Phantom?なにそれ、美味しいの?(1/2)
ーーーパンパァン
と二発の銃声が辺りに響き渡った。
ジョディが銃を出し、構えたベルモットに向け、発砲したのだ。
「・・・・・・・」
銃口を向けられて手を上げるベルモット。
恐らく彼女の仲間がどこかにいるはず・・・
そう思ってスコープで辺りを見渡せば・・・
「居た・・・・」
ライフルを構えている一人の姿。
チッと舌打ちが出た。
ここからじゃぁあそこに打ち込む事はできない。
だが動けばきっと気づかれてしまう。
ここは大人しく事の成り行きを傍観することにした。
ーーーあなた、どうして年を取らないの?
聞こえてきた声にスゥッと目を細めた。
ベルモットが年を取らない理由・・・それは恐らく・・・・
そこまで考えて、ジョディの言葉にハッとした。
ーーーさぁ皆、出てきてこの女を拘束して。
「・・・まずいな」
いっそ出て行こうか?もしくはバレるのを承知でこの位置から動いてライフルを構えている奴の射撃ポイントに移るか・・・
そこまで考えているまもなく、パァンと一発の弾丸が発射された音が響いた。
「!!」
遅かったかーーと思ったが、どうやら一発で仕留める気はないらしく、その弾はジョディの腹へと命中した。
ジョディは車に背を預けてズルズルと座り込んだ。
そしてそのジョディから拳銃を取り上げ、ベルモットはここにはFBIは居ないと告げた。
「素直に引き下がっちゃったからねー・・・」
スコープを覗き、ジョディへと拳銃を向けているベルモットの腕に標準を合わせた。
けれど、車にはあのボウヤが乗っているのだ。
このまま黙ってるとは思えないけど・・・
そう思って見ていれば案の定。
ボウヤがサッカーボールでベルモットが持っていた拳銃を弾いたのだ。
「お、うまい事ライフルの死角に持ってったねー」
ベルモットの体を盾にすれば恐らく撃ってはこないだろう。
麻酔針を構えて、車へと誘導するボウヤ。
「警察までドライブですかー?」
まぁ楽しそう、そんな言葉を口ずさめば、こちらへと向かってくる一台のタクシーに目を見開いた。
「はっ・・・?」
哀ちゃんだ。
眼鏡を掛けているという事は恐らく予備の追跡眼鏡でボウヤの居場所を割り出し、来たのだろう。
気持ちは分からないでもない。
自分のせいでボウヤが危険な目にあう、きっとそう思ったら居てもたっても居られなかったんだ。
それが例え、自分が殺されても・・・大切な人の命を・・・守れるのなら・・・
「分かるけどっ・・・・残された方はどうなるっ!?」
あのボウヤっ・・・あの少女に変装するくらいなら、厳重に監禁してからこいよっ・・・
そう悪態吐くも、今この状況ではどうにもできない。
どうするーー?
バイクで哀ちゃんを掻っ攫えばボウヤは自由に動ける。
けどっ・・・彼女を片手にライフルを相手にするのは不可能だ。
さぁっ・・どうする!?
焦っているのはボウヤも一緒で、哀ちゃんに逃げろと叫んでも彼女は嫌よ!!とボウヤの近くへと走りよってくる。
「逃げろっ!!灰原!!早くここか・・・」
哀ちゃんの方へと視線を向けた一瞬の不意をついて、ベルモットが自分に向いていた麻酔針をクルリと方向転換させてボウヤへと打ち込んだ。
麻酔針を打たれたボウヤはクタリと力を失い眠ってしまった。
「・・・状況悪化・・・」
更に悪条件になる状況にもはや苦笑いも出てこない。
さぁどうする?
ベルモットと哀ちゃんの会話が聞こえてきた。
「馬鹿な女・・ボウヤのカワイイ計画を台無しにして・・・わざわざ死にに来るなんて」
「ただ死にに来たんじゃないわ、全てを終わらせにきたのよ。例えあなたが捕まっても私が生きている限りあなた達の追跡は途絶えそうにないから・・・ただ約束してくれる?」
私以外、誰も手に掛けないと・・・・そう言葉にする哀ちゃんに舌打ちしか出なかった。
「あのばかっ・・・死ぬ事で終われるのはあんただけっ・・・・ボウヤは、組織はっ・・・あなたが死んでも止まらないと分からないの!?」
ライフルを構えながら苛立ち気に呟いた。
どうする?このままベルモットを打てば、上に居るライフルが哀ちゃんを打つだろう。
必死に打開策を考えるが、更に予想外な出来事にもう開いた口が塞がらなかった。
今度はあなたですかっ・・・・
「ヒロインちゃん・・・・;」
ジョディの車のトランクがいきなり勢いよく開き、飛び出てきたのは蘭の姿。
パーティに参加しないのなら巻き込まれる事はないと安心したのは一体なんだったのか・・・
「・・・・けど、状況は変わった」
蘭が出てきた事により、ベルモットは銃を哀ちゃんにもヒロインちゃんにも撃つことはできないだろう。
証拠に、ライフルで何発か撃たれているが、それを必死でベルモットが止め、それでも止まらない銃声に、一発打ち込み、止めるベルモット
「待ってって言ってるでしょう!!?」
あの女にも、他人の為にあんなに必死になることがあるのかと、少し関心してしまった
蘭が灰原をギュッと抱きしめ、地面へと倒れこんだ。
その様子を見ながら、ベルモットは蘭に向け数発発砲した。
「・・・・当てる気は・・・なさそうね」
今のうちにあのライフルの奴を仕留める場所に移動するか・・・そう思って見上げれば、そいつの後ろにある人影。
あれは・・・・
「げっ・・・赤井・・・・」
ここに来るのかよっ・・・・ってか来てるのなら早くこの最悪な状況を何とかして欲しかった・・・・
ははは・・・と疲れたように笑った。
でもまぁ、これであの男を仕留める為に移動をする必要はなくなった。
「どいてっ!!・・・Move it Angel!!(どいてっ!!エンジェル!!)」
「・・・エンジェル・・・・ベルモットにもヒロインちゃんは天使なんだね・・・」
私とは大違いな女の子、優しくて、温かくて、心が綺麗で、穢れも知らない真っ白な女の子。
フッと嘲笑の笑みが零れる。
「眩しいな・・・・」
蘭にばかり気を取られていたベルモットは、ライフルの死角に入ったジョディに撃たれた。
「っ!!!いつの間にっ・・・」
「銃を捨てなさいっ!!さもないと次は頭をっ・・・」
荒い呼吸を繰り返しながらもベルモットへと銃口を向けたままのジョディ。
しかし、ジョディの後ろからポンプ音と共に足音がコツコツと聞こえてきてジョディは焦った。
反対にベルモットは口角を上げた。
「(ポンプ音?ショットガンっ・・まずい・・・後ろからっ)」
「OK!カルバドス、挟み撃ちよ、さぁ、あなた愛用のそのレミントンでFBIの子猫ちゃんをふっ飛ばして・・・」
フフッと笑うベルモット。
ジョディはもう駄目かと目をギュッと閉じた。
「ホォー?カルバドスというのか、あの男・・・ライフルにショットガンに拳銃三丁、どこかの武器商人だと思ったぜ・・・」
ニヒルな笑みを浮かべたのはショットガンを片手にライフルを片腕に掛けている赤井秀一の姿。
「赤井っ・・秀一っ・・・・」
「シュウっ!」
目を見開くベルモットに安堵の表情を浮かべるジョディ。
「・・・・ん?」
その様子を影で見ていたが一つ前のコンテナで銃のようなものを構えている男の姿が目に入った。
「もっとも、両足を折られて当分商売はできないだろうがな。まぁカルバドスは林檎の蒸留酒。腐った林檎の女の相棒にはお似合いってトコロか」
「く・・腐った林檎ッ!?」
「あんたの標的名だ、大女優シャロンが脚光を浴びたのがゴールデンアップル、あんたはあの時のまま綺麗だが、中身はシワシワのラットンアップル・・・腐った林檎ってな!」
「・・・・・・;」
敵ながら酷い言われようだな;私も前世と合わせたらもうとっくにおばさんの仲間入りの年齢は過ぎてるんだけど、口が裂けても言えないな・・・;
「くっ!」
赤井の挑発にベルモットが乗り、拳銃を構えた。
だが、それよりも早く赤井がザッと踏み込み、ショットガンを撃つ。
ーーーズガンッ!!と大きな音が響き渡れば、ズザァッと後ろへと吹き飛ぶベルモット。
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