事件ホイホイとの再会はやはり事件(1/3)
あの日からチョコチョコと赤井の家に行っては夜を二人で(ほぼ無言)過ごす日々が続いていた。
「(まぁ、一緒にいるって言っても数時間なんだけどねー)」
FBIの仕事が忙しいのか、奴らの情報を集めるのに必死なのかは分からないが彼が帰ってくるのは夜遅いことが多かった。
仮住まいの自分のホテルでボーっとしていれば、電話がかかって着たり、彼が直接訪問したりで、夜を・・・長く寂しい夜を独りで過ごすことがほぼなくなった。
まぁ、極稀にあるのだが、そんな時は彼が電話をくれる。
そして少し心配そうな声でこういうのだーー
ーーー「大丈夫か?」とーーー
その電話の言葉で、その気遣いで、心が一気に温かいものに包まれるーーー
「・・・・本当、どうかしてる」
フッと笑うりゅう。
あんなに縋らないと心に決めていたのにーーー
あんなにもう助けは求めないと誓っていたはずなのにーーー
彼にーー赤井秀一に会ってすぐに、覆されてしまったーーー
「こんなにもーーー私は弱かったのか・・・」
心もーーー意思もーーー
それでも・・・私の前から消えたりしないと言ってくれた彼を・・・信じてみようと思ってしまったーーー
「・・・・好きだから・・・?」
その言葉を出せば、やはり分からなくなって・・・
うーーん・・・と考え込んでしまう。
「・・・ん?」
町をプラプラ歩き回っていたが、前方に人混みが見えて眉を顰めた。
「あー・・・そういや赤井が言ってたっけ?」
今日はサッカーの・・・なんか記念パレードがあるとかないとか・・・
「優勝しただけでこの賑やかさって・・・;」
ダメだ、考え込んでたら普段来ないところに足を踏み入れてしまったらしい。
人混みは苦手な部類に入る。
引き返そうと踵を返そうとすれば視線の先に、路駐している車の下に紙袋を入れて足早に立ち去る人影を捉えた。
「・・・・・・」
顔まではよくわからなかったが、口元だけ、ニィッと嫌な笑みが浮かんでいたのだけが分かった。
あの紙袋、碌なもんじゃないだろうな・・・・
そう思って少し近づこうとすれば、私より先にその車へと近づく人影があって、思わず立ち止まってしまった。
「あれは確か・・・高木とかいう刑事・・・?」
そう思ってもう少し先に居る方へと視線を向ければパトカーに一人の刑事の姿、そして少年探偵団の子供たちに博士の姿。
「あぁ・・・やっぱり、事件ホイホイも一緒かぃ・・・;」
そう思ったが、誰も車に近づいている彼の方は気にも留めていないらしく・・・
「・・・・・」
ハァーと溜息を吐き、足早にそちらへと駆け寄った。
「あの・・・・」
声を掛ければ彼はビクッとして肩を震わせ手に持っていたキーを落としてしまった。
「うわっ!?」
ガシャンと落ちる鍵を気にも留めず、彼の腕を引っ張った。
「ちょっ・・あの鍵がっ・・・ってあれ?あなたは・・・」
引っ張られながら彼は車の方へと戻ろうとしていて、少し焦りながら私の顔を確認した後、驚いたような表情をした。
「鍵なんてどうでもいいでしょう!?早く離れないとっ・・・・」
その瞬間ーーーー
ドガンッーーーーー
大きな音が響いたと同時に爆風が襲い掛かった。
「えっーーーー」
「きゃっ・・・・」
彼の腕を思いきり引っ張って後ろへと突き飛ばし、慌てて顔の前で腕を交差させた。
ピッーーピッーーーと、飛んできた破片が、頬や腕を傷つけた。
爆風が終わるころ、彼は唖然としていて、爆発された車の方を見つめていた。
私は自分の服の汚れをパンパンと軽く払っていれば、こちらへと駆け寄ってくる二人の大人と、5人の子供の姿。
おいおいおい、マジかよ;
「大丈夫かね!!?」
「「「高木刑事!!!」」」
博士の声と、子供たちの彼を呼ぶ声に、私はもうはははと、半目で疲れたように笑うしかなかった。
「高木君、大丈夫か?」
座り込んでいる高木へと手を差し伸べていたのは確か・・・白鳥・・・だったか?
「あ・・・はい、驚いちゃいましたけど・・・彼女のおかげで助かりました」
彼の手を借りながら立ち上がる高木はりゅうへと、ありがとうございましたと頭を下げた。
「目の前で身体吹っ飛ばされる光景なんてみたくなかったもので」
そんなもの見たら夢に出そうだ。
出来るだけ素っ気なく、冷たい声で言えば、彼は、あはは・・・;そうですよね。と笑っていた。
「(この男・・・随分とお気楽な人だな)」
そんな事を思っていれば早速お声がかかる。
「あれ?お姉さん確か・・・銀・・・」
相変わらず記憶力がいい事で、江戸川コナン君。
「あー!確かバスジャックの時、哀ちゃんを助けてくれたお姉さんだ!!」
ボウヤの言葉に続き声を発したのは可愛らしい子供らしい声だった。
確か歩美ちゃん・・だったかな?
彼女の言葉に、元太という少年と光彦と呼ばれていた(はず)の少年が、そうですよ!や誰だっけ?の声も聞こえた。
「おー、確かにそうじゃ、あの後お礼を言えずじまいで探しておったんじゃ。あの時は危ない所を助けてもらってありがとうございました」
探してたのかよっ!やめてくれ・・・お願いだから・・・頭下げるから・・・これ以上フラグを立てないでーーー
心で精一杯頭を下げる勢いだがそんな事言えるわけがない。
「いえ、別に・・・・」
「あのっ・・・・」
控えめな声が聞こえてきてそちらに目を向ければどこか必死そうな哀ちゃんの姿。
はぁーと内心溜息を吐きながら、しゃがみ、なぁに?と聞けば彼女は何処か照れたような表情をした。
「・・・ありがとう・・・本当に・・・」
きっと病院へ連れて行ってと言った事に対してだろう。
「誰かに怯えてたみたいだから・・・あの場から遠ざけた方がいいかなって勝手に思っただけ。余計なお世話じゃなかった?」
「そんなっ・・・こと・・ない」
「そう、ならよかった。生きてればいつか、きっといいことがあるよ」
ポンッと頭に手を置き言えば、彼女は不安そうな表情でこちらを見てきた。
「銀りゅうさん・・でしたよね?何故爆弾に?」
白鳥の言葉に立ち上がりながら嫌そうに顔を顰めたりゅう。
「・・・それより、あっち止めてやったら?」
クイッと顎で爆発された車の方を指せばそこには車の中に手を突っ込んでいる佐藤の姿があった。
それに気がついた白鳥と高木は慌ててそちらへと走り寄っていった。
その様子をフンと鼻を鳴らしながら、ばいばーい、と心で言って立ち去ろうとした。
「あれれ〜?お姉さん帰っちゃうのー?」
このクソガキがっ・・・・
「お姉さん忙しいの、だからバイバイ」
「でもさぁ・・・そうは見えないんだけど?」
ほっとけよ。
「記憶力が随分といいみたいね、ボウヤ」
「うん、僕結構覚えてるんだー」
えへへっと笑うボウヤ。
嘘くさい芝居しやがって・・・
「だったらこれも覚えてるでしょう?私警察嫌いなの。協力なんて願い下げ」
そう言って背を向けて、歩き出しヘッドフォンをしようとした。
「・・・その割には、お姉さん随分優しいんだね」
は?ボウヤの言葉に眉を寄せながら嫌そうな表情を浮かべ振り向いた。
「大っ嫌いな警察相手に・・・高木刑事をわざわざ助けるために、一生懸命になってた・・・でしょ?」
フッと笑いながら言うボウヤに、ヒクッと頬が引き攣りそうになった。
こいつっ・・・見てやがったのかよっ・・・
「さっきも言ったでしょう?目の前で身体がバラバラになるようなグロイ光景は願い下げなんでね」
そんな会話をしていれば、近くにキキっと止まる車が目に入った。
おいおい、折角高木も白鳥もいないうちにズらかろうと思ってたのに・・・
ここで登場ですか・・・目暮さん。
「なんてことだ・・・・」
そう言いながら目暮さんは横に乗っていたもう一人の刑事さんに一般人の避難をーーと言っていた。
それに便乗して避難していいですか?
「!!りゅうくん・・・・」
目を大きく広げて私の姿を見て驚く目暮さん。
「・・・どうも」
この前ぶりですね。
表情を変えないまま言えば、ボウヤが余分な事を言ってくれた。
「爆発された高木刑事の車の下に爆弾があるっていち早く気づいたりゅうお姉さんが、高木刑事を安全な場所まで引っ張ってくれたんだよ!」
「!!・・・そうか、りゅう君、私の部下の命を助けてくれてありがとう。感謝してもしきれないよ。」
「・・・・・・」
真っすぐな言葉に、ただただ目を逸らすことしかできなかった。
それからすぐに、刑事たちが集まってきて使われた爆弾の種類などを言っていた。
使われた爆弾はプラスチック爆弾。
聞こえてきた話によれば3年前の警察官を狙って爆弾騒ぎがあった事、その犯人は未だに捕まっておらず、今回の犯人と同一人物の可能性が高いとの事。
そして、光彦の言葉で、彼のカメラに犯人が映っているかもしれないという事が分かった。
ただ、そのカメラは誰かに盗られてしまったらしい。
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