これが警察のやり方なの?(1/2)
≪どうした?≫
「・・・・・・・」
≪りゅう?≫
「赤井っ・・・」
≪五分で行く、待ってろ≫
人気が居ない所で座り込み、自分がした失態と、溢れだしたどす黒い感情を抑えられず手を伸ばしたのはやはり赤井だった。
携帯で電話を掛ければすぐに出る赤井、何と言えばいいのか分からず声が出なかった。
赤井は心配そうに名を呼び、それに応えるように彼の名を呼べば彼はすぐに行くと言ってくれた。
待ってろと言った割に通話が切れる事はなく、すぐにこちらへと駆け寄ってくる音が聞こえた。
通話がピッと切られたと同時に、「りゅう」とすぐそばで聞こえてくる赤井の声にピクッと指が反応するが顔を上げられなかった。
するとすぐにフワリと浮遊感が襲った。
赤井が抱き上げたんだとすぐに分かり、ギュッと彼の首元へと腕を回し、顔は見られない様に肩口へと押し付けた。
「怪我はないか?」
赤井の言葉にコクンと頷けば、安心したようにホッとしたのが雰囲気で分かった。
「ごめんっ・・・・」
心配かけてごめん・・・・
仕事中なのにごめん・・・
弱くて・・・ごめん・・・
そんなすべての意味を赤井は分かっているかのように、フッと笑った。
「気にするな」
チュッと額に小さく口づけを落とされたが、今はそれに動揺することもない程に感情がグチャグチャだ・・・・
赤井はすぐに車へと向かって助手席へとりゅうを降ろせば自宅へと向かった。
自宅へと着き、ベッドに行くか?と言われたがとても寝れる感じではない。
首を振ればソファに降ろされて水を渡され、隣に腰かける赤井。
スッと頭を赤井の肩へと寄りかからせるような形で引き寄せられた。
どの位か無言で頭を撫で続けた赤井は、呼吸が徐々に落ち着いてきたりゅうに声を掛けた。
「どうした?」
「・・・・ボウヤの前で・・・取り乱した・・・」
警察相手にも・・・そう呟けば珍しいなと、赤井は困ったように笑った。
「・・・赤井はさ・・・復讐なんて・・・って思う?」
顔を伏せたままで声も小さな呟きだが、しっかりと耳に届いた赤井はフムっと考え込んだ。
「・・・・どうだろうな。今俺自身が組織のジン相手に抱く感情は・・・憎しみなのかもしれんな」
だから復讐心だってあるとは思うと彼は言った。
「・・・・否定しない?」
「何をだ?」
どこか怯えているような声色に赤井は優しい口調で問う。
「私を・・私の中にある・・・復讐心を・・・馬鹿だと・・・愚かだとあなたは笑うかしら・・・?」
「・・・笑いやしないさ・・・もちろん、否定だってしない」
ギュッとりゅうの頭を片腕で抱える赤井の腕に力が籠った。
「お前が・・・お前であれば俺は構わない。例え・・・殺人者だとしても、ましてや敵だとしても・・・俺はお前を離せそうにない程・・・愛してる」
もう引き返せないくらいにな・・・っと言う赤井の声が本当に愛おしそうな声で・・・胸がギュッとした。
手渡されたコップを机に置き、赤井へと抱き着けば彼はそれに応えるように抱きしめ返してくれた。
ーーーーーーーーーーーー
「目暮警部殿・・・・」
毛利探偵事務所には小五郎のほか、蘭とコナン、灰原に博士の姿があった。
そして訪ねてきた目暮の背後には佐藤と高木の姿があった。
全員が座り目暮が重い口を開いた。
「本来だったら・・・私からこの話をするべき事ではないかもしれん・・・だが、君たちにりゅう君が誤解されるのも・・・私には耐えかねん・・・」
だからこそ、彼女を責めない様に話すと目暮は語り始めた。
「彼女が警察が嫌いな理由も、今日、なぜあんなに取り乱し、復讐の何がいけないと言い切ったのも・・・すべては我々警察のせいなんだ・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・14歳の時に私が全てを失ったことは・・・調べたんでしょう?」
ソファの持ち手のところに赤井が凭れ、その足の間にりゅうが座り、赤井へと凭れながらポツポツと静かに話し出した。
赤井は片腕をりゅうの腹に回し。もう片方の手は頭を撫でるようにゆっくりと動いていた。
「あぁ・・・・」
「始まりは・・・突然だったわ・・・・」
・・・・・・・・・・・
「えぇ!?最近誰かにつけられてる気がする!!?」
「シィっ!!声が大きいよ!桜!!」
学校の帰り道、親友の桜と話していて最近気になる事を相談すれば彼女は驚いた様に大声を上げた。
「ごめんごめんっ!で?それ誰かに相談したの?」
「ううん、私の気のせいかもしれないし・・・」
「気のせいなら気のせいでいいじゃない!!誰かに相談しな!!なんなら一緒に警察に行ってあげる!」
肩を掴み真剣に言う桜にりゅうは苦笑いした。
「警察って・・・;大げさだよ・・・」
「何かあってからじゃ遅いんだよ!?」
「まぁ・・・そうだけどさ・・・とりあえず家に帰ったら、にぃーにに相談してみる」
「あぁ!5個年上のあのイケメンのお兄さんね!!ってあんた、来年高校生にもなるって言うのに・・・にぃーにって・・・・」
「うっ・・・小さいころからそう呼んでたからもう呼び方変えられなくて・・・・;」
「まぁ、大人びたあんたがそんな子供みたいな呼び方してたら・・・ギャップ萌よね・・・」
「は?」
「いやいや、こっちの話。じゃぁ今日ちゃんと相談するのよ!?」
「うん」
そして桜と別れて家に帰る途中・・・
背後から足音が聞こえて、怖くなり途中から走って家へと帰った。
ーーーーバタン!!と扉を閉めて鍵を掛ければその場に座り込み、ぜぇぜぇと息をした。
「りゅう?お前どうした?そんなに急いで・・・・」
聞こえてきた声に顔を上げれば兄の姿があって、家に着いた安心と、兄の顔を見て安堵で涙腺が一気に緩んだ。
「にぃーにっ!!!」
バッと兄に抱き着けば、兄はおっと・・・っと言いながらもしっかり抱きとめてくれた。
「何があった?」
肩を掴んで一旦離してしゃがみ、りゅうを見上げるように、彼女の涙を指で拭う。
「怖いのっ・・・最近誰かにっ・・つけられてる気がしてっ・・・」
「今もか?」
兄の言葉にコクコクと頷けば兄はすぐに玄関を開けて周りを見渡した。
暫くして異常がない事を確認し玄関を閉めて鍵をかけた。
「今はとりあえず人影はないようだな・・・・」
「私の・・・気のせいなのかもしれないんだけどっ・・・・」
ポンポンっと頭を撫でながら兄はフワリと笑った。
「大丈夫、俺が守ってやるから・・・とりあえず暫くは学校の行き帰り俺が着いてく」
「えっ!?でも・・・・」
学校が・・・・と心配そうに言えば兄は心配するなと笑った。
「大学の方はお前の学校の登下校の時間にはずれてるしな。まぁそれでも無理な時は絶対に一人で帰るなよ?」
常に誰かと一緒に居ろと言われて頷いた。
・・・・・・・・・・・・
「その言葉通り、登校は兄と桜と、下校は兄が時間が合うときは必ず門の前に居てくれたわ・・・」
静かに落ち着いて話すりゅうに、赤井も静かに聞いていた。
「ある日、兄が来れなくて桜と帰ってる時、足音が聞こえてきて・・・桜と一緒に逃げるように警察へと駆け込んだ・・・」
≪誰かに追われてるの!助けてください≫
恐怖に怯えて何も言えない私の代わりに桜が言うが、足音の犯人がいつまでも留まっているなんて事はなくて。
≪気のせいなんじゃないか?≫
≪今日だけじゃないんです!この子、最近誰かに着けられてるみたいでっ・・・≫
≪で?何かされたのかい?≫
≪・・・いえっ・・・≫
≪っ・・でも!この子のお兄さんが居ない時に限っていつもっ・・・≫
≪じゃぁ毎日お兄さんに来てもらえばいいだろう?≫
≪兄は・・大学生でいつもと言うわけにはいかなくて・・・≫
≪はぁー・・・・あのね、警察もそんなこと言われても困るんだよね、毎日君の送り迎いができるわけじゃないし・・・≫
≪それはっ・・・そうですけど・・・≫
≪大体何もされてないんだろう?だったらいいじゃないか≫
≪なっ!?何もされてなきゃいい!?この子は最近ずっと怯えてるんですよ!!?≫
≪桜・・・もういいよ・・・帰ろう?≫
≪でもっ!!≫
≪大体・・・着けられてるなんて君の勝手な妄想なんじゃないのか?≫
≪あー、確かに最近多いですよねー、女子中学生や高校生が追いかけられてるーなんて言いながら実はただ帰り道が一緒なだけだったとか・・・≫
≪そうそう!結局なんの事件性もなし、ただ振り回される警察の身にもなれってーの≫
数人の刑事さんから言われた言葉に、周りの者たちも賛同して笑いが起こった。
その言葉と刑事さんたちの態度になんだか自分が自意識過剰なんじゃないかと言われて恥ずかしくなって真っ赤に顔を染めながら涙ぐむりゅう。
≪なっ!?そんなことない!!本当に着けてるやつが居てさっきだってっ・・・≫
桜がそんな刑事たちに怒りをぶつけながら怒鳴るがりゅうが必死に止めた。
≪桜っ・・いいのっ!もうっ・・いいの・・・ご迷惑をお掛けしてすいませんでした≫
ペコっと頭を下げて納得がいかない桜を無理やり引っ張り警察署を後にした。
≪なんなのっ!?警察ってあんななの!?≫
≪もういいよ・・・確かに言う通りだよ。何かされたわけじゃないし・・・ただ足音が聞こえてくるってだけ・・・≫
≪その何かが起こってからじゃ遅いんだよ!!?≫
≪その通りだ≫
二人しかいない会話にもう一人、しかも男の人の声が聞こえて二人してビクッと肩を揺らした。
振り返れば若いような・・そうでもないような小太りな男の人。
≪どっ・・どちら様でしょうか?≫
ビクビクしながら言えば彼は脅かしてすまん、と言いながら警察手帳を見せてくれた。
≪私は目暮、先ほどは・・・先輩刑事が酷い事を・・・すまなかった・・・≫
中学生相手にも関らず、深々と頭を下げる目暮さんに、警察と聞いた時から威嚇していた桜と二人でキョトンとして目を見合わせた。
「・・・・警察では全く相手にされなくて・・・でも目暮さんだけは違った・・・奴ら警察の態度を謝ってくれて、私の話を親身に聴いてくれた・・・でも・・・」
「・・・先輩刑事という事は当時その目暮と言う刑事は下っ端・・・話を聞くくらいしかできないのだろうな・・・」
「・・・うん、それでも何かあったら電話をしてくれと言ってくれて・・・あの時はそれが嬉しくて仕方がなかった・・・・」
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