ピンチ=チャンス?いやいや、大ピンチ(1/2)
「そう言えばお前、どうやってあのパーティの情報を手に入れた?」
もぐもぐと朝食を食べていれば、いきなりそんな事を赤井に言われて、一瞬頭に?が浮かんだ。
「・・・・・季節外れのハロウィンパーティだ」
「・・・あぁ」
どんだけ前の話をいきなり掘り起こしてくるんだ、この男は・・・・
あれからもう1.2週間は立とうとしているのにもかかわらず・・だ。
「あの時やはり聞いていたな?」
「まぁ・・・・」
赤井の言うあの時とは恐らくジェイムズ誘拐事件の時のことだろう。
・・・・赤井の携帯に仕掛けた盗聴器の方はバレてない・・・のかな?
「だが、それだけでは不明な点もあってな」
「・・・・・・」
「パーティの事と、新出と言う男がベルモットだという事を知っているのはあの会話を聞いたから・・・だが、あの港でFBIが張り込んでいたことをお前はなぜ知っていた?」
「・・・ベルモットだってあそこにFBIが来るの知ってたじゃん」
「それはあの女が変装で忍び込んだり盗聴器を・・・・」
そこまで言って赤井は会話を止めて考え出した。
「・・・・・(ベルモットも知ってたからそんなに難しい事じゃないと言いたかっただけなのに、墓穴ほったかな・・・;)」
内心ダラダラと冷や汗を垂らす。
「・・・・・・」
何かを考えた後、無言でこちらを見てくるが知らないふりをしてもぐもぐと朝食を食べ進めた。
「・・・・・(もぐもぐ)」
「・・・・・・・」
赤井がゴソゴソとし始めたのでチラッとそちらを向けば携帯電話を取り出してあちこちを見始めた。
あ、やばい。バレる・・・・;
パカッと携帯の電池を外し始めた。
そしてそこで手が止まり、フゥーっと息を吐いた赤井。
「・・・・私じゃないよ・・・」
苦し紛れに言ってみるも呆れ顔を向けられた。
「お前以外誰が居る」
「・・・・あんただってGPS着けてたじゃん」
「お前にも分かる様につけただろう?」
マークを知らないのは知ったこっちゃないと言い切る赤井。
「マークはともかくですね、盗聴器を仕掛ける際につけたよーって言う馬鹿いますかね?」
そんなもん盗聴器ですらないわ。
「・・・・・・・」
「・・・大体、盗聴器の類はすぐに分かるって言ってたじゃん。気づかないって・・・あんたの家も盗聴器大丈夫ー?」
無言のプレッシャーが居心地が悪くて、誤魔化す様にその話を持ち出せば、赤井はフッと笑った。
「お前と同じ理由だ」
「は?」
「お前なら・・・と警戒してなかったからと言えばいいか?」
「・・・・・」
私と同じ理由・・・・・?
そこまで考えて一気に顔に熱が集中した。
「なっ・・あんた・・あの時聞こえないふりして聞こえっ・・・・」
バイクを走らせている時、言いかけた「あんただからっ・・・」のあの言葉を・・・・
真っ赤な顔でパクパクと動揺しながら言えば、赤井は満足したようにフッと笑った。
「カマを掛けただけだ・・・まさかお前がな・・・」
「!!!?」
ダメだ、この男と居ると本当に調子が崩れる。
そう思ってハァーっと赤い顔を見られない様に俯かせて溜息を吐いた。
「あれからマークを消そうともしないってことは・・・構わないって事だろう?」
「・・・まぁ、居場所位ならね」
なんとか冷静に返すものの、顔の熱はまだ完全に取れていなかった。
「そうか。だが盗聴器は外すぞ」
「外すんかい」
ペリッと剥がされた盗聴器を返された。
いや、盗聴器って回収はしたことあるけど仕掛けた本人から返されたのは初めてだよ・・・
「そんなものは必要ない。知りたい情報があれば教えてやるさ」
赤井の言葉にキョトンとした。
「なんだ?」
いや、なんだ?じゃないでしょうが・・・
「・・・FBIって情報漏洩禁止じゃないの?」
「まぁな」
「いいの?」
聞けるとは思ってなかったので盗聴器を仕掛けさせてもらったのだ。
私の基本な情報収集は盗聴器だったり自身の足で歩き回ったりで掴むものが多い。
赤井の職業を知ってはいたがそれを利用しようと近づいたわけじゃない。
確かに赤井から組織の情報が聞ければ棚ぼたではあるが・・・
「ここで取引といこうじゃないか」
「はい?」
楽しそうに笑み、言う赤井に私は益々首を傾げるしかなかった。
「FBIで得た組織に関しての情報はお前にも教えてやろう」
はい、相変わらず上から目線っ・・・・
「・・・・その代わり、変装術や声色を使う捜査の時は手を貸せ・・・とでも?」
「あぁ」
「・・・・お断り」
「・・・なぜだ?」
「FBIにも関わりたくないのよ」
そう言ってるでしょうが・・・呆れたように言えば彼はふむっと考え出した。
「まぁ、組織の情報は魅力的ではあるけどねー」
あんた以外の奴に関わるのも嫌なのよ。
「・・・だったら俺だけならいいのか?」
「ん?」
「FBIに協力しろではなく、俺なら協力してくれるのか?」
「・・・・・・・まぁ、百歩譲って・・・?」
「だったら取引成立だ」
「・・・いいの?」
「俺には協力してくれるんだろう?」
「そりゃぁ・・・あんたなら足手纏いにはならないだろうし・・・」
それに・・・と赤井を見れば彼は首を傾げた。
「?」
「・・・・絶対・・死なないで傍に居てくれるんでしょう?」
「!!・・・あぁ、約束しよう」
一瞬驚いたような表情の後、フッと柔らかく笑う赤井。
そしてその言葉にりゅうは嬉しそうに、フワッと笑った。
「その表情を・・・俺以外の奴が見るのは癪なんでな・・・」
そう小さく赤井は呟いた。
「まぁ、傍に居るときに完全に振り向かせるのなら・・・死んだらできないわよね」
「・・・・・・もう・・・」
「もう?」
「・・いや、なんでもない(もう気づいてもいいだろう・・・;)」
赤井はりゅうの鈍感さに呆れたように溜息を吐くも、今の関係も、悪くはないか・・と笑った。
「どこまで掴んでる?」
朝食を食べ終わって仕事へと向かう赤井と一緒にエレベーターに乗ればいきなり言われた言葉。
「・・・今張り込んでるのは水無怜奈っていうアナウンサー・・とか?」
「・・・・俺の部下に欲しいくらいだな」
「あんたが上司とか・・・ごめん、考えただけで嫌」
扱き使われるのが目に見えるようです。
「そう言えばさっきから何を聞いている?」
赤井が私がしているイヤホンを指さしながら首を傾げる。
「え?」
「いつもならヘッドフォンだろう?」
「あぁ、ボウヤの方で水無怜奈から依頼が入ってたみたいでね」
あ、毛利小五郎のほうよ?と言えば分かっていると言われた。
「依頼?」
「うん、ピンポンダッシュの犯人を捕まえてほしいって言う依頼なんだけど特に問題なかったみたい」
「・・・お前はボウヤにも仕掛けてるのか?」
「あら?あのボウヤ結構いい読みしてるのよ?警察やあんたのお仲間より、ボウヤを張ってた方がよっぽどいい収穫がありそうなくらい・・ね」
「ホォー?随分とボウヤを買っているんだな。あれほど関わりたくないと言っていた割には・・・」
「関わりたくはないけど、もう関わってんだから開き直っただけよ」
利用できるもんはなんでも利用しないとねー・・・あれ?さっきと言ってることが違う?まぁいいか。
「で?水無怜奈は白か分かったのか?」
「うーん・・・実際ただ新出医院を頻繁に出入りしてたってだけで組織と疑うにはちょっと薄いけど・・・って何してんだか、ボウヤは・・・;」
赤井と話しながら盗聴器に聞き耳を立てていればボウヤの失態に呆れたように溜息が出た。
「どうかしたのか?」
「んー?ピンポンダッシュの犯人を捕まえるのに盗聴器を玄関先に仕掛けたらしいんだけど、回収するの忘れてたみたいでねーしかも水無サンが踏んじゃったみたいで」
「・・・盗聴器が水無怜奈についている・・と」
「そうそう、回収の際気まずいよねー」
靴に付いているのならば盗聴器を仕掛けたことを言って回収させてもらうしかない。
まぁ依頼でつけたと言えば問題はないだろうけど・・・・
「っ・・・・!?」
いきなり顔色を変えてイヤホンに耳を澄ますりゅう。
「どうした?」
「携帯の起動音の後・・・七つの子・・・」
「七つの子?」
どうやら赤井たちは七つの子の事を知らないらしく、簡単に説明すれば、興味深そうにホォー?と呟いた。
「もう片方を貸せ」
上から目線の言葉にも今はツッコむ余裕はなく、スッと耳にしてない方のイヤホンを渡せば赤井も一緒に聞き始めた。
next
back