敵なの?味方なの?」



ボウヤの言葉に最初の頃に言われた赤井の言葉が思い浮かんだ。




そしてフッと笑った。




「・・・・どう思う?」




「・・・・敵・・・じゃないって思いたい・・・」



何処か縋るような懇願するような瞳に複雑な感情になった。




あんなにも関わりたくないと願った少年なのに・・・・ボウヤに惚れたベルモットの気持ちが分かった気がした。



「・・・安心して。私が君の敵に回ることはないわ・・・」




そう言うとボウヤは心底ほっとしたような表情をした。



「・・・信じていいのかしら?私の言葉なんて・・・・」




「・・・うん。信じられる。そう思うんだ」




「・・・・ボウヤ、彼に似てるわ」



「え?(彼って・・・りゅうさんに片思い中?っていう・・・)」



「彼とあなた・・・もしかしたら組んだら結構いいコンビかもね」



それだけ言ってヒラヒラと後ろ手に手を振り今度こそボウヤと別れた。



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